紫14
ほんの数分間しか中にいなかったのだろうが、なんだか久々に外に出た気がした。
日光が目に眩しい。
ユイヒたちは、少し目を細めて足を止めた。
「なんていうか…眩しいね」
「きれい…だな」
目の前に広がる街並みは、輝いていた。
紫を貴重とした街路や家並みが、街全体で統一されており美しい。
先ほどまで見ていた廃墟と同じ場所とは思えないほどの見事な街だった。
道には人々がおり、その声もまた明るい。
「戻った…のか?」
ハーテスが某然と言う。
「信じ切れませんよね」
クォーレはそう言って笑うと、近くにいた女性に声をかけた。
「あのすいません」
「この街はきれいでしょう?紫の都よ」
得意げに答えてくれた若い女性に、彼は丁寧に頷く。
「そうですね。それであの」
「この街はきれいでしょう?紫の都よ」
「知ってますけど」
「この街はきれいでしょう?紫の都よ」
やはり同じ言葉を繰り返す。
クォーレは3人を振り返った。
「だめですね。戻ったのは街並みだけですかね」
「街並みだけでも戻ったことに感謝しよう」
リッシェは前向きだ。
「とにかく、クリスタルが関係しているってことは確信したわけだし、これからやるべきことだってはっきりしているだろ」
聖女アンヌも各地を周ってクリスタルを集めたといわれている。
彼らも同じことをするしかない。
ユイヒは紫の都リーラ以外の4都を思い返す。
リーラは中央の都のため、4都とは大体同じくらいの距離だ。
「まずはどこにする?」
「僕のとこ、来ます?」
クォーレが提案する。彼の都は水の都アスールだ。
「僕の家ならたぶん食糧とかもたくさんあるんで」
それは頼もしい。
「どこから行っても同じだろ。さっさと行こうぜ」
「はーさんのせっかちー」
「るせぇ」
完璧な平穏を取り戻すのは、まだまだ遠い。