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異世界浪漫飛行  作者: 音無音次郎
第1章 目的のない旅人
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まさかの女の子と二人での行軍とはどうも気まずいような気がして、あれから1時間後に待ち合わせ場所のギルド前にいると、眼鏡のお下げっ子は変わらないが、革の鎧に革のブーツなど一式と弓を背負ってやってきていた。


鎧事態は馬子にも衣装みたいにしかまえないのだが、弓に関しては見るからに使い込まれているような感じがした。


「お待たせしました。目的地のドボザル渓谷までは、徒歩で5時間の場所にあります。夜間は危険なので、渓谷の近くで野営して、明日の朝偵察するというのはどうでしょうか。」


淀まなくスラスラと言ったがどうも淀まなく言い過ぎだ。


「ギルドマスターがその方がいいって?」


遠回しに言うのは昔から苦手だ。

それならストレートに言うだけだ。


「………はい。」


俯いてしまった………そりゃあストレートに言われればそうだろうが、その姿を見て罪悪感を覚えないやつはいないだろう。もしも、いるとしたら冷血か?と思ったりした。


「じゃ…あ行きましょうか………」


ああ…言わなきゃ良かったと後ろからトボトボと歩いてくる足音を聞きながら思った。

しかし、立ち直りも早いようですぐに俺の横から案内を始めてくれた。

案内がないま迷子になる可能性はかなり高い。

同じような道に同じような森の光景なのだから、しょうがないとは思うのだが。



森を一時的に抜けて、赤茶けて荒れた荒野に入る前に、セシリアの息が上がってきていたので、休憩を入れようと、そばにあった石に腰かけた。

行程中も、今現在も無言だ。

行程中も、「右」とか「左」とかしか発言はなかった。

そろそろ魔法でも教えて貰いたいのだが………


どうやら、無意識にセシリアを見つめていたようではっと何かに気付いたようだ。


「魔法を使えるようになりたいんですよね?」


控えめに紡ぎ出される言葉。そう声というよりは言葉だ。


「出来ればお願いします。」


深く頭を下げる。教えを請うのだ。当然だ。


「じゃ………じゃああたしの手を握って下さい………」


はい?手を握ってどうするのか。

はっきり言って恥ずかしい。セシリアの方も恥ずかしいようだ。


「私が魔力を手を通して感じてもらえれば、すぐにでも使えるようになると思います。」


状況が状況がなだけに、俺が魔法を使えれば逃げるにしても戦うにしても利がある。


「分かりました。」


意を決して、セシリアの手を握る。

片手だけではない。両手繋いでいるのだ。


「痛い……強く握らなくても大丈夫ですから………」


「ごっこめん………」


すごくドギマギする。マジにそんな言い方されたら惚れちまうだろ〜と心のなかで叫んだ。たぶん心の中では絶叫したようだ………

それは兎も角、セシリアは両手に意識を集中し始める。

俺の手にもピリピリと感じて、身体が熱くなってくるような感覚になる。

そして、ビリッという体内というか頭の中とあうか痛みを感じた直後自分の中にある、魔力を感じる事が出来るようになる。


「どうですか?」


「何となく……出来そうな気がします………」


早速火でも起こしてみようかと意気込もうとしたところでセシリアのストップが入る。


「すぐに魔法を使うと反動が強いので、少し魔力を流す練習はした方がいいです。たまに、魔法に魔力を込めすぎてボンッてなる人があたりしますから。」


そのボンッてなんだよ………


「じゃあまず、どうすればいいですか?」


「まずは、右手から左手に魔力を循環させてみてください。」


「循環?」


「はい、まずはしてみせますね?」


セシリアは胸の前で合掌して、集中しいく。

セシリアの身体が青白い膜に覆われて、右手から左手へと流れがあるのがわかる


「こんな感じです。これが出来たら、ボンッてなりませんから。」


どういう理論だ。理解力が足りないのか?いや………あまり疑問に思ってもしょうがないか。まずはやってみることだ。


セシリアと同じように胸の前で合掌して魔力を巡らせるイメージをしてみる。

そうイメージだ。とさっき気付いたのだが。

少しずつ、魔力が沸き上がるように身体が熱くなる。

俺の姿を見てセシリアが驚いているように見えた。

まあ自分じゃ分からないからいいとしよう。


「こんな感じでいいですか?」


「凄いですね。魔法にかなり適正があるのかも知れませんね。」


セシリアが笑顔に初めてなってくれたのは少し嬉しかった。


「じゃあ次にいきましょうか。」


とセシリアが言った所で、赤茶けた色のグリーンウルフなんかより2倍くらいの大きさで牙が地面につきそうなサーベルタイガーのようやモンスターがこちらにまっすぐ歩いてきていた。


