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色彩の契り  作者: るしょう
第一章 リーラ
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紫4

ところで、ハーテスもまたクォーレ、ユイヒと同じく中央部の街リーラに着いていた。


「誰も彼もどうしたんだか」

自分以外みんなに何が起こったのだろう。

何度も何度もそんな同じ問いばかりをくり返す。むしろ、それしかすることがない。


――?


ふと、道の先に立ち止まる少女が目についた。

背中で揺れるおさげが知的な雰囲気を出しているが、格好は半ズボンと活動的だ。

彼女はしゃがみ込むと、何やら土をいじり始めた。

「何してんだ、あいつ」

行動の意味がわからない。

しかしあんな不審な行動ができているということは…。

期待する気持ちを抑え、ハーテスは彼女に歩み寄った。

「何してんだ?」

「土を調べてるんだ」

いやそれは見てればわかるけれども。

ツッコミを飲み込んだハーテスに、彼女は言葉を続けた。その瞳は真剣で、口調も丁寧だ。

「土はどこもおかしくないんだ。栄養もある。不浄なものは含まれていない。なのに、植物は枯れている」

「そういうの詳しいんだ」

へぇ、と感心しながらハーテスが言うと、彼女はふっと笑った。

「まぁな。けど、君だって何か異変に気づいたから歩き回っているんだろう?」

固い話し方をするのは、ただの癖らしい。彼女の笑顔は柔らかい。

ハーテスは肩をすくめた。

「異変って表現するのが申し訳ないくらいの豹変っぷりだからな」

「それもそうか」

空気が和む。

自己紹介をするのは、今しかなかった。

「俺はハーテス。そっちは?」

「リッシェだ」

リッシェはにこやかに答えた。

もう一つどうしても知りたいことがある。

ハーテスは質問を重ねた。

「他に俺らみたいな奴、誰かいたか?」

「あー…確認はしてないけれど、広場にいた2人組がなんか変なことをしていたな」

「変なこと?」

ハーテスの表情が明るくなる。

「変人は味方の証だ」

「なんだそれ」

2人で笑い出す。

ずいぶん久しぶりに笑った気がした。




広場に移動して、2人は垣根から様子をうかがう。

なるほど、枯れた噴水の前で同世代の男女2人がなにやらやっている。

リッシェがささやいてくる。

「怪しいだろ?」

「そうだな」

ささやき返して、耳をすませる。


「他に誰か、正常なままの人を知ってる?」


話し声が聞こえる。高くて可愛らしい女の子の声だ。


「僕は1人でここまで来たけど…あぁそうだ、1人それらしき人がいたかも。声はかけなかったけど」

「おおお!どこで?」


「たしかあっちにいたけど…長髪で妙にのっぽの男」


――妙にのっぽの男。


「お、おい?」

リッシェは嫌な予感がして、ハーテスの腕をつかもうとした。

が、強い殺気に一瞬手が止まる。

その一瞬がもう遅かった。


「誰がのっぽだ、失礼な」


リッシェの隣にはもうハーテスはいない。









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