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異世界浪漫飛行  作者: 音無音次郎
光ある旅立ち
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luke's story 11

観客席が空になってから、モカ、グリムが闘技場へと降りてきた。プーは当たり前のようにモカにだっこされている。


「すごい人だったね〜でも、まあArankおめでとう♪」


モカが労いの言葉をかけてくれる。

流石に、強かった。ある意味手も足も出なかったと言ってもいいだろう。


「我が主を圧倒するとはすごい人間もいるのですね」


グリムは、相手に感心していた。俺よりも、次に闘ったら外から分析していたグリムが勝ちそうな気がしないでもない。

プーがトコトコと俺の前まで来て、俺の肩をポンポンと叩いてくれたのは癒されるというよりはなんかイラッとしたのは気のせいだろうか。

モカから霧が突然現れる。


「うん、やっぱりそうだ。」


どうやら、霧を発生させたのはモカのようだ。器用に魔力を指先で操作しているようだ。


「モカ………それは」


「ん?あぁこれはね、さっきゲオルグさんがやってたのを真似てみたの」


マジか………

見ただけでやってみたら出来ましたとかすげぇんだけど。


「まず、水と火で水蒸気を発生させて、水と火をまた使って姿の投影ってところかな。」


モカが魔法を解除すると、モカは俺から20歩くらい奥に立っていた。即再現したモカはスゴすぎるのだろうが。


「モカ様も流石ですね」


グリムはモカを賛美する。

実際こうも簡単に再現されたと知ったらゲオルグはどう思うだろうか。

まあ、今はいないしいいかなと思う。ただあの刀は何処で作ったのか気にはなった。

そして、俺も欲しいなと。


闘技場から出るとちょっとした有名人になっていたのは言うまでもない。いきなりArankになったのもだが、トリプルSrankのゲオルグに一太刀を浴びせたのがそれほどの反響があったようだ。


「Arank昇格おめでとうございます。」


カウンターの人が預けていたArankになったギルドカードを返して貰った。


「こんなに早くArankになった人なんて何百年ぶりですよ」


「何百年ぶりなんですか。」


それ凄い。自分のことなのだが、どうも他人事のように感じてしまう。一太刀入れたと言っても、かすっただけに過ぎないからだ。素直に喜べない。


「嬉しそうではないのだな。」


また後ろから声をかけてきたのはゲオルグだった。


「そんなことはないのですけど」


「俺はそこの女の子にとっておきの魔法をあんなにあっさり再現されてしまって驚いているのだがな。」


闘技場での様子を見られていたようだ。

流石に、モカがやったことは本人も驚いていたようだ。


「光も闇も魔法を使えるのだ。まだまだ強くなれる。固まったイメージを持って闘わずに柔らかく頭を使えばいい。」


「はい。」


「それでいい。」


アドバイスまでくれるとは思わなかった。ついでに俺も聞いてみたいことを聞いてみた。


「あの………その刀は何処で手に入れたのですか?」


「これか?これはな、この街で打って貰った特注品だが?」


やはり特注品なのだそうだ。確かに見る剣の殆どが、両刃なのだからそうなのだろう。わざわざ片刃にする必要もない。


「その人を紹介してもらえませんか?」


「それは構わんが」


怪訝な顔をされてしまったが、欲しいものは欲しいのだ。光剣があると行っても、いざというときに腰に何もないのは危険だというのもある。


「オーラントという名前の店だ。聞けばすぐ分かる。それではな。」


それだけ言ってゲオルグは立ち去っていった。またゲオルグの進行方向はモーセになっていたが。

店の名前さえ聞ければいつでも行ける。すぐに行くつもりはない。それに見会う素材に出会ったときに刀はお願いすればいいと思う。今はこのクリムゾンの素材で防具を作ってくれる人を探したい。

出来れば、そのオーラントという人が作ってくれたらいいのだろうが、聞いた話武器が専門なのだそうだ。取り敢えずは、今回ここに来た目的は達成出来たのだからゆっくりと探すとしよう。


冒険者風の人々が多いのは当たり前なのだが、ここには世界各国の王族が別荘を建てたり避難場所にしたりしているそうだ。

確かに安全は保証されてはいるが、本音はそこではない。

このギルド本部の島での闘争などは禁止されているからだ。

つまり、国が滅びたとしてもこのギルド本部にいる間は犯罪でも起こさない限り国々の干渉は受けないからだ。

そういうこともあって、貴族らしき人もかなりの数いる。

貴族だからと言っても、この本部では一般市民と変わらない。だから、偉そうな態度も取れないし取らない。

もしも、貴族が冒険者を挑発し決闘だ!!なんて事があれば本部から警備隊が飛んきて仲裁なんてこともある。

まあまず有り得ない話らしいが。


「なんか視線が痛いね」


モカが俺の腕をツンツンしてから服の腕部分を掴んで言った。確かに、色々な所からチクチクする視線は感じる。

注目を集めてしまったからだろう。

その代わりに、イチャもんを付けてくる奴は完璧に皆無なわけだが。


「モカが美人だから羨ましいのさ」


俺はモカの手をしっかりと握って近寄らせた。


「ばか」


モカは、恥ずかしそうに俺の肩に頭を乗せた。
















色んな人に話を聞いてみたら、ヨーデル防具屋が多くの人に支持されているようだったので、そこの店に入ることにした。

豪華絢爛って店構えの多い中質素な佇まいを維持した作り。最初にここにお願いするの勇気がいるだろう。


「いらっしゃい」


太ももくらいあるんじゃないかと思うような腕の俺と同じくらいの身長の男がいた。黒い立派な鼻と顎の髭だ。ベレー帽のような帽子をかぶっているため頭は見えないが、もみあげを見る限り多くはないだろう。


