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俺の10人目のカノジョは、罰ゲームで来ました。  作者: 白唯奏


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6/8

ごめんなさいが言えないから

 「………………………………………………………………知ってるよ」

_あの日。円香と出会った時に思った。

ゆめのように気遣いもできない。

朱莉のようにバカみたいに明るくない。

彩芽のように努力ができない。

ゆあのように思ったことを口に出せない。

すずかのように人に寄り添うことができない。

空のように好きなものをやり続けることができない。

花恋のように誰かの手を引いてあげることができない。

だから、円香は一番個性がない奴だと思った。ただそこにいて息を吸ってるだけの存在。同い年の落ちこぼれ。

でも、それはただの俺の勘違いだった。

「知ってる。痛いぐらいに分かってる」

「とお」

「透先輩、オムライスできたっス!」

ゆあが何かを言いかけた時、キッチンの方から円香の声が飛んだ。そんな円香にゆあが「タイミング…」と呟いた。

「初めて作ったんスけど、いい感じっス!」

得意げに言う円香に呆れたのか、ゆあがため息をついた。

「もういいよ…」 

「早く食べよー!」

朱莉のはしゃぐ声を聞きながら、椅子に座る。他のカノジョたちも席について、あおいと円香を待った。

「僕のは卵にこだわっていてね」

と、あおいがオムライスの乗ったお皿を持ってチッキンから出てきた。

「火加減が一秒でも違ったら全くの別物になってしまう。それと、最初の混ぜ加減も_」

「もう大丈夫よ〜」

ゆめが苦笑しながら、あおいの話を遮った。

「温かいうちに食べましょ〜」

「それもそうだな」

あおいはテーブルにサッとお皿を置いた。お皿の上には高級店で出てくるようなふわとろのオムライスが乗っていた。

「美味しそう!」

「早く食べよ」

「料理もできるなんてね。空っちとは大違いー」

「文句なの?そっちは洗濯もできないのに」

「なっ」

「それにしてもさすがあおい様!」

「そのセリフはさっきも聞いたわよ、星奈。でも、本当に美味しいわ」

カノジョ達が取り分けられたオムライスを食べながら感想を言い合う。ところで_

「俺には無いの?」

「もちろんっス!」

「あったら勝負する意味ないじゃん。忘れてたの?」

あ、そういえば勝負に勝った方の手作り料理食べる的なことしてたような………。

「い、いや忘れてない。忘れない忘れない………」

ゆあの冷たい視線から目を逸らす。すると、今度はチッキンから円香が飛び出してきた。

「これ、なんスけど……」

そう言って差し出してきたのは、不格好で少し焦げていたオムライスだった。だけどそれも、円香らしい。

「見た目はまあまあだけど、いい匂いですぅ」

すずかがそう言いながら、円香のオムライスが乗ったお皿を受け取った。他のカノジョもそれぞれ円香のオムライスを口に運ぶ。

「ど、どうスかっ?」

「美味しい」

「焦げてるけど、なんか……懐かしい味」

「円香っちらしい味付けだよねー」

「っ。ありがとうス!」

円香は少し照れながら言った。その横で、あおいが円香のオムライスを一口食べた。

「え、何してんスか……」

「うん………料理は技術より気持ちだからね。悪くない」

「…………それ、褒めてんスか」

「もちろん」

あおいが頷くと、円香は「あ、ありがとうっス」と顔を赤くした。

「そろそろ結果発表!」          

朱莉が元気よく手をあげた。

「あおい様と円香どっちが良かったか手を上げて。あ、透もね。」

「え、俺食べてないんだけど」

「じゃあ、最初はあおいちゃんからぁ」

すずかの掛け声に、彩芽、すずか、花恋そして星奈が手を上げた。

「やっぱり、見た目は大事よね」

「あおいっちの料理は食べ飽きないんだよねー」

「円香には悪いけど、あおい様しかいないっ」

「4人、ですかぁ」

「ん?ちょっと待って、それって」

「次!円香せんぱいが良かった人!」

ゆめ、朱莉、空、ゆあが手を上げた。

「気持ちは大事だからね〜」

「円香せんぱい頑張ってた!」

「円香にしては良かったから」

「…空が上げたから」

「4対4……あとは透先輩だけっス」

全員の視線が一気に俺に向けられた。

「えぇ、俺?一口も食べてないのに……」

「細かいことは気にしない!」

「ほらほら選んじゃって。あっ、私情はナシね」

「はいはい……」

テーブルに並べられた二人の作ったオムライスを見つめた。完璧なオムライスと不格好なオムライス。見た目は断然、あおいのだが_

「俺は…円香の方かな」

「ほんとっスか!」

円香の目がキラリと輝いた。

「じゃあ料理対決は円香せんぱいの勝ち!」

「おおぉ、半々だねぇ」

「くっそー、あおい様が負けるだなんて」

「ははっ、僕にだって負けることはあるさ」

星奈が大げさに頭を抱えているのを見て、あおいと花恋が笑った。

「勝負はまだ終わってないよ!さあ、ゆあっち達やっちゃって!」

「はいはい、分かったよ。ゆあ」

「なんで空まで、ゆあにルール説明させるの…。わ、分かったって。次は透への関心度対決。透が出した質問にちゃんと答えられるかを決める」

ゆあは言い終わって俺の方を見てきた。

「ん?ちょっと待て。聞いてないんだが?てか、前はどうしてたんだ?」

「あー、前までは司会者がトールについての質問を作って答えさせてたけど」

「今は透がいるから、本人のほうがいいと思って」

「なるほどね…」

はあ、とため息をつくと、ゆめが「そんなに深く考えなくて良いんだよ〜」と肩に手を置いてきた。

「透くんが聞きたいことを聞くだけでいいの」

「そっか。…ところで、前はどんな質問だったんだ?」

「あはは〜、聞いちゃうか〜」

ゆあは躊躇ったが、結局口を開いた。

「みんな自由だし、個性的だから面白いのがたくさんあってね〜。例えば、わたしだと透くんを花に例えると何〜?とか、ゆあちゃんは透くんのルーティンは何かとかって聞いてたかな〜」

