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異世界浪漫飛行  作者: 音無音次郎
第1章 目的のない旅人
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another story 1

俺の名前は、タツキ・カガワ。

ダンケル男爵に雇われの冒険者だ。


最近面白いというか、恐ろしい奴を見つけた。

俺の【特殊能力:全鑑定】で見ると更にそうだ。だが、だからこそ使えるとも思える人材………いや素材だ。


この世界に転移してから2年。

冒険者としてやっていたら、なんとなきrankBからトリプルBにまでなっていた。

別に狙ってそうなったわけでも、そうなりたくてなったわけでもない。

なんとなくだ。


rankAまたはダブルAの推薦はもう届いている。だが、別に上がらないなら上がらなくてもいい所まで来ている。

討伐依頼の受託最低rankもトリプルB以上は殆どない。


面白い素材の名前はルカ。転生者だろう。

種族的には人間になっているが、ある戦闘を覗いたら【種族:吸血鬼】となっていた。


最高の収穫だった。


なんと言っても、戦闘時の血液を採取することが出来たからだ。

でかいだけで役に立たないレグリードウルフも、今回ばかりは役に立ってくれた。

ただ、【糸】で補助してやらなければ手傷を負わせることは出来なかっただろうが。


俺の【特殊能力:分析】と【特殊能力:分析物書き換え】で、その血液を分析した物の状態を変化させる。

この能力の弱点は、いちいち手にとって分析からしなければいけないことだろうか。

それに、集中するから他の事が出来ない。重宝はするが、それなりに使い勝手はよくはない。


だが、今回ばかりは宝だった。

なぜならば、【特殊能力:感染】

己の血を己の意思で分け与えた場合にのみ、己の眷族に加えることが出来る。(相手の意思は必要ない)を書き換えて、【特殊能力:吸血鬼化】

己の血を己の意思で分け与えた場合にのみ、その相手を吸血鬼に変えることが出来る。にすることが出来たからだ。


こんなに上手くいくことはあまりない。あまりないが、最高の結果だ。


眷族ではない吸血鬼になれるのだ。

あの化け物じみたルカと同じものに。


俺は再び血液を【全鑑定】する。

血の持つ能力は変更された状態だ。狂気に歓喜に震えた。

接触せねばと思い、取り合えず血を氷で包んで魔法の袋に詰める。

何食わぬ顔でシュバルツ村のギルドの椅子に座る。

ようやく来た。



どうにかダビドスへ誘導することが出来た。今ダビドスに向かうにはワイバーンを数体排除しなければいけない。

さて、ルカはどうするか。


あっさりとワイバーンを殺した。

まさか銅の剣で戦うとは思わなかったが。

打ち洩らしたワイバーンを魔法を排除する。

感謝されたが、不信がられただろうか。

まあいい。


ダビドスに着い、ルカと二人で食事をしていたら絡まれた。

ルカが赤目だと勘違いしてくれたお陰で殺さずに済む。

つくづくルカは面白い。

素材だけだなんて勿体ない。面白い素材に格上げにしよう。



そのあと、ルカと別れて俺は郊外、つまり城壁の外にある自分の小屋に入った。

ここは、モンスターも人間も近寄れないように、気付かれないように魔法で細工がしてある。


俺は魔法の袋から凍結させておいた血液を取り出す。再度【特殊能力:全鑑定】する。確認が取れたなら、俺の取る手段は一つ。

その血液を飲んだ。















飲んだあとの記憶が飛んでいる。

大分時間が過ぎている。

空が白み始めていた。血液を飲んだまま、椅子に座って眠っていたからか腰が痛い。


俺は自分の腕を【特殊能力:全鑑定】で見る。


【名前:タツキ・カガワ】

【種族:人間(吸血鬼)】

【レベル:60】

【HP:1,500/1,500】【MP:25,000/25,000】

【筋力:600】

【体力:600】

【機敏:1000】

【器用:900】


【特殊能力:全鑑定】

【特殊能力:吸血】

吸血により相手の能力値の1/70を継承する。(一人一回のみ。人間亜人モンスター問わない。吸血しても、血の所有者の能力値には変化を与えない。)

【特殊能力:感染】

己の血を己の意思で分け与えた場合にのみ、己の眷族に加えることが出来る。(相手の意思は必要ない)

【特殊能力:霧化】

物理的な攻撃を受けた際に自動発動。(魔法には無意味)

