luke's story 16
【…‥…‥国王様、王妃様、認証完了…‥…】
俺が玉座に座ってから握った水晶玉から、文字が俺とモカの目の前に投影される。
【…‥…‥お待ち申し上げておりました。おかえりなさいませ、王様】
カタカタと次々にタイプライタのような文字の動きで投影されていく。
「王妃様だって」
モカは、玉座に座った俺の腕に腕を絡めた。
「でも、どうして俺達を王って認識したのかな」
俺は、モカの絡められた腕の手を撫でながら言った。
すると、また水晶玉から文字が出てくる。
【この世界の住人でないことが、以前の遺伝子データにより判明したためそう判断しました。】
水晶玉とは会話が出来るようだ。にしても、モカを王妃様って呼んだのは大正解だ。俺を安心させるにはモカからだと分かったのだろうか。
「じゃあこれから、移民を受け入れる。それに際して敵対する者を【了解いたしました。オーラ教、それに連なるもの。王さま、王妃さまに敵意を持ったものは関知しだい排除いたします。】
俺が言い終わる前に文字をつむぎ、それら俺が考えていたことに回答した。
よく出来た水晶玉だ。しかし………
「お前を作ったのはこの世界の住人じゃないんだな?」
【日本と呼ばれる場所から来られたそうです】
どうやら同郷の人間がこの都市を造り上げ更にシステムを構築したのだそうだ。
実際システムは、現代の知識と魔法、宝珠を取り入れた複雑なものだ。それを上手く調和させて用いている。それにこの水晶玉だ。人工知能を持っているのだろう。
俺とモカは、水晶玉と会話しながら都市の機能を回復させていく。
遠い昔に片方の宝珠がなくなったことにより、制御が上手くいかなくなった事が彼らを迎え入れられなくなった理由だったそうだ。
今は、すでに安定した輝きを宝珠は保っていた。
宝珠は、使い手によってこうまで変わるのだなと思わずにはいられなかった。宝珠そのものが悪ではないと言うことなのだ。
水晶玉に、これからこの都市を拡張するのはどうしたらいいかと聞くと、水晶玉に相談し尚且つそれ相応の魔力を貰えれば拡張はまったく問題なく可能らしい。建物の建て替えや修復はメイド達が勝手にやるので、勝手にやられたくない場合は事前に通知すれば問題ない。流石に食料品は、自らの調達しなければならないが、宝珠が永久機関となっている関係上火も魔力を使わずに捻るだけで付き、上下水道も完備されていた。
まるで、現代の都市とも言える。
どうやらこれで、この都市を拠点にすることは出来そうだ。
「お城で広いな〜」
モカは、嬉しそうにして内部の装飾などを見ているようだった。
「俺とモカは同室で部屋は少し大きめで二人だけの部屋に改装してくれるか?ついでにベッドも大きめな。」
それを聞いていたモカは、俺に見られないようにしていたが、顔が赤くなっているようだった。その反応は俺にとっても嬉しいものだ。
水晶玉によると、城内ならどこにいても【メイド】と呼べば2秒以内に来るそうだ。城外ならというと都市内なら10秒以内にだそうだ。都市から出るとさすがに無理だそうだが。
俺はメイドを呼んで、入り口に待機させていた3人を呼び寄せることにした。
これから忙しくなりそうだ。
ガランとした都市は嫌だから、人も集めたいと思う。
宝珠のお陰で税金などは取らなくてもいいだろう。
店などを出せばまた話は別だろうが、その辺りは追々でいいだろう。
メイドに連れられて3人がやってきた。
玉座に座ってモカに腕を絡められたままの俺を見て最初に言葉を発したのはグリムだった。
「我が主には相応しき場所にございますね」
どうやらグリムも気に入ってくれたようだ。タルトは、彼方此方に走り回っていたがそのうち慣れるだろう。もちろん、3人にもそれぞれ部屋を用意してある。
俺じゃなく水晶玉のおかげだが。
それから、数日して近隣の村村から人々が押し寄せてきた。その数は、予想していたよりも遥かに多かった。事前に改修改装してあったためどうにかなったが、門に近い場所は殆ど埋まってしまっていた。
