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王と侯爵

ここまでお読みいただいてありがとうございます。


アイハイロード王国では、まだ燻りが残っています。


ではでは~


「あーあ、なんか寂しくなっちゃったね」

「そうね」


「それだけぇ?」

今は(・・)動けないもの。仕方ないわ」


「ふーん。・・・リンカ、女になったとたんに強くなったね」

「///!リフィ!なんてこと言うのよ!」

「あは、照れてる照れてる」

「むー」


「タコーに会いに行こうね」

「うん、あともう少しだもん」

窓から見える大公都の都市整備は、着々と進んでいた。


 = = = = =


アイハイロード王宮では、一部の家臣を招集し、御前会議が行われていた。


「陛下、よかったなぁ。検事局にもジョシティアちゃんからの書簡が届いていたから、俺の権限で容疑者を放免しておいた」

「心配かけた。これもあの子の直筆だった。誰かのおかげで清められたと書いてある」

国王がテーブルにポンと巻かれた書簡を放り転がす。

「読んでいいのか?」

ちょうど自分の前で書簡が止まってのでヘインリー侯爵は確認をする。


「ああ、キャサリアにも伝えてあげてくれ」

「そうするよ。あの子も荒んだ殿下と接するのに躊躇していたからな」

「そうか。わが子のことなのに実感がないのは、男親の足りないところだろうな」


「ほんと、昔からあなたたちと言ったら」

「「「これは、これは王妃陛下」」」

「あなたまで、声を揃えないの」

「すまぬ、つい」

「仕方ないわね。あの子が大丈夫だとわかったのだものね」

王妃は、娘からの手紙に救われたと感じ、気持ちは夫と同じだった。


「陛下、実は一つ伝えておこうと思うんだが」

「どうした、えらく改まって。ようやくマリアが輿入れしてくれるのか?」

「すまん、それはない」

「いきなり否定かよ」

「えー、そりゃそうだろ。やっぱりマリアは男嫌いじゃないかと思うんだ」

ため口で国王とヘインリー侯爵が会話を始めた。


(ほかの家臣には見せられんな)

付き合いの長い法務大臣は、半ば、あきれてやり取りを眺めていた。


「でも、旅をしていたときは、懐いてくれてたじゃないか」

「あれは、お前にじゃなくて、ウチのにだろ」

「で、でも」

「それにお前、その時はウチのと付き合ってじゃないか」

「うっ、そういわれてみれば」

恋愛歴を指摘され、思い出す国王。


「そうよね。侯爵夫人がケンタウロスだったから、残り物のわたしと結婚したんですものね」

「そんなことは断じてないぞ。きみを愛してるのは、最初からだ」

「じゃあ、独り身をいいことに浮気していたのね」

「い、いや、だからねぇ。付き合ってもらえる前だったし、・・・ちょっと、そんな目で見ないで」

どうも、国王は尻に敷かれている感じ。


「お前たち、いえ、陛下とお妃は仲睦まじいですね。そう思いませんか?侯爵」

「ちょっと待て、今、俺に振るな」

「あ、お前たちも付き合っていたんだっけ」

「おい、わざとだろ」

「アハハ。いいじゃないか。兄弟みたいに過ごした時期だ。ジョシティアとキャサリアも姉妹みたいに過ごすようになることがあるかもな」

法務大臣の何気ない一言は、既に現実であったことは、この場に居合わせたメンバーは知る術がなかった。


「うー。コホン、話を戻すぞ」

「おお、そうだった」


ヘインリー侯爵は、改まって口を開いた。

「ウチに逗留しておられるお姫様だが、放免された者と非常に親しい。このままでは王国が濡れ衣を着せ、留置所に留置した事実しか残らない」

「それは、キャサリアの方でどうにか執り成しできないものか?」

「キャサリアが望み薄だと言ってくれたんだよ」

「留置所は、身柄は拘束されるが、住環境は清潔にしているし、湧き水をひいている。食事も職員と同じ物が提供される」

法務大臣は、容疑者が待遇に不満を持っても、常識的な相手なら説得できると信じていた。

「それは、普通の容疑者の話だろ?無実がはっきりしていて、断食している人間にその話が通じるのか?」

「そ、それは」


この後、法務大臣自ら留置所の待遇に関して抜き打ち監査を行い、何人かの職員を罷免することになり、国内の汚職一掃運動の引き金となったのはまた別の話。


「じゃあ、どうすればいい?」

国王は、解決策を模索するように尋ねる。

「一番簡単なのは、本人の気が済むようにすることなんだが・・・」

侯爵は、言葉が続かなかった。

(そもそもエルフと親しい人族が何を望むというのだ?)


「彼が何を望むかキャサリアに聞き出してもらえないだろうか?」

「御意、やらせてみましょう」


「ところで、証人のふたりも屋敷にいるそうだが?」

「ど、どうしてそれを」

法務大臣の問いに驚く侯爵。

「用意した宿にいないなら、証人召喚のために連絡先を聞くだろ?」

「そうかぁー」


「お前、マリアにバカにされたりしてないか?」

思ったことを躊躇なく口にする国王だった。

「な、なんてことを。マリアはウチのメイドなんだぞ。≪旦那様≫って言ってくれるんだぞ」

「う、くー。お、俺だって≪陛下≫って呼んでくれるんだからな」


(マリアも、よく耐えてるわね)

軽いため息をつく王妃は、メイドの顔が見たくなっていた。


 = = = = =


アイハイロード王国地軍憲兵隊にある命令が下っていた。


<ヘインリー家謀反の容疑有り、王都屋敷を制圧せよ>


憲兵隊の動きは早かった。

十人隊が五部隊、フル装備で出動する。

謀反という、すなわち武装していることに対処する前提で行動した。

屋内戦を想定し、手槍と小盾を装備して、移動の妨げになる重量物は持たず、速度重視の行動だった。


たちまち、ヘインリー家王都屋敷が包囲された。


ここで憲兵隊は突入を躊躇した。


門が開かれていたので、中を確認すると庭の花壇に水をやるメイドが居て、どう見ても初老の庭師が脚立に上って枝打ちをしていた。

その奥には、洗濯物を取り込むケンタウロスがふたり。

門のすぐ近所で草むしりをしているオークとエルフの娘、中年の人族。


 = = = = =


オークの娘が我々に気がつき、立ち上がった。

抵抗するなら年若い娘でも斬り捨てる。

謀反に対処するとは、そういうものだ。


「キャサリアー、兵隊さんだよー。ヘインリー子爵が参りますので、お待ちください」

オークの娘はペコリと頭を下げるとしゃがんで草むしりの続きを始めた。


(おかしい、罠なのか?)

いかがでしたか?


しばらく、軽い感じで話は進んでいきます。


次話をお待ちください。

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