将来性0
高校を卒業する日のこと
俺の高校は殆どの奴等が次なる進路が決まっており
決まってない俺は進路の無い人間が確定していた
原因は俺の性格だった
そこまでしたくない事をいやいややることが出来ない俺は
最後までしたいことが見つからず高校を卒業した
別になんも後悔はしていない
でも、周りの温かい視線が俺の涙腺を緩めた
「なんか、最後まで恭平らしかったな
目立つのが嫌いなお前はいつも周りから目立たされて
みんなの視界に入って笑いあってたよな」
紹介が遅れたが俺の名前は唐矢恭平
教室の机の上に座るコイツは曲昇一郎
進路は地元にある小さな町工場に就職だ
俺の高校時代をよりいっそう面白くさせてくれた昇一郎には
言葉では足りないほどの感謝がある
共に笑い共に無き同じ女の子を好きになったこともあった
「お前のお陰で高校生活はほんまに面白かったわ
ほんまにありがとな昇一郎」
「俺達はここがゴールやないで恭平!!
今日まではスタートラインに立つための準備や
今から何が起こるか分からんレースの始まりやねんで
俺達は何があっても結婚するまでは一緒や」
「そんな言葉じゃ女の子はドキッとせえへんで
ほんなら、またメールでもしてくれや
俺は今からちょっと泣いてくるからさ・・・。」
自分に嘘をつけない自分がこんなにも嫌だと思ったのは
生まれて初めてかもしれない
どんだけ面白いことを考えても教室にいる生徒達を見ると
自然と目から冷たい液体が流れてくる
たいした思いでもなく授業中はほとんど寝てたのに
先生達は俺を見ると泣きながらその場を去っていく
小学校と中学校の卒業式はこんなにも悲しくはなかった
教室を見渡して右手に卒業アルバムを持ちながら
後ろを振り向かず教室を出た
「さよなら、お前達・・・。」
高校の門を出ると学校の前の道路では泣くのを我慢して
笑顔を作ってる女の子が写真を撮っている
出会いがあれば別れがあるのは分かってる
俺以外の奴等には新しい環境での出会いがあるから
まだましだと思ったが言えなかった
帰り道はウォークマンで好きな音楽を聴きながら
少し遠回りをして家に帰りベッドに飛び込んだ
「もう終わってしまったんやな高校生が
明日から俺は将来の無いニートか
久しぶりにあの町にでも行って忘れてくるか」
ベッドから起き上がり制服を床に投げ捨て
黒のシャツの上にパーカーを羽織り紺色の
ズボンを履きながら外へ飛び出した