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異世界浪漫飛行  作者: 音無音次郎
第1章 目的のない旅人
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Another story 3

「最近本当に楽しそうだな。タツキ。」


ダンケル男爵。

俺の利用できる駒、ギルと俺はコレントマレントに来ていた。

通常は代官に任せてあるこの場所なのだが、東の魔の森の開拓のついでに寄ることになった。

まあ俺が進言したからなのだが。

理由は二つある。

まずは、ロブレイスにちょっかいを出す火種の下準備、そして、本命はボリブ辺境伯に会うことだ。

ボリブ辺境伯は、男爵領のすぐ上に接触しており、ダンケル男爵とすれば直近の上司に当たる。

男爵には既に会見することは伝えてあるが、それはただの会見ではない。

男爵と辺境伯だけならただの会食で終わるのだが、その後が問題だ。

なぜ俺がここにいるのか。


現在ルッツヘル王国は、サルバトレ3世の施政下である。しかし、一枚岩ではない。

サルバトレ3世は元来身体が弱く戦闘、戦場には向かない。そのため、隣国のジンガリア帝国、神聖ガロル帝国との争いには全く、そうただの一度も参戦してはいなかった。

外交でもそうで、永世同盟国である3国に対しても地方の辺境伯などに任せきりで内政ばかりを己で行ってきた。

それに、子供がおらず兄弟達は常に次の国王争いには明け暮れていた。


第一候補と黙されているのが、武に優れたハロル公爵、第二候補が程よく文武に秀でた才能を持ち外交でも活躍出来る頭のキレのあるアルベルト公爵。


俺としてはどちらでもいいと言えばいいのだが、この二人が王になっても面白くないなとは思っていた。まあそれを表だって口にすることなどありはしないのだが。


近年真しやかに噂されるのが、現国王には隠し子がいるのではないかというものだ。

身体が弱いため、城外に出ることはあまりないと言われてきたが城の外で身体が弱いとは思えないような国王を見たらしいのだ。

情報源をさぐろうとしたのだが、既に始末されていたようで元は辿れなかった。


だが、始末されていたということは、それが事実だったと暗に示しているようなものだ。

それがかえって大貴族達の不満を燻らせ溜め込むことになる。

今はその時期ではないと。


つくづく国王も面白いことをしてくれる。

この状況なら、最低二つ、もしかしたら3つに国が別れる。

それに乗じて隣国が攻めた来たらどうなるか。考えただけで胸が踊る。


だが今はこの会見でダンケル男爵の優位を示し、ボリブ辺境伯の取り込みをすることが最重要課題だ。

後は、男爵がうまくやるだろう。

俺はただ立っておくだけでいい。


掌で物事が動くのは本当に楽しい。これ以上の快感はないと思えるほどだ。

どんな女よりも甘美だ。


「ボリブ辺境伯がお越しになりました。」


案内のメイドが扉越しに声をかけた。


「お通しして。」


扉が開き、厳しそうな眉間に幾重にも皺が寄った屈強な肉体を持った赤い髪に白髪の入った男が入ってきた。ボリブ辺境伯だ。

若い頃は冒険者として馴らしていたらしく、rankは確かシングルBだったはずだ。


「久しいなギルバート」


「お久しぶりですボリブ辺境伯様。」


このボリブ辺境伯とギルバートは幼少の時よりの付き合いらしい。と言うのも、ダンケル男爵の母はこのボリブ辺境伯の妹らしいのだ。


「そやつが手紙に書いてあったタツキか。」


「お初にお目にかかります。タツキと申します。以後お見知り置きを」


「うむ。確かに使える男のようだな。して今日はどうしたのだ?」


ボリブ辺境伯は、どかりと椅子に座った。


「大したことではないのですが、うちの東側にあった魔の森の開拓に成功しましたので、一応ご報告をと思いまして。」


ダンケル男爵が、そう言ったがボリブ辺境伯は目を細めて男爵を見ていた。


「それはよかったの。伯爵くらいにはなれそうじゃの………じゃかそれだけの報告のためにワシを呼んだわけではなかろ?」


ボリブ辺境伯は予想以上にキレる男のようだ。


「伯父上のご慧眼さすがでございますね。」


「おだてるな。で?」


おだてられて嬉しくない奴はいない。


「隠し子が見つかりました。」


ボリブ辺境伯は、机を叩いて立ち上がった。


「見つかったのか!!」


「はい。」


半分は嘘である。そんなもの既に始末の手が伸びていたため、俺が行ったときにはもう虫の息だった。そのため、【特殊能力:感染】を使わせてもらった。今は俺の眷族だ。


