呪いは弱い者を狙う。
ニアさん達は僕の後をつけているが話しかけられない。
錬金術師とは難儀な生き物だ。
仲直りの一歩を踏み出す事が苦手なのだ。
魔境ではそういう迷いもマイナスに働きかねない。
魔境が危険な理由は魔物や獣ではない。
心を作り変えられてしまう事だ。
精霊は世界中のいたる所に存在する。そして人は既に街で住むように心を作り変えられている。
いや、街で住む心をもったものが人として生まれる。
この大昔の錬金術師の発表は人々の心をかき乱した。
自分の心は自分で育てたものだと誰だって信じたい。
この話を人は既に精霊により運命を握られている。
そう捉える人が多かった。
死ぬ事とは運命を渡り歩く事に失敗する事。
魔境では、強くなければ、死ぬか、精霊に運命を操られるか、たまたま助かるか。
たまたま助かるケースは少なくない。
たまたま助かるケースは少なくないのだ。
優秀なそれこそ大魔境の試練を突破し勇者の称号を与えられるような者でもたまたまを手繰り寄せるのが上手いだけなのかもしれない。
僕が1度も戦わないうちにニアさんは10の魔物に襲われる。呪いは弱い者を狙う。
精霊は呪いと祝福の別の姿、弱ければ弱い程精霊は呪いにかわり戦い自体が増える。
それにしてもおかしい。
ニアさんやカトリーナさん、忍者男君は学校を卒業して間もないとはいえ一流の魔法使い、魔境は経験を問われる場という事を差し引いてもそう簡単に狙われるとは思わない。
考えられる理由はある。
ニアさんは皆とはぐれ1人になっている。
魔境で1人になることは自殺行為だ。
難易度は数段あがる。
また最初から1人よりもはぐれて1人になるという事はもっといけない。
何者かにはぐれさせられた。
その可能性が高い。
魔法使いにとって複数の弱い呪いより、一つの強力な呪術。弱い呪いは影響を与えるしきい値を超えない。
呪いとは効くか効かないか。
この森にはニアさんさえ呪いにかかるほどとてつもなく危険なものがいる。
まさか僕ではないだろうか?
ニアさんが魔物に負ける事はない、しかし1人で戦う事は心をすり減らす。特にニアさんは寂しがり屋で繊細。
ニアさんは10の魔物を危なげなく退治したあと「助けて、ウェンディ」とつぶやいた。
その名を聞き僕は思わずニアさんのもとに引き返した。