「初級の魔法ってどうやるんですか?」


モンスターだろうが大した脅威じゃないと思える。実力が分からないモンスターは死ぬだけだ。


「もっモンスターが」


うん、セシリアは普通の反応だ。

取り合えず、魔力を込めすぎないようにして右の掌に魔力を纏わせる。

一応、荒野だから、水属性がいいだろうと水属性のイメージを始める。

手本があればいいのだが、昨日タツキが使った氷属性はまだ習得していない。

空中に複数の水滴を発生させて、それを弾丸のように発射してみようと確定させてみるが発動しない。


「あっ…イメージで作ったんですか?」


モンスターに怯えながらも此方を見て何をしたのか分かったようだった。


「魔法も命名してあげないと、使えないんでふ」


もう俺の真後ろにセシリアは隠れてしまっている。


「じゃあ命名したらその名前を呼ぶだけで使えたり?」


「はっはい!!」


もうサーベルタイガーのようのモンスターは一足とびで来られる距離だ。

前足で地面を何度か蹴る。

飛び掛かる前置きだ。


「アクアブリッド」


俺がそうイメージのまま命名すると掌の魔力が消え、サーベルタイガーの周りに水滴が浮かび上がり、一斉に弾丸のごとく打ち付ける。

水滴がなくなると、サーベル弾丸のようには絶命し、光の粒になった。


「すごい………」


セシリアが感動してくれている。うん、女の子に感動または喜んで貰えると嬉しい。

魔法の可能性は本当に無限大なんだなとも思った。後はイメージ力だなと。


「魔法使えるようにして貰ってありがとう。」


感謝しても足りないくらいだが。

………でも、イメージで魔法が無限大なら人それぞれいろんなタイプの固定されていない魔法があるということだ。


「学校で習った魔法じゃないけど、すぐに出来るなんて…」


ヒントをありがとうセシリア。

どうやら、ある程度魔法は学べるようだ。ということは、イメージで魔法を作り出せるのはこの世界に特別固定概念のない転生者か召喚でもされてきた者が多いのかもしれないと推測を立てる。

こういうときに、ヘルプ君は答えてくれない。

まあ別にこういうのを考えるのは嫌いではないからいいのだが。


「でもあんな凄い魔法を使ったんならMPとか大丈夫ですか?MP無くなると、気絶したりとかありますから気を付けて下さいね?」


いやいや全く問題ない。出る前にひさびさに確認したらMPも万超えてたから………

ふと、自分が素手だということを思い出す。


歩き始めてからこっそり魔法で剣を出せるかなと試してみたのだが……無理だった。もしかしたらイメージが足りないだけかもしれないが、確かに炎とかを素手で剣の形とはいえ持っているイメージはしずらい。


そして、渓谷まで後1キロほどの位置で野営出来るような場所はないかと探していたら上空を飛ぶ黒い影を見つけて、咄嗟に身を隠す。

一人ならまだしも、セシリアまで戦闘に巻き込んだ場合生存率は高くはないだろう。

俺は偵察は俺一人で行くからと伝えてあった。


どうにか気付かれずに、やり過ごし手頃な洞窟みたいな穴があったので朝までそこに待機することになった。

念のために、新しくイメージした防御用の結界も上手く発動してくれてた。

この中にいれば、モンスターには襲われないだろうと思える出来だ。

実際セシリアには言ってないがモンスターが防御用の結界に攻撃してスタンを喰らって俺が手刀で止めを刺したりしていた。

俺の意志がなければ、けっかいが破られることはないだろう。

そもそも、黒いドラゴンが襲ってきたらその限りでもないだろうが。


俺は、セシリアから離れた入口付近に横になって、洞窟の奥にセシリアが寝たであろう。

若い男と女が………みたいな展開はない。

早朝に一人で、黒いドラゴンとワイバーンを全殺しするつもりだからだ。




夜はさほど問題もなく過ぎていった。緑水晶にはかなりの数のモンスターが増えていたが。それにしても、何回やっても剣を魔法で再現することは、出来なかった。やっぱりひしゃげない柄の剣を探すしかないようだ。




