表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界浪漫飛行  作者: 音無音次郎
後日談
53/53

後日談〜受け継がれる意志〜

「ルシアお兄ちゃんも、ギリアも弱すぎ〜」


父から受け継いだ銀髪をポニーテールに結んでハンデと称して大人が着ても重いワインレッドのフルプレートを着込んだ12歳の女の子は、同い年二人の男の子を眼下に見て、二人の男の子が持っているよりも二回りほど大きな木刀を肩に乗せた。顔立ちが父譲りの童顔だから、その姿には違和感しか感じられない。


「カリンが強すぎるという選択肢はないわけ?」


そう言ったのは、赤い髪、整った顔立ちはやはり父譲りだろう。髪の色に合わせたような赤いベストに緑色のズボン、黒いシャツの少年ギリアは、やれやれといった風に立ち上がった。


「本当グリムおじさんかジェルドおじさんかに頼めばいいのに………いつも僕らボコボコじゃんか〜」


と言ったのは、可愛らしい中性的な顔立ちで母譲りの魔力を有した栗色の髪の少年。ワインレッドのコートに白いシャツとズボンの少年ルシアだった。


「あの二人に挑むにはまだまだ修行が足りないのよ!!もう一度よ!!」


「そろそろ休憩しなさいよぉ」


そう言ってカリンが二人を立つように急かした所で、母モカがお茶とお菓子を持って来た。後ろにはビクビクしながら、プーが着いてきている。

今日のお菓子は、どこから仕入れたか抹茶のふくれ菓子だった。


「やったぁ!!モカおばさんのお菓子…………」


ギリアは、自分が口走った言葉を思い返して顔を青くした。


「ギリア君…………?」


「は………い、モカ………お姉さん………」


その微笑が恐ろしく感じたのは3人同様だった。


「さぁ食べて♪」


と、モカはその場に腰を下ろした。

娘と、息子が12歳になるのにも関わらず若々しい。更には、カリン、ルシアの父であるルカとのイチャイチャ度合いは見てる者さえ赤面させるほどだ。


「ねぇお母さん、お父さんは?」


そう言ったのはルシアだった。二人を揃えて見ると本当によく似ている。


「お父さん?お父さんは、ギルド本部に用があるみたいで明後日くらいまでいないわよ?」


「えぇ〜今日は、一緒に未開の方の探索に着いてきてくれるって言ってたのに〜」


そう言って、膝の上に陣取ったプーと場所争いをしていたカリンが残念そうな声をあげた。

プーは、カリンが赤ちゃんの頃からのある意味おもちゃ扱いでルシアはそれを見て、カリンがいない時を見計らってプーに「ごめんね」と撫でてあげたりしていた。


「帰ってきてからでいいんじゃない?」


モカは、飲み終わったお菓子の屑やコップを直し始めた。


「ぶーー」


カリンは、まだプーとにらみ合いをしていたがモカが立ち上がったのを期にモカに抱きついた。


「どうしたの?カリン」


「ギリアもルシアも相手にならないのぉ」


可愛らしいなと一瞬でも思った男の子二人は、そこかいっと突っ込みながら、滑って転んだ。


「カリンはお父さんに似て身体は丈夫だしね♪」


そう言ってモカは、カリンの頭を撫でた。


「お母さん、また魔法教えて!!」


と言ってルシアは、カリンの横から割り込むようにモカに抱きついた。


「お兄ちゃんは弱いんだから!!」


「カリンはグリムおじさんに頼みなよ!!」


「弱虫お兄ちゃん!!」


「二人とも!!」


いつもより低いモカの声。恐る恐る二人は顔をあげるといつもの顔なのに背後に電気が走ったような気がした。


「しかたないわね」


モカは、両手に魔力を巡らせ溜める。


「3人で力を合わせて闘いなさい。」


モカが放った魔力は、徐々に形を為していく。土の人形、魔力で伝達電気信号を送ることにより自走可能。作った本人がモカなので、土と言えども硬さは折り紙つきだ。


「うげ………」


そんな間抜けな声をあげたのはギリアだった。いくら、父ツルギの血盟召喚のモンスターと日々訓練しているとは言え、モカのこのゴーレムは桁違いの強さを誇る。


