初対面!?
「しょ、勝負ッス!」
なぜ、こうなってしまったのだろうか?
俺は膝に乗ったゆあを見下ろしながら思った。それは遡ること10分前__。
「透が如月あおい様に告白されたぁぁ!?」
中庭で偶然出会った星奈に朝あった事を話すと、ひっくり返るほどの大声で叫ばれた。あわや、手に持っていた弁当を落としてしまうところだった。
「『様』って……。お前そういうキャラだっけ?」
「ところで、透くん。結局その話どうなったの〜?」
ゆめの微笑んでいる顔が、いつもと違ってどこか怖い。
「そうっス。気になるっス」
食い気味の円香をどけるものの、いつの間にか集まっていたカノジョたちの囲まれていた。
「まさかわたくし以外にも愛人を作ろうだなんて……」
「透っち、あおいっちのこと彼女にするん?」
「すずか、それは禁句よ。でもそうね、私も彼女を増やすなんてどうかと思うけど」
「とーるせんぱいはあたしたちのことどうでもいいんだー?」
「いやいや違うから!というか、空とゆあも何か言ってやれよ」
俺の背後で呑気にスマホを弄っている二人に視線を送ると、やれやれと言った様子で空がヘッドホンを外した。
「ボクはどっちでもいいと思うケド。だって、もう9人も彼女がいるんだし」
「ゆあはみんな許さない……」
ゆあはスマホから目を離さずにそうぼそりと言った。
「やあ、透君。ここにいたんだね。…確かにハーレムと呼ぶのに相応しいようだ」
冷たい沈黙が流れ始めた時、噂の張本人_如月あおいがにこやかな笑みを浮かべて近づいてきた。
「いやぁ、可愛らしい妖精さんたちを撒くのは大変だったよ」
可愛らしい妖精とは朝からずっといた大勢の女子たちのことだろうか………?
「え…ほ、本物、だ…」
口元を抑えながら星奈が後ずさる。
「星奈っちー。息してー」
花恋は星奈の背中を叩き、朱莉が「おーい、星奈せんぱーい」と目の前で手を振るが、星奈は瞬きすらしない。しばらく、星奈を正気に戻そうと他のカノジョたちもそれぞれ奔走し始める。そんな中、平気な顔で近づいてきたあおいに問いかけた。
「まさか君の彼女たちの中にも可愛らしい妖精がいたんだね」
「それで、何の用だ?」
「それはもちろん、罰ゲームを終わらせに来たんだ」
「はあ」
やけに美形な横顔を直視できずに視線をずらすと、ぴょこっとゆめがあおいと俺の間に入り込んだ。
「まあまあ二人とも、そんな暗い顔しないでお昼にしよ〜」
「そうだな………って、どこが暗い顔なんだよっ。見るからにコイツは見下した顔だろ!?」
「ふふ、見下してなんかいないさ。ただ弱そうだなっと思っただけさ」
「それが見下してるっつーの」
肩を落としながら、まだ騒いでいる他のカノジョたちの方へ向かう。
「とーるせんぱい!ピクニックの準備できたー!隣に座ってー!」
両手を広げて呼びかける朱莉の隣に腰を下ろす。
「ほらみんなも座れ」
「はいっス」
「星奈っち、お昼ー」
「ん…?メ、シ」
星奈がようやく現実に戻ってきたのか、持ってきた弁当に手を伸ばした。
「ゆあはここに座る」
と、ゆあが俺の膝の上に座った。
「みんな揃うなら重箱のほうが良かったわね〜。あっ、あおいさんも一緒にお昼どう〜?好きな席に座っていいわよ〜」
「……ふむ。では僕も君の隣に座らせてもらおう」
あおいが俺の隣にすっと座った。すると、膝の上に座っていたゆあが怪訝そうな顔で「ふんっ」とそっぽを向いた。
「なんで隣が部外者なの。ありえない」
「まあ、ゆあ。そんな事言わずにゆめの作った弁当食べようぜ」
「…………透は女心分かってない。朱莉、これ食べて」
ゆあはそう言って、弁当に入ったミニトマトを朱莉に押し付け始めた。
「あたしも食べたくないもん!とーるせんぱいにあげちゃえ!」
「ゆあちゃん、朱莉ちゃん〜?好き嫌いは駄目よ〜?」
「ひっ!ゆめせんぱいがこわーい!」
騒がしい三人を横目に、俺はあおいの方を見た。
「あおいってそんな可愛いの食べるんだな」
あおいが手に持っていた弁当が目に入った。くまのぬいぐるみをもしたキャラ弁だ。目のハイライトまで細かく作られていた。
「っ」
「あ、別に引いてるわけじゃなくて……その、すごいなってだけで…」
「いや、大丈夫だ。ありがとう」
「?どういたしまして?」
「実は、母が作ったものでね」
「へぇ、すごいな。俺は母親の料理なんて食べた記憶ないな…」
__そういえば、母親は料理下手だったな。黒焦げの料理しか出てこなかった。
「そうなのかい?ならば僕の手料理を食べてみるかい?
「それはだめっス!」
突然、円香の声が割って入った。
「透に先に手料理をあげるのは自分っス。約束したっス。だから_」
円香が拳を強く握りしめ、あおいを睨みつける。
「しょ、勝負っス!」
3、4、5話は円香メインで〜す✌
お楽しみに〜