僕はどっちかというとコーヒー派
週に何回か足を運ぶ図書館で、ニゲルは小さな可愛らしい女性と出会う。
その女性の名は、エミリアと言った。
◯登場人物
ニゲル
24歳。闇属性。
中央都市リーウルスのC区画の雑貨屋で働く。
エミリア
38歳。光属性。
ニゲルと同じく、リーウルスのC区画のマッサージ店にて働いている。
「あっ!これです、これです。ありがとう!」
その女性は、目当ての本が見つかって嬉しかったようで、にっこりと僕に微笑んだ。そして、その女性からふわっと、爽やかな林檎のような香りがした。
これが僕がエミリアに、初めて出会った瞬間だった。
「よかったですね、目当ての本が見つかって」
「はい。すごく助かりました。あ、えーと、私はエミリアといいます。あなたの名前は?」
エミリア。とてもいい名前だ。それにこの女性にはエミリアという名前がぴったりだと聞いた瞬間に思った。
「あ…僕は、ニゲルといいます。あの…エミリアさんはとてもいい香りがしますね」
「えっ…あぁ、この香りはね、カモミールと言ってハーブの一種なの。そのエキスを使った香水を使ってるのよ」
すごくいい香りだった。それに、なんだか落ち着く。
「あ、じゃあ私は用事があるのでこれで。ニゲルくんは、この区画に住んでるのかな?」
「あ、いや。僕はC区画の方です」
エミリアは図書館の出口の方に足早に向かって行く。普段ならそういうことは僕はしないのだが…
「エミリアさん!ここには…図書館にはまた来ますか?」
彼女は僕の声に立ち止まり、こちらを振り向いた。少し考えてから言う。
「んー、週に2〜3回くらいは来るかな。本…好きなの?」
そう言い、にっこりと彼女は笑う。
「はい、好きです…あ、本を読むの」
笑いながら手を振り、今度こそ図書館を出ていく彼女。可愛かったな…。あんな女性、この区画に住んでたっけ…?
まぁ、この街自体、たくさんの人が住んでいるし、もちろん何年と過ごしていても、知らない人もたくさんいるとは思う。何度か見かけることはあっても、この人って、前も見たよなーという人も、もちろんいる。
僕は6冊ほど本を借りた。推理ものと、騎士団ものと、恋愛ものだ。騎士団ものとは、この王国の騎士団の働きぶりとか、内部の闇だったり、腐敗とかを描いていたりする。
僕が最近気に入っているのは、騎士団の若き新入生が、自分よりひと回りくらい上の大先輩の女性騎士団長に憧れて、少しずつ仲良くなっていき、いずれ恋仲になっていく物語だ。
本の良いところは、読んでいる時は自分がその物語の中に入っているような気分になれることだ。あ、もちろんその本の内容にもよるけどね。まぁ…実際のところ、僕が騎士団に入ることもないんだけども、そういう気分にさせてくれる、ということがいいんだよ。
僕はC区画に帰る前に、B区画の途中にある公園に寄ることにした。そこで少し外の空気を吸いながら、本を読むことにする。あと、ちょっぴり仕事をする。
僕はある個人回線へコンタクトを繋ぐ。待っていたのかすぐ繋がった。
「ニゲルだけど。B区画、25番。今のところ異常なしだよ」
『ありがとうございます。ニゲルさん、本に夢中になって仕事忘れてないかと心配しましたよ〜』
「あはは、大丈夫だよ。1時間ほど張ってから、戻るよ」
『わかりました。引き続きよろしくお願いします』
エミリアさん…か。小さくて可愛らしい人だったな。週に2〜3回図書館に行くって言ってたな。また、会えるかな。
僕は公園の露店でホットコーヒーとチョコ菓子を買った。コーヒーはブラックだ。僕はホットコーヒーを飲みながらチョコを食べるのが好きだ。
紅茶も嫌いではないんだけど、どちらかというとコーヒーのほうが飲むことが多いかな。そういえばコーヒーと紅茶って、どっちが良く飲まれているんだろう。あまり深く考えたことなかったけど、男女によって、違いはあるのだろうか。エミリアさんは、どっちが好きなのかな…。
コーヒーを飲みながら、ニゲルは先ほど出会ったエミリアのことを考える。
あの女性はコーヒーと紅茶、どちらが好きだろうか。
そして、どのような顔をして、本を読んでいるのだろうか、と。