「お兄ちゃんがいけないのよ!!」


「カリンが!!」


「ちゃんと倒さないとご飯抜きよ」


と言ってモカは、どこからともなく現れたプーと城へと帰って行った。

呆然と3人はその後ろ姿を見送ったが、現実問題目の前のゴーレムを倒さないと晩御飯抜きはきつい。


「やるしか選択肢はないわけ!!」


カリンは、飛び上がってゴーレムに木刀を叩き付ける。バシッ!!と音がして木刀が破裂したように手元の柄を残してなくなった。

しかし、ゴーレムには傷ひとつついていない。ゴーレムを足場にして飛び退いて、カリンはルシアたちの元へと戻る。


「いつもより硬い………」


プラプラと右手を振ってカリンは言った。


「じゃあ…」


ルシアは両手に魔力を練る。


「土だから水で!!」


練られた魔力が収縮し、そこから圧縮された水が発射されゴーレムに命中する。

ゴーレムは、それをモロに受けて少しだけ凹みが出来た。

凹みが出来た事がスイッチかのように、今までただのくぼみだった目の部分に赤い光が灯る。と同時に、ギギギと身体を動かし始める。


「うっうごくのかよ!!」


そう言いながら魔力を練っていたのはギリアだった。


「くそっ!!」


練られた魔力を放出すると、弾丸のようになった水が突風によって加速を増してゴーレムに降り注ぐ。頭をガードしつつ、不敵に前進してくる。


「奥の手出すわ!!」


カリンは、左手で右腕を握って魔力を込める。


「お父さんの様にはいかないけど…!!【光剣】」


カリンは、教えてもらったばかりのそれを握った。


「いっけぇ〜」


光剣からゴーレムに向かって光が照射される。ギリア、ルシアはその光量に手で目を覆った。そして、それならいけるかもと思った。

が、しかし光が収まった後にしっかりとゴーレムは立っていた。

半身が消し飛んではいたが、まだ動けるようだった。


「嘘………お兄ちゃんごめん、あたし………ムリ」


カリンは、ルシアに寄りかかって気を失った。


「不味いな〜」


ギリアは、両手で頭をかく。

結構な魔力をさっきの魔法で使ったのだ。凹みを作ることならまだ出来るかもしれないが、凹みくらいであのゴーレムが止まるとは思えない。状況は圧倒的に不利だった。


「ギリア、氷の魔法使えたよね?」


「ああ。凍り漬けにでもするか?前に試した時はムリじゃなかったか?」


「お母さんが言ってたじゃない。協力しろって」


「それがどうした?」


「熱した後に急激に冷やすと物質は脆くなるってお父さんが言ってた」


ギリアは、腕を組んで思案顔になる。うんうんと唸ってから頷く。


「やるか。」


ルシアは、今度は両手を上にあげたまま魔力を練る。今から使うのはルシアが今使えるのかで滞在の熱を発揮する魔法。


「ギリア!!頼んだ…」


ルシアの頭上に巨大な火の玉が浮かび上がり膨張し、それからゴーレムに向かって放たれた。

直撃したが、ゴーレムの身体が真っ赤になっているだけだった。


「今度は…!!」


ギリアが、練った魔力から氷の槍が放たれ、真っ赤になったゴーレムに直撃する。

この氷の槍は直撃したものを凍り漬けにするものだ。

ゴーレムは、槍でしっかりと凍り漬けになった。

しかし、氷はヒビが入り始めた。


「ダメ………か?」


ギリアはそう言った時、氷が割れた。

同時にゴーレムも同様にヒビがが入った所から崩れ土塊へとなった。


「やった………」


ルシアはその場に座り込んで。土塊へと変わったゴーレムを見ていた。


「ルシア!!やったな!!」


ギリアは、ルシアに歩み寄って手を差し出す。差し出された手を握ってルシアは立ち上がった。

カリンは、隣でスヤスヤと寝息を立てていた。


「妹くらいは守りたいじゃないか」


「そうだな」


そう言ってギリアはルシアの肩をポンと叩いた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