言葉への変換
画面に映るイツキの姿は、穏やかだが緊張感を帯びていた。
世界が待っている――その視線の数は、都市を超え、大陸を超え、全地球規模に及ぶ。
イツキは地面に手を置き、深く息を吸う。
胸の鼓動が、地球の脈に合わせて高鳴る。
(……今度こそ、ちゃんと伝えないと)
目を閉じ、心を研ぎ澄ます。
頭に浮かぶのは、地球が何を伝えたがっているのか――警告、懇願、そして、まだ希望はあるということ。
口を開いた瞬間、世界の人々が息を呑む。
―――
「よく聞いてほしい。地球は生きている。
敵ではない。だが、これ以上無秩序に暴れれば、バランスは崩れる。
止まれ。
まだ取り返しはつく。
行動次第で未来は変えられる」
微細な変化が世界に起き始める。
人々は気づく――
今までの恐怖や疑心暗鬼は、イツキの声によってほんの少し落ち着いたことを。
波紋のように、緊張の中心から外側へ、世界がゆっくり呼吸を取り戻していく。
―――
だがイツキ自身も理解している。
これはまだ始まりに過ぎない。
地球の声を伝えただけで、世界が完全に理解したわけではない。
混乱の火種はまだ消えていない。
彼は画面に向かって、ゆっくりと続けた。
「わかってほしい。君たちの選択が未来を決める。バランスは壊れやすいけれど、取り戻せる。賢く行動すれば、希望はある」
その一言は、イメージでは伝えきれなかった
[地球の意志]を、初めて明確な言葉として世界に届けるものだった。
―――
画面の向こうで、世界は
もう以前のような恐怖だけの沈黙ではない。
地球の声を知った世界は、少しだけ静かに、呼吸を整え始めていた。




