ココモの帰還 その1
ココモは無事救助されました。
周辺を荒らしていた山賊は壊滅しました。
ココモは村に帰っていきます。
そこでまた出来事が。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
アクセス数が増えていくので、感謝の気持ちが大きくなります。
媚びを売るような書き方はしません、登場キャラたちと一緒に時を過ごしているようなお話を書いていきたいと思います。
感謝です。
討伐隊は山賊の隠れ家から最寄りの村に立ち寄り、ジャルーン隊長の指示で隊の再編成となった。
誘拐された子女たちをそれぞれの村に送り届ける段取りがなされた。
男は、移動中に見つけた野生の根菜を齧り、白湯を啜りながら、討伐隊と子女たちを所作なさげに眺めていた。
男は、依頼された仕事も済ませたので早々に旅路に戻りたかった。
子女たちの視線が突き刺さり正直辛かった。
はつらつとした「自分」をココモの悲鳴の後に見られたのが原因なのはわかってる。
言い訳はできない。
及んでしまったのは事実。
ただ、お互い合意の上だということをココモの口から説明してもらわないとどうしようもなかった。
その説明も彼女自身が好意を持っての合意だと主張しないと立場が苦しいままだ。
しかし、付き合ってもいない女の子の口からその言葉を引き出すのは、ほぼ不可能だろう。
男の知る限り、女の子が口にするとは思えない、たとえオークの女の子であってもだ。
ココモが訴えないので身柄は保留されているが、嫌疑が晴れたわけじゃなかった。
囚われた子女たちは意識が混濁した中での男の乱入だったので、肯定的な証言をした子がいなかった。
彼女らの中では、いつの間にか湧いた人間でしかない。
討伐隊の見解も確定していない。
手引きをしていた人間が頃合いと考えてオークを裏切ったと理由づけも可能だ。
そうなっていないのは、村々に男が立ち寄っていなかったことと子女たちの証言は最後の最後しか男の姿を見ていないことなど、直接男と山賊が結びつかないからだった。
男の立場が少しでも良くなるには、ココモの肯定的な証言や一連の事件のとき、男が旅の途中、別の場所を訪れていた事実が証明されないと嫌疑は晴れない。
男は小さくなった根菜を口に放り込み温くなった白湯を飲み干した。
「あー、つらい」
= = = = =
ココモは恩人と話をしたかったが、討伐隊によって阻まれた。
「どうしてさぁ?ボクはアニキとお話したいだけなのにぃ」
「今はダメだ。さあ、テントに戻った戻った。我々は忙しいんだ」
「ぶー」
ココモは男との接触を禁止されていた。
男の嫌疑が晴れていないため、口封じを恐れての措置だった。
「あーあぁ。ゆっくりお話ししたいだけなのに」
ココモは独りごちる。
ココモの知っている男性たちとは違う佇まいの男性。
数人のオークを瞬く間に仕留めるほど腕前ながら、知的で物腰は柔らかい。
度胸も充分と思える。一人で隠れ家に忍び込む大胆さは、ただの優男ではない。
ココモは知っている男たちに見劣りするものだとは思わなかった。
頭の中が真っ白になったのを思い出した。
「その時」は、何が起きたのか判らなかった。
山賊たちの慰み者になっていた時でさえ、自我が保てたのに・・・、////、////////
始める前の赤面するような会話。
思い出すだけで顔が熱くなる。
肌の温かさが思い出されるとまたにやけてしまう。
「責任取ってもらわなくっちゃ」
おぞましい記憶で折れそうな心を一人の男性の肌の温もりで包んで、前を向いて歩ける自分を彼女は見つけていた。
= = = = =
ココモは村に着くまでウキウキしていた。
とある姿をチラチラ見ては、俯いてにやける自分を知っていた。
攫われた子女たちは、道中それぞれ分散した討伐隊に送られていった。
馬車には男と二人きり(護衛が3人乗り込んでいたが空気扱い)が残った。
明るいところで男を見る。見たことのない異国の男性だ。
黒い瞳、バサバサに伸びた黒い髪、無精ひげも少し野性的に見えなくもない。
見たことの無い異国の人。北の人たちと似てる感じがするけれど
肌はきめ細かく、竜の牙のような肌の色。
もしかしたら魔性の化身?とも思えなくもない。
見慣れない容姿に油断すると見入ってしまう。
何かの拍子に目が合うと体温が上がってしまうのが判る。
にやけそうになって慌てて俯いて、改めてにやける。
あの絶望に近い状況から見ず知らずの自分を救ってくれた。
もう陽の光は見れないかもしれない、心が折れそうにもなっていた。
そこから彼は救ってくれた。
そして、彼はごく当たり前のように振る舞っている。
改めて、その姿は勇者や英雄に並んでも見劣りしないと思った。
ようやく、ココモ編も落ち着きつつあります。
ココモの中では一つの気持ちが固まってきました。
それは別離とともに儚く壊れるかもしれません。
そんなこんなで続きます。