父の仕事とエルフの国の建国について
私の父は外交官だった。
父はエルフの国の住人を私の生まれた国に受け入れようとしている。
エルフは大半が大悪女サラに追い立てられ別世界へと旅立ったが、こちらの世界に残った者も少なからず存在する。そういった者たちを受け入れようとしているのだ。
父がこの仕事を任されたのは、僕が魔法使いだった事も大きい。
エルフの国の王族の一部がこちらの世界に残った。
その王族には僕と年の近いお姫様がおり、僕はその話し相手として選ばれたのだ。
魔法使いなら王族を前にしても大丈夫だという考えだ。
エルフについてはいくつかの事が分かっている。全員が魔法使いだか、一部の例外を除き人とは子は作れない。そして大昔は人だった。人からエルフに変わる伝説がつたわっている。
※エルフが本当に人だったかについては否定的な研究が多いがエルフの国の伝承ではそうなっている。ただエルフの国でも信じないものは多い。
その昔、今を大切にする者という、非常に強力な精霊がいた。その精霊が人間に恋をしたのだ。普通ならありえないことだ。精霊というのは魔法の分類的に本来生物に与えられる格(状態)でいうところの2次魔法や3次魔法ではなく、魔術や錬金術などの術に分類される格である2.5次魔法等.5がつく側に分類される。
※錬金術師は生き物も魔法と考える。あるいは魔法の特徴があると考えるため、生き物にも魔法の格というものを当てはめる事がよくある。錬金術師の祖、大勇者エリーにより魔法使いには一般的に広まった考え方である。
魔法の格は相性に影響を与える。人間が人間を大事にするのは格が同じだからであり、いくらかわいいペットがいても人間と同じだけ大切にすることは難しい。
またそうできないものは同じ種の社会では孤立しがちになる。私の妹は人造人間であるために格に差がある事にずっと悩んでいた。私はその苦しみを何年も気づく事ができていなかった。ただ人造人間は特殊な事例であり、人を目指して作られたため、格の差による影響はかなり小さいのだ。全くないのかといわれたら私にはわからないが、私の知る人造人間は全員そのことに悩んでいる。
話がそれたが、今を大切にする者は1.5次魔法という、精霊の中でも殆どいない高位の存在だった。
そんな高位な精霊と人が、2人でともに過ごす。精霊と人では、命の形が違う。精霊がもう少し一緒にいたいと心の奥底で思っただけだった。
それだけで人は精霊に変わり、森は難攻不落の魔境に変わっていた。
一般に神隠しと言われる事件の一部は精霊に別の存在に変えられたケースだろう。別の存在になれば大抵目では見えなくなる。精霊もそのままでは見えないものは多い。
そしてその思いは呪いとなり魔境に迷い込たものを精霊に変え続ける。恋人が寂しくないようにだ。
迷い込み精霊にかえられた皆は嘆き悲しんだりはしない。もう人間ではないのだ。
最初に精霊にかえられた者はその事が悲しかった。
皆が心を喪ったのだ。唯一心を残した彼は悲しみ続ける。ある月がうすく輝く夜中、その精霊は悲しみから自らを巨大な樹木に変える。
自らを生贄として樹木に変える変わりに皆に人としての心を残してほしいと祈った。その祈りは今を循環の精霊たる今を大切にする者に届いた。
今を大切にする者はその樹木があり続ける限りは人の心を失わせないと約束した。人の心を残した精霊はエルフと呼ばれる存在になる。
そしてこの地にとどまり聖なる樹を守り続けるのだ。
嘘か本当かは分からないがそれがエルフの国の建国神話だ。