「突然で悪いんですが、クリムゾンの素材で防具を作れますか?」


「クリムゾンだって!!?いいだろう」


店主は自信満々に、胸を張って言った。任せられると思えるほどの自信だろう。


「これで、俺とこっちのモカに胸当て、籠手、ブーツにグリーヴを作って貰いたい。俺のは肩当てをつけて欲しいが、付け外し可能にしてほしい。」


俺はカウンターにクリムゾンの素材を山積みにする。店主の顔が見えなくなるほどになってしまったが。


「これだけあれば最高の最高を作って見せよう。」


そう言うと、奥から奥さんを連れてきてモカを採寸してから俺を採寸していった。


「1ヶ月だ。1ヶ月あれば作れる。」


「お願いします。」


「おうよ!!任せときな!!」


クリムゾンの素材をそのままにして、俺達は店を出た。丁度外に出たところで、外から俺達を覗いていた人達が一斉に蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。

どんだけ有名人なんだよと突っ込みを入れない自分を褒めてあげたかった。


夕方まで時間があったのだが、ギルドから指定された宿を目指すことにした。

プーとグリムは、浜辺でいいということになり久々に二人っきりで宿に泊まることになった。

宿はコテージのような離れタイプのものだった。質素な中に、和のテイストを感じさせる作りだった。まるで料亭のような雰囲気だ。しかし、やはり和のテイストは落ち着くと思ってしまう。カウンターはそうでもなかったのだが、通された部屋はイメージそのままの畳の部屋だった。

堀こたつになっており、正座の苦手な人にも優しい作りとなっていた。

流石に、温泉はないだろうと思ったが、近くに活火山があるそうでそこから温泉をここまで引いているそうだ。ということで、温泉も完備していた。


「はぁあ〜」


俺は部屋に入るなり、ブーツを脱いで畳に倒れ込んだ。久々の畳の匂いがする。

モカも、ブーツを脱いで俺のすぐそばに座った。


「行儀悪いぞぉ?気持ちは分かるけど」


モカは、俺の頭をコツリと軽く叩いた。


「ここは安全だし、着替えて城壁の上上ってみないか?あそこ結構見張らし良さそうだしさ、誰でも登れるみたいなんだ。」


「行く〜」


俺達は買っておいた普段着に着替えて、出掛けることにした。

いつもローブだから、普段着は新鮮だった。

新しい服も買ってあげたいなと思いながら歩いた。大体が似合うと思うし。

俺は、赤いシャツにパンツ。モカは、白いシャツにショートパンツだった。

言わずもがな、俺はモカの脚に釘付けになった。


「えっち」


恥ずかしそうにするモカもまた、格別である。俺はそのまま、手を引いて外へ出た。

まだ夕方という感じではない。しかし、夕飯の材料を買うおばちゃんや使用人体の人が食材屋の前でごった返していた。

その様子を横目でみながら脇を通っていく。

城壁方を見ると、階段が上へ上へと伸びている。

流石に、高いし長いのだが3箇所くらい広場が設けられているようだ。

もちろん、俺とモカなら羽で飛んでいく方法もあるにはあるが、これ以上視線を集める真似はしなくていいだろう。


「長い階段だね。」


モカは上を見上げて率直な感想を行ってくれた。

魔導エレベータくらいはありそうなものだが、少なくともこの階段の近くには設置されていないようだ。


「気長に登ろ。時間はたっぷりあるしね」


俺はそう言って手を引く。

お姫さまの様に俺の手の上にモカの手を乗せて。


「そうだね。」


降りるのが面倒なら飛んでもいいかなと思える。


どんどん視界が高くなっていく。手摺もあるし、階段と幅も広いのですれ違うのにもなにも問題はない。


屋根の高さを過ぎて、屋根の上が見えてくる。更に視界は変わって、低い屋根なら見渡せるほどになっていく。

次第に太陽が傾いて夕陽になっていくようだ。

広場はあったのだが、予想以上に疲れない。休まずに昇った。

人の姿が小さくなって見えて城壁の上に着いた。

丁度夕陽が海に接するか接しないかの位置にある。海を夕焼け色に染めていた。


「すげぇな………」


「うん………凄い」


俺はモカの肩をポンポン抱いて引き寄せる。モカは、俺の肩に頭を乗せた。

俺達のように、肩を寄せあっている姿も結構いる。いいデートスポットなのだろう。


「なんか色々あったけど、吹き飛んじゃった感じだな」


「本当にそうだね。この夕陽見たらそんな気がする。」


等間隔で設置されているべんちへと座る。


「これからもさ、色んなことあると思うけど、俺はずっとモカを大好きだし、ずっと守るよ。」


「うん、恥ずかしいけど………私もずっと側にいたい。」


そして、俺はモカの唇にキスをした………

ずっとずっと側にいると誓って………





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