2人目の師 ウェンディ
ここで私は私にもっとも影響を与えた師について語らせて頂く。
私は小さな頃残念ながら両親とはあまり上手くいっていなかった。
魔法使いには珍しい事ではない。私は何でも出来る万能の天才大勇者タリアではないのだ。
普通の子とは違う。どうしても魔法使いにはそれがつきまとう。
舞い上がってしまい、子供を何かブランドのようにみてしまう親
接し方が分からずに上手く出来ない親。
どちらも子は敏感に察して上手くいかないケースがある。魔法使いでなくてもある事だが魔法使いにも当然つきまとう。僕の両親は後者であった。
初めての子が魔法使いなのだ勝手が分からなくて当然だ。祖父や祖母も帝国の内乱で死亡していた。どう接していいか分からなかったのだろう。
それでも僕を愛そうとしてくれていた。
僕はその事を見つめなければならなかった。
愛し合う事は1人では出来ないのだ。
生活に特に不自由する事は無かったが、僕はあまり家にはいつかなかった。僕はドナの内弟子になる事を望んでいた。何度かお泊まりをする事もあり、彼女の家には僕と同年代の子もいたと知っていたが、ドナは反対し家庭教師という形を取っている。きっと彼女なりに僕の事を心配しての事だろう。
内弟子には家族のように接する彼女は僕に魔法を教える時よりも生き生きしていたように見える。忍者のような格好をしいたずらをする弟子を彼女は忍術で捕まえていた。
僕はその忍者と手合わせをしたが僕の方が圧倒的に強かった。僕はドナに僕の方が強いとアピールしようとして必要以上に実力差を見せつけるような勝ち方をした。僕にはいつも温厚なドナはその日も怒る事はなく、悲しそうに僕を見つめる。僕はそれが怒られるより悲しかった。僕は忍者の格好をした子に「ごめん」と謝り手を差し出す。忍者の格好をした子は僕の手をとり「いつか、勝つ」と言って笑ってくれた。ドナはその子を抱きしめていた。
結局内弟子にならなかった僕は家庭教師のない日は1人で修行をする。学校にも通っており魔法使いの増えた今の時代は魔法使いの子のクラスに通う。5人程度の小さなクラス。普通クラスとは3割程度のみ授業が重なる。魔法使いクラスの実習で魔境に向かう。
魔境の中では危険度のかなり低い所。更に言えば人の通れる道もある。
危険な魔物も獣、精霊や妖精には出会わず。ましてや人食い鬼に、ドラゴンや巨人等いるはずもない。まだまだいるかもしれない所に行くというだけで経験になる実力なのだ。
しかし帰り道僕は見つけてしまう。他の生徒や先生には見つけられない道を。
学校終わり、僕はもう一度その場所に訪れる。
僕だけに分かる道を進む。道の奥1人の少女。魔法使いは年齢は分からない。3年生になったばかりの僕よりは年上だがまだまだ少女と言えるような若さの女性が一人いた。
彼女は「私はウェンディ、よくここを見つけられたわね」と言って微笑んだ。正体を隠したい人はありふれた名前であるウェンディを名乗る。エリーとウェンディはよくある定番の名前だった。初恋だったのかもしれない、僕の初恋は血のつながらない妹だと今日まで思っていたが、恋なんて気持ちは分からなかったし。だからこれが初恋だったのかもしれない。
僕はウェンディにドナとは違う気持ちでいいかっこをしたくて「僕は勇者タリアも超える最強の魔術師になるんだよ」と言って笑った。彼女も微笑み返してくれた。僕はそれから時間を、見つけてはここに通い彼女に稽古をつけてもらう。彼女はそうしていいと言ってくれた。ほとんど毎日来ていたように思う。僕には彼女が国一番の魔法使いドナより強いように感じた。
彼女は「ドナが自慢するだけある」とつぶやいた。




