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色彩の契り  作者: るしょう
第一章 リーラ
13/26

紫12

トンットンットンッ。

階段を蹴る足音が延々と続く。

重くなった脚をなんとか動かしながら、リッシェは上を見上げた。

「あとちょっとだな」

呟く言葉にクォーレもそちらに目をやる。

最上階がすぐそこに見えている。

「僕たちがんばりましたよね」

「あぁ」

喜ぶ2人にもここからが本番だということはわかっていた。


「ゴール!!!」

クォーレの達成感に溢れた叫びと共に最上階にたどり着く。

2人とも足を休めて息を整えながら、そっと周りを見回した。

その部屋は少し薄暗く古い金属のにおいがする。

部屋大部分を占める時計の大きな歯車がいくつも回っている。それらの回る音が、ギン、ギン、と足に響く。

壁側には小さな窓と机、椅子があった。時計台守が座っていたのだろうか、椅子は少し乱れている。

「あるとしたら、あそこか」

机を指すリッシェの言葉にクォーレも頷く。

「早く手に入れちゃいましょう」

軽くそう言って、彼は机の引き出しを開けた。

ぶわっと埃が舞う。手で埃を払いながら覗き込むと――。

「こんなどんぴしゃあるんですね」

引き出しの中に置かれた縦横30センチメートルくらいの大理石の石板。

あまりに大当たりすぎて、拍子抜けした。

手にも取らず、しばらく呆然とそれを見ていたリッシェが、あ、と何かに気づいた。惹かれるように手にとって、表面の4つのくぼみを撫でて言う。

「クリスタルがない」

「ってことはやっぱり僕たちの考察は正しかったんですかね」

クリスタルが消えたから、聖女アンヌの加護が薄れ街が廃した。

ここにあるはずのクリスタルがないということは、それが証明されたようなものだ。

「ここまで昇ってきたかいがありましたね」

そう言って満足げに笑うクォーレ。

が、次の瞬間。

「っ?!」

声にならない声を発して、地に倒れた。

「クォーレ?!」

驚いて膝まずこうとしたリッシェは、クォーレがさっきまで立っていた場所に人影があることに気づいた。

寒気がした。

見上げたくない。

震える手で石板を抱きしめて、リッシェはおそるおそる目をあげる。


――時計台守。


そこにいたのは時計台守。

急いで階段を戻ってきたようで、肩で息をしている彼は、ゆっくりとリッシェに手を伸ばしてくる。

クォーレの頭を殴ったようだ。握られた大きな拳が目に痛い。

――渡すわけにはいかない。

キッと時計台守を睨んで、その手をかわして、階段の方へ逃げる。

――駆け下りている時間はない。

もうそんなに体力は残っていなかった。絶対追いつかれる。迷っている時間すらなかった。

階段のてすりにしがみついて、下を覗き込む。

螺旋階段なので、中央部は一階まで吹き抜けだ。

とっさの判断だった。

リッシェは目をつぶって祈りながら。


階段の吹き抜けめがけて、石板を投げ捨てた。



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