「フィリップを連れてきてくれ。」


俺がメイドに告げると一礼して部屋から出て数分後一人の少年を連れて入ってきた。


「おぉ………国王に似ておる。」


金髪に碧眼、身体の線は細いが国王に似ずに身体は弱くはない。


「初めまして、フィリップと申します。」


フィリップが頭を下げるとボリブ辺境伯は此方をみるやいなや大笑いを始めた。


「ギルバート、本当によくやった。現国王はもう何年も持たんだろう。その時はこの子を前に出して国王を継がせよう!!あやつらに一泡も二泡もふかせられるわ!!」


あやつやとは国王の兄弟とその取り巻き達の事だろう。


「伯父上に喜んで貰えて嬉しく思います。それもこれもこのタツキのお陰にございます。」


死にかけのフィリップを眷族にしたことは、誰も知らない。知られては困る。


「いえ、いち早くそれに気付いて私を遣わしてくださった男爵様のお陰にございます。」


俺は平身低頭して答える。

それにしても、まったく心にも無いことをスラスラと言えるとは俺も悪い奴だと思う。

楽しいからいいのだが。



会談と会食は思いの外スムーズに事が運んだ。

俺はその後その場を辞して外へ出た。

喜びのあまり口周りが歪んでしまって、いたので口を手で押さえながら歩いていた。


そこに、日本人を見つけた。

面白い奴かと思い、【全鑑定】をしてみる。

能力は1,500を超えている。

使えるか使えないかは分からないが声くらいは掛けておこう。




仲間にはならなかった。

不審そうな顔をされたので、俺の内心が漏れてしまっていたのかもしれない。

まあ別に構わないが。

邪魔になるなら殺せばいい。

今の俺にとって必要なのは忠実な駒であって同列の仲間なんてあまっちょろい関係の奴はいらない。

こらからは、更にそうなるだろう。














俺はダンケル男爵の許可を得て、首都へと向かう事にした。

目的はその道すがら死にかけの冒険者を取り込むため。ただそれだけに尽きるのだが、それだけだと物足りない感じもするのでついでにrankをAまで上げておくという名分を伝えておいた。


既にいつでも、rankAに上がれるのだがめんどくさかったため本部に行っていなかったのだ。

これから暗躍するためにも、rankは高い方が信用を得やすいだろう。

いざとなれば、rankなどいらないのだが、今は必要だ。


街道沿いは初心者が目立つ。

少し森に入っては出てくるため瀕死の状況にまで陥ることは殆どと言っていいほどない。

狙うは中級者辺りだ。

自分の力に慢心して、森深くにわけいって実力以上のモンスターに殺されかかる。

そういった奴はバカが多い。

眷族になっても無茶をされる可能性があるが、そこは眷族だ。

眷族は命令に逆らわない。

主たる俺の行動を邪魔することもない。都合のいい駒になるのだ。


レグリードウルフの咆哮が聞こえて、俺はその方向へと走る。

胸が踊るのだ。


そこには革の鎧に身を包んだ女3人がいた。

瀕死の状況と言えるだろう。

レグリードウルフもそれなりに傷を負ってはいたが、致命傷になるようなものは一つもない。

このままいけば、レグリードウルフの腹の中に収まるだけだろう。


「君達大丈夫かい?」


レグリードウルフは、ピクリとも動かなくなる。当然だ。手足顔胴体に至るまで糸で固定してあるのだ。


「あっありがとう」


見た目麗しい。姉妹だろうか。雰囲気が3人とも似ている。

金髪で鼻筋の通った正統派の美人。

ミスコンにでも出れるのではないだろうか。革の鎧で分かりにくいがスタイルはいいと思える。

下卑な事を考えていることなどおくびにも出さずに、心配した風に声をかける。


心の中では、俺の顔は歪んでいることだろう。

俺の可愛い操り人形。


レグリードウルフの爪が彼女たちを引き裂く。

俺が操っているのだから避けられはしない。逃げるであろう場所へ誘導し彼女達を瀕死にしていく。


レグリードウルフはというと自分の身体が操られていることに相当のストレスを感じたのだろう。暴れまわった。

お陰でいい感じに3人とも瀕死の重症となった。


そのあとは簡単だ。

サクッとレグリードウルフの首を糸で切り離して彼女達にかけよって心配そうにして、「生きたいか?」と蜜をやればそれに食いついてくる。


これで晴れて3人の美女を手に入れることが出来た。

水属性の魔法で水洗いしてから、乾かす。

派手にやられた場所は補修して、血を洗い流してから次の村エルド村へ入った。







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