空が白み始めた時点で、音をたてないようにこっそりと起きる。

まだ寝息が聞こえる。

起きるまでに帰ってきたいなと思うのはあまりに楽観視しすぎなのかもしれないが。


俺はもう一度念入りに防御用の結界を3重に張り直し、渓谷に向かって歩き出した。

足取りは軽い。

色々思い返しているうちに、吸血鬼化、赤目化の条件がはっきりした。

誰のものでも少量血液を摂取すればあの状態になれる。保険的に使えるなと思ったのだった。



早朝にも関わらず、3頭のワイバーンが警戒するように上空を旋回している。

旋回しているすぐ下に目的の奴はいるのかもしれない。

逸る気持ちを抑え、足音にも気を付けながら目的地へと急いだ。







その場所にはワイバーンが20頭。黒いドラゴンの周りにくっついて休んでいた。

黒いドラゴンは、大体20メートルくらいだろうか。今は羽を畳んでいるから、広げたらかなり大きく見えるのだろう。


やはり魔法を使えるのはかなりの強みだ。

MPの最大値は大変な事になっているので、滅多なことじゃ魔力切れにはならないだろう。

とはいえ、油断は禁物だ。一気にやる。


黒いドラゴンが急に顔を上げる。


『匂う匂うぞ人間!!生け贄にでもなりにきたか!!』


ドラゴンの寿命は長い。長く生きれば人語を話すドラゴンも少なくないそうだ。


ドラゴンの周りに陣取っていたワイバーンは一斉に飛び上がり俺を威嚇するために黒いドラゴンの周囲に全てが集まった。


この時を待っていた。


「やってみたら出来たアクアテンペスト喰らえ!!」


黒いドラゴンを中心に突風が巻き起こり、その中を無数の水滴が弾丸のように降り注いでいる。

初級の魔法しか使えないはずの俺がなぜここまで出来たのかは分からない。

イメージの勝利とでも言うのだろうか。


魔法が初級に分類されてはいるが、MPの最大値が威力に比例するのでこんなことになったのだが。


次々に光の粒になって消えていくワイバーン達を忌々しそうに見ていた黒いドラゴンは、大嵐をかきけすように翼を広げて嵐を穿った。

その衝撃で、渓谷の大地が少し抉れた。


『おのれぇ人間めぇ!!』


黒いドラゴンは、大口を開けて咆哮を上げる。

確かに肌にビリビリくるのだが、恐怖心そのものが抜けているのか立ち竦むこともなく黒いドラゴンを見据えられていた。


「さあ次はお前の番だ。」


黒いドラゴンも当然無傷ではなかった。翼の至るところに穴が開いていた。


『思い上がるな人間!!矮小なるものよ死ね!!』


黒いドラゴンの口が魔力を纏ったように青白く光出す。

恐らく驚異的な攻撃、ブレスが来るのだろう。


「アースジャベリンいっけぇ!!」


溜めの間に攻撃されるとは思っていなかったのか驚愕に目を見開いて、口の中を塞いだ土の塊を………排出出来ずに己れのブレスを自分の体内に向けて排出してしまい、即光の粒になって立ち消えた。


あまりにもあっけなさ過ぎて堪らない………いや、強すぎるからか………。


俺は何か財宝でもないかと黒いドラゴンやワイバーンが集まっていた場所に行ってみるとあるわあるわわんさか、金銀財宝さらに珍しい剣や防具の山が。

まあ致命的なのは、全部持ち帰えるのに何にも持ってきていなかったことくらいだろうか。


お金がなかったから今さらなのだが、魔法の袋でも買っておけばよかったと思った。


でも、悪知恵というか魔法の多様性に助けられるというか、風の属性魔法で持ち上げられたので、そのまま全部持ち帰ることにした。



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