表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/140

忌まわしい災い

ここまでお読みいただいてありがとうございます。


火竜との決着をつけます。


ではでは~


予想外の動きだった。

今まで特定の目標を襲うこともなかった火竜が、タコーに向かって飛びかかる瞬間だった。


タコーは咄嗟に外套で身を隠したが、それを庇うようにフィーが飛び出した。


「フィーーーーーー!!」

「タ、ぎゃーーーーーーー」

胃液を浴びたフィーが、一瞬遅れて火に包まれた。

苦痛に悲鳴をあげ、転がり火を消そうとするが、ほどなく動かなくなった。


フィーが咄嗟に法術で火竜の動きを止めていた。


「お、おい。フィー。どうした?」

タコーは、自分を庇い動かなくなった躯に声をかける。

肉の焼ける匂いが残酷な現実をタコーにつきつける。


言葉は帰ってこなかった。


「あー、こんなことになるとわなーーー! むっかつくなぁー。あー、久々に腹が立つーー。おらーーー、クソトカゲ! 今から・・・ぶっ殺すからな」


タコーは、フィーだった遺骸に外套をかぶせ手を合わせる。

一呼吸すると顔をあげて、ガンを取り出した。

(落ち着け、落ち着け、くっそ、怒りで震えが止まらん)


ガンに弾薬を装填し、今から使う銃の重さを感じ取る。

「すーー、ふーーー。コッカ、あのトカゲの顔に矢を当ててくれ」

深呼吸したタコーの言葉は、静かだった。

徐々に法術が弱くなり、フィーの命の火が消えていくように錯覚する。


「はい、ですが」

「いいんだ。頼む。ココモ、無理しなくていい。アイツが胃液を吐きそうにしたら、少しだけ威嚇してくれ」

「うん。アニキ、大丈夫?」

「それは、お前も同じだろ。今から、トカゲをぶっ殺す」

「ヒッ!」

ココモは、初めて恐怖を感じた、

タコーの笑ったような、悲しむような、殺意に満ちた表情。


法術が解け、火竜が威嚇を始める。

「タコー様、いけます」

「ああ、頼む」

「合図を」

「放て」

コッカが正確に火竜の顔に矢を放つ。

引きよせられるように矢が火竜の顔に向かい、跳ね返される。

火竜が煩わしさから、怒り、吠える。

刹那、タコーのガンが咆哮とともに鋼の矢を放つ。

おそらくは、火山弾以外では、この地上に存在しなかった速度の飛翔体。

火竜の口から、その体内に入っていく。


口を開けたまま、痙攣をおこして倒れる火竜。

口から赤白い泡を吹く。


それを見届けるタコー。

「ココモ、剣を貸してくれ。アイツの頭を潰してくる」

「うん、アニキに任せる」

大剣を受け取るタコー。


タコーは、消火する兵士にも声をかけ、長剣も借りた。


双剣を携え、火竜に近寄るタコー。

命の火が消えかけながらも吠える火竜。

吠えると血を噴き出す。


「うるせえよ」

タコーは、双剣を交差させ、火竜の口にねじ込む。


火竜の咆哮は、明らかに悲鳴に変わる。

「やかましい」

ねじ込んだ剣をかき回す。

喉を刻まれた火竜は、すでに鳴くことさえできなくなる。

生命力が強いため、こと切れていない。


タコーは、消火作業の兵士の中に鉄槌を携えている者を見つけた。

(いいもの見つけた)


「すまないが、それを貸してくれないか」

「あ、は、はい。どうぞお使いください」

「ありがとう」

タコーは、兵士から鉄槌を受け取った。


タコーはそれから何も語らず、ただひたすら、無抵抗になった火竜の頭を鉄槌で叩き続ける。

四肢や尻尾がビクビクと引きつるのを気は止めず、頭を挽き潰した。

しばらくして、路地に頭部のあった場所が挽肉状の火竜の死骸が横たわっていた。


 = = = = =


「タコー様、お帰りなさいませ」

「ああ、マリア。・・・すまないが、明日の朝一番で棺と馬車を頼めないか」

出迎えるマリアの前に何かを外套で包んで、抱えるタコーが立っていた。

「棺・・・ですか?」

「ああ、フィーの棺だ」

「!」

「急で済まないな」

「・・・、タコー様、お気を確かに」

「俺は、・・・フィーよりは大丈夫だ」

「かしこまりました。・・・タコー様、お許しをいただけましたら、伽を務めますが」

「ありがとう。それだと、フィーが悲しむかもしれないから。厩で夜を明かすよ」

「かしこまりました」


タコーの後ろに姉妹たちが立ち竦んでいた。

「お姉ちゃん」

「お嬢様」

「マリアー、フィーが、フィーが死んじゃったー」

顔をぐしゃぐしゃにしたココモ。

マリアはココモを優しく抱きしめた。

「うわーーーん」


姉妹たちは姉の冥福を祈るしかなかった。


 = = = = =


タコーは、干草の中に蹲り、外套を愛おしく抱えていた。

「フィー、お前が女だってわかったときは、びっくりしたぞ」


「アーエルフル閣下の前で腹でも切らねえと申し訳が立たないよな」


厩でタコーはひとりで話し込んでいた。


「うっ、うっ。フィー。もう、死に別れるなんて、俺の予定になかったんだぞ」

フィーの遺体を抱きしめ、泣き声を押し殺すタコー。


 = = = = =


「フィー、アニキ」

「フィー、タコー様」

「フィー、主様」

「フィーさん、色々お話ししたかった」

「お嬢様がた、明日には、フィー様とお別れを」

タコー一行が王都に来て、初めて静かな夜を迎えていた。


 = = = = =


「あなた・・・ご懸念が、おありですか」

「マリアから聞いたよ。お姫様がお隠れあそばしたと」

「キャサリアに良い姉ができたと喜んでおりましたのに」


 = = = = =


「フィー、明るくなったら化粧してやろうな。遅くなって、すまんな」

いかがでしたか?


・・・


次話をお待ちください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