【特殊能力:自動修復】

魔法物理問わず、傷つけられても瞬時に回復修繕修復される。







どうやら、吸血鬼になったことで、特殊能力の【分析】【分析物書き換え】は消滅してしまったようだ。

だが、やはりこの能力は、そんなことが小事に思えるような物だ。

主人たるダンケル男爵にも与えればと普通なら思うだろうが、俺はそんなことするつもりはない。


男爵は利用できるから利用しているだけ。

必要なくなったら殺せばいい。


だが、貴族というものは此方が下手に出ていれば扱いやすい。

冒険者rankが高ければ尚更だ。


それよりも、早く吸血しみたい。

早くこの能力を使いたい衝動に刈られる。

昔新しいおもちゃを買ったもらった時のような感じだ。

胸が踊る。



俺は、さっさと男爵にこんな面白い男がいたと報告をしてから、ルカが何処に向かったのか知ることになる。

惜しい事をした。

俺も同行すればよかった。


まあそれは仕方ないので、早速魔の森に行ってみることにした。

男爵には、魔の森にはまだ手をつけられないと嘘の報告をしてある。

俺一人ならどうとでもなるが、大勢でくれば面倒だし、なんで他の奴を俺が守ってやらなきゃいけないんだという気持ちにもなる。

だから、近付けないようにしてある。


それ以外にも理由はある。

ここにいるモンスターは、他の地域としたらかなり強い。

気を抜けば俺だって手傷を負っただけではすまないだろう。

だが、そんな危険以上にこの魔の森には甘味がある。


オリハルコン鉱山はもちろんのこと、エメラルド、ルビー、ダイヤモンドなども点在しているのだ。

それら宝石は魔法石として用いることも可能であると同時に、目が飛び出るほどの高額で取り引きされるからだ。


別にお金執着があるというわけではない。

魔法石としての価値が高いからだ。

魔法石は世界の至るところで、日用品から戦闘にも用いる魔力を宿すことの出来るものだ。

それを占有しているだけでかなりの資産になる。


だが、俺が毎回見つけてくればおかしいということにもなりかねないので、定期的にそれら宝石などが手にはいることがある、迷宮の地下深くまで降りることになる。


もう大分男爵を裏切っていることにもなっているが、裕福なとこのボンボンなんだからいいだろう。

俺に牙を剥かなければ生かしておいてやろう。






相変わらず魔の森は、おぞましいほどの濃い魔力を感じるし、雑魚程度のモンスターでも手強い。

戦闘する度に血を飲んでいく。

口の周りは、血でベッタリとなっているであろう。

だが、身体がどんどん少しずつではあるが軽くなっていく気がする。


定期的に【全鑑定】で確認しているが、順調に能力値は上がっている。上がっていく。

面白いものだ。


levelが55を越えた辺りで、首都の第3王国騎士団団長を下す事が出来るようになったが、それ以降levelも上がりにくいし能力値も同様に上がりにくいので諦めていたところにきたルカである。


そういえば、俺の主な武器は仕込み杖だ。

大きなルビーの魔法石に趣向を凝らし仕立てて貰った特注の杖だ。


だが、普段はこの杖使わない。

それ以外は、右と左の中指に嵌めてあるかなり斬れにくい糸が無限に出てくる指輪を使っている。

罠にも、攻撃にも手品にも使える優れものだ。

使い方が特殊なため、男爵の宝物庫に誰も使っていない状態であったので、使わせてもらうことになった。

どんな使い方をするのかは、誰にも言っていない。






ルカは、また面白いことをして帰ってきた。

それも、ヘイアンドラゴンの装備一式を身に纏って。


「君も大概だね」


と俺が言うと、苦笑いをしていた。

苦笑いしたいのは俺の方だがね。


それから、すぐに男爵の所へルカをつれて行くことになる。

ルカにはまだ敵対しない方が利益がありそうだ。利用させてもらうことにしよう。





事件はルカが帰る途中で起こった。

よりよって借金の形に、奴隷にしようと画策した奴がいたようだ。

俺の嫌いなタイプだ。

俺に親は生前もこちらに来てからもいない。そんな子供達のいる孤児院のそれも、ギルドの職員を狙おうとはふてぇやつだ。

それに、このダビドスでは奴隷は雇うのも、買うのも売るのも禁止なのだ。

お仕置きをせねば。


ルカにも協力してもらって壊滅に追い込む。

どうやら、セシリアとルカはいい関係になっているようだ。


セシリアはお気に入りだが、ルカならいいかと思えた。


俺に絶大な利益をもたらしてくれたルカだ。これくらはしてやろうと言うことで、色々と込み込みで男爵と画策してやった。


セシリアとルカが出ていくのを見送ってから男爵と魔の森の開発に関する話をしていた。

今まで、俺にかなりの恩恵を与えてくれた魔の森だったのだが………余りあるこの力を得てからあまり魅力を感じなくなっていた。


能力値の差だけで、魔の森のモンスターでも瞬殺出来るようになったのもあるし、俺に必要なオリハルコンの武器防具はもう作製済みだったからだ。


ここ数日の心変わりは、ルカのせいだろう。


久しぶりに、面白い素材から、友人に格上げしてしまっていた。

さて、これからどうするか。


男爵に利用価値はまだある。


俺の野望がチラリと覗き始めていた。




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