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G洗浄のアリア(仮)

ここまでお読みいただいてありがとうございます。


虫襲来の原因がわかります。


ではでは~


肉食甲虫の脅威は排除できた。


「閣下!お見事です。閣下のご采配、このガリツァ、一生手本といたす所存です」

「大げさだよ。条件が整ったから、滞りなく進んだだけさ」

「閣下のご謙遜は、我々にとって越えられない壁として立ちはだかります」

「なんだ、それ?」

タコーは、用心のため液体を撒きながら、興奮するガリツァの相手をしていた。


「ところで、その液体は、何なのでしょうか?」

ガリツァは、虫を追い払った魔法の液体に興味が向いていた。


「これは、樹液と油を水に混ぜたものだよ」

タコーは、原料の説明をした。


「ほー、そのようなもので虫を撃退できるのですか?」

「まあ、虫の種類によって効く効かないがあるけどな」

「それは、ししかぶり用ですか?」

「専用じゃない。一応、効きそうだと思ったけどな」

「はぁ」

ガリツァは薬品の知識がないため、どうにもはっきりした返事を返せなかった。


 = = = = =


村人達は脅威が去り、再び黒将軍のおかげだと知り、夜中にも関わらず、興奮してまた宴会の準備を始めていた。


「皆の衆、再び閣下に救われた。朝まで宴を催そうぞ!」

「「「「おーーーー」」」」


「さあ、酒じゃ、酒じゃ、死んだら飲めなかった酒だ。女房衆も食え食え、その方が閣下が喜ばれる」


「みんなぁ、へそくり出すよ。商人からじゃんじゃん買うからね」

「「「あいよー!!」」」

村長の女房の一声で、女房達が商人たちと交渉しに行った。


この日、命拾いしたはずの商人たちは、素朴なはずの村の女たちの値切りに遭い、身ぐるみを剥がされそうな勢いで薄利の商売する羽目になった。


 = = = = =


時系列は少し遡る。


森の中にフードを目深にかぶった人らしき影があった。


「さあ、お前たち。よりどりみどりだ、心行くまで味わってくるがいい」


まるで影から湧いてくるようにししかぶりが、村に向かって移動し始めた。


「ククク。屠り、骨だけにしておいで。偉大な教団をこの国、この世界に知らしめるのだ」


しばらくすると影には歩哨の悲鳴が聞こえたようだ。


少しづつ、ゆっくり、確実に村へ向かって行った。


「ふふんふん♪」

音程の外れた鼻歌でゆっくり移動する。


影には、虫の声が聞こえるらしかった。

「ほう、夕食(・・)の香りがしてきたかい。それは重畳。キキキ」


影は、予想しなかった光景を見ることになった。

目の前で村全体が燃え始めていた。

あれでは、虫は火に触れて燃えてしまう。

甲虫は、動きが鈍いため火のまわりが早いと逃げ遅れる。


ふと、遠目に正面に見える村の入り口に火は来ていない。

「よしよし、あそこなら安全だ。お前たち、あそこからごちそうになりに行きなさい」


影の独り言が聞こえたように虫が、村の入り口に殺到し始める。


「おや、早速、前菜が出てきたね。さあ、残さずに。好き嫌いはいけないよ」


影は、逃げようとしない人影がただ怯え立ち竦んでいるのだと思った。


次の瞬間、得も言えぬ不愉快な物に包まれたような錯覚に陥った。

「う、なんなんだ、これは」


甲虫の感覚が直接伝わってくるのだが、強く嗅覚を刺激される。

影は、鼻水を垂れ流し、鼻が通らず呼吸ができずにいた。


甲虫たちは、すでにいうことを聞かず、クモの子ではないが散らすように逃げ始めていた。


(くそぉ。どういうことだ。あいつはいったい何をした!)

気取られてはならないため、怒りを口にするのは、避けていた。


(どうした、お前たち。お前たちに何が起きているんだ?)


 = = = = =


「うーん。一方に逃げてるみたいだが、気のせいか?」

「あなた、誰かいる」

フィーは森の奥を指さす。

ちょうど群れの向かう先。


タコーは、森の闇に向かって、目を凝らす。

燻る火で夜目が利かなかった。


「ヴェルン、【ガン】と弾を。弾種は、徹甲弾2発と短針弾2発、焼夷弾1発」

「短針弾と焼夷弾は、言われたように作りましたけど、試し撃ちは、しとりませんよ?」

「大丈夫。これが試し撃ちだから」

小物入れをぶら下げ弾差しを施した帯剣ベルトに受け取った弾薬を差して、ガンに徹甲弾を装填する。


「そんなぁ。旦那に何かあったら、ウチ・・・」

「俺がそんなに勇敢か?危なそうだったら、しっぽ巻い逃げてくるから」

「アニキって、時々、気になる嘘を言うから、怖いよ。ボクたち本当に心配してるんだからね」

ヴェルンの心配をよそに、タコーは軽口を叩くが、不服を隠さないココモ。


「俺に何かがあったら、心配するお前たちの気持ちがわからないバカな男だってことだ。さっさと忘れ、おごぉ」

ココモに腹を鷲掴みにされ、フィーに腕を噛まれ、ヴェルンに首を締めあげられるタコーだった。


 = = = = =


「なんだ、あ奴らは?仲間割れか」

森の中で影は、村の入り口で数人のやり取りを観察していた。


「仕方ない。虫たちが使い物にならない以上、今日のところは、引き上げるとしよう」


影は、その場を離れようとした刹那、誰かに体当たりをされたような衝撃を感じた。


≪パーーーン≫

「な、なんだ。う、ゴヴォ」

影は、胸につっかえる感覚から、咳き込み、血を吐いた。

「ゼー、ゼー。なんだ、このわたしがいきなりやられたのか!ガハッ!む、虫たちは何も感じなかったぞ」


我が身に何が起きたのか、わからなかった。

聞こえた音は、関係があるのか?

そして、身体に深手を負っていることに気が付いた。


「なんだ、この傷は!いったい、何がどうしたというのだ!」

影は、その場に崩れ、意識を手放した。

血の匂いを受容体で感じ取ったししかぶりたちは、その影の衣服の中に潜り込み、ささやかな栄養補給をすることになった。


 = = = = =


「ヴェルンものみ込みが早くて器用だな。大口径の照準器(スコープ)を俺の説明だけで作り上げるんだからな」

タコーのガンは、専用の光学照準器がつけられ狙撃銃に様変わりしていた。


「レンズは反射するだろうし、窒素封入はできてないから、扱いがデリケートだが、夜間でこれだけ使えれば充分だな」

タコーは、ガンから照準器を外し、肩から掛けたケースへ丁寧に収納した。

ガンの尾栓を解除し、空薬莢を排出し、近距離戦に備えて短針弾を装填した。


タコーは、一呼吸するとつい今しがた狙撃した影に向かって歩き始めた。

いかがでしたか?


【教団】には、虫遣いがいました。


次話をお待ちください。

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