「あっ、確か彩芽っちは透っちの似顔絵描かせたよね」

「なんで花恋が知ってるのかしら」

「もー怒んないでよ。ゆめっちから聞いただけだしー。てか似顔絵描くとかマジヤバ」

「なんて言ったかしら?覚悟はできてるのよね」

言い争いになっている二人を苦笑しながら止めると、彩芽は赤面しながら視線を逸らした。

「ところでさ、それって全員に聞いちゃだめなのか?」

「ん?それってどういうこと?」

「二人だけじゃなくてみんなに聞きたいんだ。それに、盛り上がるだろ?」

「やりたい!」

真っ先に朱莉が手を上げた。

「わたくしは賛成ですぅ」

「なるほど、……だが勝負どうするんだい?」

あおいが首を傾げる。それに彩芽が「提案」と言って口を開いた。

「引き分けでもいいんじゃない?透が彼女にしないにしよ、貴方だって罰ゲームを終わらせなきゃいけないんでしょ?だったら、つべこべ言わず、勝負なんてやめて罰ゲームをした方が良いんじゃないの」

「うーん、彩芽ちゃんの言うことにも一理あるしぃ」

「思ったんだケド、罰ゲームの内容ってナニ?」

空が問いかけると、みんなの視線が一斉にあおいに向けられた。

「ん?ああ、僕の罰ゲームの話か。……そうだね、罰ゲームの内容は君_桜井透を落とすことだよ」

「はい?」

「そのままの意味さ。僕は君を落とさない限り、君たちから離れられないのさ」

沈黙が続いた。カノジョたちはお互いに頷き合って、再び視線をあおいに向けた。

「『落とす』って恋愛的な意味?」

ゆあが低い声で尋ねると、あおいは「ああ」と頷いた。

「だが、内容を決めたのは勿論僕ではないさ」

「ふーん」

「勝負どうする?てか、透が決めてよ」

空とゆあが気だるけそうに言った。他のカノジョたちも苦笑いを浮かべ、どうにかこの空気を変えたいようだった。朱莉以外は。

「透せんぱいこれ食べて!」

「えっ、俺?うわっ」

朱莉が俺の口に押し込むように入れたのは、あおいと円香のオムライスを合体させたものだった。

「美味しい?」

「まあ、美味しいけど」

「じゃあこれで勝負は終わりだね!」

朱莉は満面の笑みで言った。カノジョたちも呆れたようだったが、「朱莉らしい」と言って笑みをこぼした。

「…しょうがないっスね」


 勝負は思いがけない形で幕を閉じた。

「あおいちゃん、晩御飯食べてく〜?」

時計を見ると、19時をゆうに過ぎていた。今から帰るとしても、女子高生一人じゃ心配だ。

「何なら泊まってくか?部屋余ってるしな」

「いいのかい?それじゃあ、お言葉に甘えさせていただこう」

「ふふっ、腕を振るうわ〜」

 しばらくしてテーブルに料理が並べられると、自然とカノジョ達が集まってきた。

「わーい!カレーだ!」

「美味しそぉ」

「ゆあちゃんはチーズ載せる〜?」

「はい、ありがとうございます」

「朱莉はしゃがないで。うるさい」

「空先輩はチーズ乗せるっスか?」

「花恋、アタシにもスプーン取って」

「私のとこにブロッコリー乗せたの誰?」

「げっ、彩芽っちこれには事情が…」

ぎゃあぎゃあと騒ぐカノジョ達を見てクスリとあおいが笑った。

「毎日こんな感じなのかい?」

「まあな」

「楽しそうでいいな。…羨ましい」

あおいのボソっと呟いた声が、喧騒から遠くかけ離れた気がした。

「なあ」

気づけば俺は声を掛けていた。

「_俺のカノジョにならないか?」

「え」

一瞬、あおいの瞳が揺れた。

「あー、いや仮ってやつ。お前だって面倒くさいことに巻き込まれてるならさっさと終わらせたいだろ?嫌なら断ってくれてもいいし」

「……そっちか」

「ん?」

「ああ、いや…僕が君のことを落とせたと思っただけさ。いいよ、君とカノジョになろう」

あおいが差し出した右手を取ると、他のカノジョたちが一斉に拍手をし始めた。

「透がまた彼女つくちゃった」

「うそ、マジで?」

「これからもよろしく〜」

「お前ら見てたのかよ」

「もちろん!」

騒ぎ出したカノジョたちの中で、あおいが静かに笑っていた。


 夕食を終えると、カノジョたちはそれぞれの時間を過ごし始めた。キッチンでは彩芽とゆめが食器洗いをし、朱莉と花恋とすずかがテレビに食いついていた。ゆあと空は部屋に戻ったようだ。星奈はランニングをしに行った。

「あれ?あおいと円香は?」

何気なく口にすると、すずかがベランダの方を見て言った。

「二人ともベランダに行ったぁ」

「そうか」

 しばらくすると、二人がベランダから出てきた。円香には泣き跡がついていた。

「円香、もしかして泣い_」

「あ、ありがとうっス!」

「?」

「自分を見つけてくれてありがとうっス。生きたいと思えるようにさせてくれてありがとうっス!」

円香の瞳には今までに見たことない光が宿っていた。

明日は番外編がでま〜す

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