しかし、なぜが俺達のいる城側はまったく人がおらずガランとしていた。たしかにまだまだ距離はあるし初対面の人間も多かったからいきなり城に挨拶なんて考えもしなかっただろう。
それが、更に距離を明ける結果となったのだがそれは仕方がない。
この都市は、合議制で物事を決めていきたいがまだそこの話すら出来ていない。
俺はまずはと、門から先海までの街道の整備をするように命じた。
なぜなら物資の移動だけでなく漁に出たい者もいるであろし街道が都市の警備機能を有していれば尚安心だろう。
メイドが警備というのもおかしな話だから、その辺りはステラに任せた。
頭数は、水晶玉がメイドと同じようなタイプの鎧を着た男性使い魔を作成してそれに当たらせることにした。もちろん、そこの警備もステラ担当だ。
タルトも、ステラと一緒に行動するように言ってある。
グリムは、城の地下に保管してあった書物や水晶玉の情報端末で歴史などを調べてそこから宝珠のある場所の特定を急いでいた。
もちろんそれが終わったあとの仕事も考えてある。
俺の補助だ。
今と変わらないかもしれないが、改めてお前は相談役な?とは言っていないからそこはけじめだ。
流石に、街道の整備は俺もでばってドラゴンを討伐しながらの作業になった。魔力をかなり多目に出したことから、石畳張りはかなりのスピードで進んでいく。約5日で最初に俺達が降り立った場所まで済んだのは人の手なら奇跡的とも言える。
ドラゴンの討伐以外は夕方になって城へ帰ると、都市の人達が持った来てくれた魚などを使って毎晩料理が出てきた。モカがしてくれたのは一目瞭然だ。
タルトも一生懸命作ったモノがあるが、それを口に運ぶのはかなりの勇気が必要だと思える見た目だったりした。
流石に未開の地らしく、定期運行の船もなにもないので簡単に人が増えることはなかったのだが、それは打破してくれる人物が数日後にやってきてくれた。彼の名はゲオルグ。
俺をArankに上げてくれた人である。
「都市が生き返ってるとはね!!」
ゲオルグは、興奮気味な眼で丁度門まで出てきていた俺を見た。
「ゲオルグさんじゃないですか。」
「久し振り…というわけでもないな」
「ええ。」
「だがよこいつは誰が生き返らしたんだ?」
こいつというのは都市の事で間違いないだろう。もしかしたら、この辺りがゲオルグさんの狩り場だったのかもしれない。
「俺がやりました」
「だろうとは思ったが、やはり中に入ると感慨深いな」
「なぜですか?」
「あ?あぁ、俺もこの遺跡を見て育ったんでな。」
「この島の出身なんですか?」
「あのばばぁの息子だよ。」
ゲオルグさんが指差したのは俺達を養護してくれた老婆、村長だったそうだ。面影はないが。
「じゃあゆっくりしていけますね!!」
「ああ。丁度俺もこの辺りが狩り場なんでな?この都市にギルドを設置してもらえるといいんだが。」
「構いませんよ。」
「お前さんの一存でいいのか?」
「まあ、今はそうですね【メイド】おいで」
きっかり10秒してから、俺の足元にシュタッという音共に洗われた。
「入り口付近に冒険者ギルドが入れる建物を新に作ってくれ。他の人達に迷惑かけないようにな」
「承りました。」
メイドはそれだけ言うとまたすぐに、いなくなった。
ゲオルグさんのおかげもあって、なんなくこの都市にギルドと更にはギルド本部を結ぶ転移門までが設置された。
ギルドの設置が成されてからは急速に人工が拡大していった。
もちろん、冒険者がいると言うことは、武器や防具などの店も開かれるようになった。それで、装飾品の店や服なども売られるようになった。
税金などの話になると、1店舗辺り総売り上げの0.1%でいいということになった。
しかし、それでも城側の区画が埋まることはなかった。
確かに城周辺は普通貴族なんかが居を構える場合が多いからだろう。
まったく気にしなくていいのだが。
都市を歩いていてどこも活気に満ちている。幸せな笑顔が彼方此方で見られる。幸せを帝京出来ることを俺もモカも喜んでいた。




