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「僕が伝える証拠は……映像でもデータでもありません。
地球が[見ているもの]そのものです」
ローワンが後ろでわずかに目を見開く。
「イツキ、準備は?」
「はい」
イツキは膝をつき、地面にそっと手を当てる。
―――
共鳴の瞬間
世界中の視聴者が固唾を呑んだ瞬間、
画面が一瞬、音もなく暗転した。
無音。
真っ白な光。
そして――。
まるで全視聴者の脳に直接、
『地球から見た世界の記憶』が流れ込む。
地下深く、マグマの脈動
大陸全体がゆっくり呼吸しているような鼓動
森がざわめき、海が低く唸る
大規模な森林伐採の瞬間
海の深層に沈んだプラスチックと死骸
地層が変形して怒号のように軋む音
川が濁っていき魚がいなくなる流れ
都市化で押しつぶされる土地の断末魔
人間の争いや核実験、
森林破壊の衝撃が
地球全体に[痛み]として響く
そして最後に――
地球が今、限界ギリギリで警告している
【赤い波】
視聴者一人ひとりの胸に、震えのように伝わった。
これは映像ではない。
誰かが作ったCGでもない。
感覚そのものだ。
イツキの声が、どこか遠くから届く。
「地球は怒っているんじゃない……。
痛いんです。
苦しくて、これ以上は耐えられないって……
だから脈動で僕たちに訴えかけた」
ビジョンは約2.7秒。
しかし人類にとっては永遠にも感じられた。
―――
世界の反響
アメリカ
国防省の司令室。
技官が震える声で言う。
「これは……何だ? 映像じゃない。
頭に直接……!」
司令官は額に手を当てる。
「地震じゃない。攻撃でもない……
地球の痛みだと……?」
―――
中国
対外情報部の会議室。
幹部たちは互いの顔を見る。
「これはデマじゃない。脳が覚えている……」
「人類全体が感じた……そんなバカな……」
―――
ロシア
司令部。
無口な将軍がつぶやく。
「……地球の脈動がこんなに鮮明に……
人類全体へ共有された……?」
―――
イギリス
ニュース記者サラは酸素を吸うみたいに深く息をした。
「……本当に、地球が……苦しんでる……」
カメラマンが震える声でつぶやく。
「もう……攻撃なんて論じてる場合じゃないな……」
―――
日本
防衛省のアラタはモニター越しに呆然。
思考が追いつかない。
「地球の……記憶……?
そんなものを人間が……」
震えた声が漏れた。
「……イツキって何者だ……?」
―――
そして、配信の最後に
画面が戻り、
地面に手をついたまま、イツキはゆっくりと顔を上げた。
「これは地球からの[最初で最後のお願い]です。
次の脈は……もっと強くなる」
ローワンが息を呑んだ。
「What should we do, Itsuki…?(どうすればいい?)」
イツキは静かに答える。
「止めないといけません。
人間同士の争いも、地球を傷つける行為も……
まずは世界中の誤解を終わらせるところからです」
風が吹いた。
画面の向こうで、世界が一斉に静まり返った。




