番外 生きたい理由
「どうせ金握らせて形だけなんだろ?」
如月先輩にベランダに呼び出されて最初にそう言われた。 さっき、みんなと居た時よりも冷たい声。
「違うっスよ。みんな好きで透先輩といるんスよ」
すぐに首を振ると、如月先輩は「ふーん」とだけ言って黙ってしまった。
「あ、あのっ」
「なんだい?」
「じ、じじじ自分は、透先輩に救われたんっス。あの時、透先輩がいなかったら今の自分はいないっス。だから感謝してるんっス」
自分が落ちこぼれなのは、自分が一番知ってたし分かってた。両親は周りからいつも『天才』と呼ばれてて、兄と姉もそうだった。兄姉は都内の有名な国立大学に進学していった。なのに、自分だけは必死に頑張って受かった聖都学園でも落ちこぼれだった。成績は最下位層、運動もできなければ、両親の名だけで出来上がった人の輪にも入れずにいた。いつの間にか両親にも兄姉にも見捨てられていた。追い出されてからはバイトをいくつか掛け持ちしてボロアパートで何とか食いつないでいた。
「透先輩と出会うまでずっと死にたかったんっス。でも」
誕生日の日に家族に祝われなかったら屋上で死のうと思ってた。結局家族にも、名だけの友人にも祝われなかった。
「それで屋上に行ったんス。そしたら透先輩に初めて会って」
『あー、お前も死ぬの?てか俺ら同じクラスじゃん。自殺者二人も出るね』
その時の透先輩は冗談のように笑っていた。
『疲れたな、お互い。………やっぱ死ぬのやめたわ』
『なんでっスか…』
『そんな顔したままじゃお前だって死ねないだろ。幸せになってから一緒に死のうぜ』
約束_。その言葉で生きようと思えた。
「でも、謝らなきゃいけないことも沢山あるんスよ。落ちこぼれなのは変わらなかったし、両親と立ち向かう勇気もなかったっス」
「それさ、僕じゃなくて透に伝えたら?」
如月先輩は家の戸に手を掛けながら、横目でこちらを見た。
「泣きたいなら泣けばいいよ」
「……っ」
気づけば、視界がぐしゃぐしゃに滲んでいた。
「わ、わかってるっスよ……自分なんか、透先輩に似合わないって……でも……」
言葉が震えて、途中から声にならなかった。
「君もバカだね」
如月先輩の声が、静かに胸に落ちた。
「落ちこぼれだとか、俺に似合わないとか……そんなの、透は一度だって言ったことあるのか?」
「……な、ないっス」
涙を拭いながら首を振る。
「だったらそれでいいじゃんか。早く透に伝えてきなよ」
如月先輩の言葉に押されて、自分は透先輩の元に向かった。
「円香、もしかして泣い_」
「あ、ありがとうっス!」
透先輩が言いかけた瞬間、思わず声を張り上げていた。
「?」
_落ちこぼれでごめんなさいっス。失望したっスよね。
「自分を見つけてくれてありがとうっス。生きたいと思えるようにさせてくれてありがとうっス!」
ごめんなさい。
「だから、ありがとうっス」
「俺の方こそありがとう」
「え?」
顔をあげると、少しだけ照れたような透先輩の姿があった。
「円香が生きてくれてよかった。…約束、絶対果たそうな」
「〜〜〜はいっス!」
ハーレムって大変




