自己紹介ほど面倒な事はない。
自己紹介。
それは創司にとってあまりにもどうでも良い時間になった。
大体の人間が同じような事ばかり言う。
読書やら料理やら、本当にそうなのかと疑いたくなる物まであった。
当たり障りのない物とは言え、おもしろみに欠ける。
さらには男子と女子で反応が様々だった。
例えば男子。かわいい子が居たら目が向くのは仕方がないとは言え、創司に
言わせれば、眼がキモイ。ガン見である。
女子はイケメンが自己紹介する時、期待する様な目を向けている者達がほとんどだった。
そして創司の番になった。
なまじイケメンである創司。注目を浴びる事は仕方がないとは言え、憂鬱になってくる。
「…………峯崎創司。趣味は鍛錬。好きな事は特にない。嫌いな事は面倒な事。以上だ」
愛想がない。その一言に尽きるだろう自己紹介を終え、創司は机に突っ伏した。
そして、自己紹介の時間は過ぎていくのだった。
「もうっ!何であんな愛想無く言うのっ!?みんな怖がって話しかけてこないじゃん!」
幼なじみである雫は、創司の自己紹介がお気に召さなかった様だ。
創司はため息を吐きながら、
「…………どうでもいい」
本当にどうでもよさそうにそう言った。
創司にとって他人など知った事じゃない。だが、あの自己紹介を聞いて話しかけてくる勇者が居るのなら、それはとても良いやつだと創司は思う。
だからこそ、困っていたら助けてやっても良いと思う。
「あ、あの!」
創司がそんな事を考えていると、三人ほどの女子生徒が話しかけてきた。
雫は話しかけてきた子達に目を見開くが、嬉しそうになる。
「………なんだ?」
創司は顔を上げてその女子生徒達を視界に入れる。
一人は気の弱そうな女子だ。ショートカットの茶髪にクリッとした大きな瞳。身長も低く、小動物を思わせる女子だ。
二人目は気の強そうな女子。肩下まであるセミロングの艶やかな黒髪。スレンダーな体型で、身長は163センチほど。
三人目は話しかけてきた子だ。茶色のセミロング。眼鏡を掛けていて、体型はスレンダー。委員長と言った雰囲気を出している。
そして三人とも美少女。10人中8人は振り返っても可笑しくない。
「えっとせっかく同じクラスになったんだから、仲良くしたいなって」
照れくさそうに言う委員長と言った雰囲気の子。
それに雫が便乗し、
「そうだね!私、間宮雫、こっちは峯崎創司!幼なじみなんだ!」
「そうなんだ!わたしは西城茜」
「アタシは加藤美鈴」
「え、えっとボクは高藤千鶴」
創司は気の弱そうな子、高藤千鶴を見て思う。
ーーー番号持ちか…………。
そうは見えないのだが、滲み出る気配から千鶴はこの学年の中では別格だと言う事を看破する。
美鈴も茜も明らかにこの学年ではあり得ない強さを誇っている事が創司には解った。だが………。ーーーこれなら大丈夫だな。
創司は三人を見て、敵対しても余裕で勝てる事を悟る。
創司は尋常ではない鍛錬により、もはや化物クラスの強さを誇っている。
人間の湧くに居るこの三人娘なら赤子の手を捻るがごとく倒す事が可能だろう。
「そう言えば、次で終わりか………」
なんとなく呟いた創司だったが、後に余計な事を言ったと後悔する。
「そう言えばそうだね。あ!じゃあ、この後一緒に遊ぼうよ!親睦を深めるって意味で!」
茜がそう提案する。
「そうだね!当然創ちゃんは行くとして…………」
「オイコラ。俺は………」
「行くの!」
創司は断ろうとするが、生憎このテンションの雫を相手にしたら面倒だと言う事を創司は理解している。
「…………わかった」
創司は渋々、そう言ったのだった。