宮廷魔術師見習いになりました。
私達の仕える王は旧帝国内乱時を生き延びている。
旧帝国の内乱時、暴走した魔術師の魔法によりほとんどの有力な貴族は死んだ。
帝国はその領土拡大時に反乱や恭順の度合いにより、その後の待遇に差をつけた。それでも、滅ぼしきるような事は稀であり、反抗的であっても監視できる場所に配置変えされるに留まった。
恨みの濃いであろう当代の君主は小さな領地に移され、元の国から引き離されるのだ。
基本的な統治は引き続き、君主の家系か近しいものが行い、大規模でありながらほとんど反抗しなかった当代君主は隠居のみをし、次代は王を名乗ることさえ許された。
他国との交戦や100人以上の規模の軍事行動と魔法学校を置く場合、城や領主屋敷の移設、税率の変更、治水工事、歴史書の作成、法律の改正等で許可が必要になるなど、一部の権利を奪われ、属国やそれに近い同盟国となりはしたが帝国の版図拡大時には国はなくならなかった。
ただ帝国の内乱は違う。ほとんどの国の長が死亡した。魔術師協会か女神教か女神正教か月の民か、30年以上も責任を押し付けあっている。
帝国が滅ぼした国は数は少ないが、滅んだ国では王族に近しい者は
女性や子供でも殺されているし、逃げ延びものも10年以上も追われ続けた。
これも帝国の崩壊時は違う。かなり雑に一度の魔法で主要なものだけが狙われたし、子供まで狙われるような事はなかった。
私達の仕える王は当時まだ子供だったから助かり、15歳で王となった。
先々代の王に仕えた宮廷魔術師の子の呼びかけにより数人の魔術師を集め、何とか王として体面を保ち、国家運営に関して一応は最終決定権をもっている。
我々宮廷魔術師はかつては高度な魔法任務にあたる組織とされていたが、今は他所より安く魔術師に魔法を依頼できるが依頼内容は公共性の高いものに限られるような組織になっている。
私は妹の体調の悪化による休職や、これるときだけで良いというような融通を利かせてもらえる期間を挟みつつ王が隠居するまでの15年仕え。永久魔術師長という名誉職をもらい、好きな時に手伝いに行って、問題を解決すれば恩給をいただくという立場になった。
それでも私はやはり見習いからはじめる。
僕が宮廷魔術師になる事を決めた事をあれだけ喜んでくれたニアさんとは、疎遠になったまま話せていない。ニアさんや他の同級生達は1年の充電期間に入った。職やその家の経済状況にもよるが学校卒業後半年から1年ほど自由を満喫する人が多い。
僕は早く5年宮廷魔術師として仕えるという義務を終わらせたく思っており、直ぐに宮廷魔術師見習いとして王に仕えた。
僕は宮廷魔術師として僕の教育係になった先輩に宮廷魔術師のあり方について教わる。
「エリク君、魔法使いは、もう人間ではない。他人の為に魔法を使うならその事を忘れてはいけない。魔法使いは誰もが陥る悩みだ。魔法使いはかつて人間だった。けれど今は気持ち一つで人間を終わらせられる。当然恐れられ、妬まれる。それでも役割をはたす。それが人間の中で生きるという事だ。」僕の教育係の先輩はそのようにはなす。魔法使いは子供の頃から教わる話。いままでだって散々聞いた話だが、今はようやくその意味がわかりはじめる。
僕は人間でありたかった。人間、それも子供扱いされたかった。されるわけがない。人間よりはるかに大きく強い獣がいたとして子供だからと、安心させたりはしない。ペットとなるようなものさえ、何度も襲わない経験を積みようやく少し警戒が緩むだけ。
そしてこの国は特に魔法使いによる多数の被害者を出した国。僕の両親も。
だけど嫌なら象牙の塔に籠ることなんて出来はしない。
僕はそういう道を選んだ。知らなかったなんて言い訳は通用しない。
魔法の格の比喩。
”魔法の格が一つ違うという事は、石ころと競争するようなものしかも格が高い側がゴールを決めるのだ。”
この比喩を僕は魔法使いはだから必ず勝つという意味だと思っていたし、実際その意味でつかわれている。
けれど本当は僕達はまずスタート位置を探す所から始めるのかもしれない。
僕が先輩の顔を見据えると彼女は顔をスッと顔をそらした。
先輩魔術師が顔を反らしたのはエリク君が男前だから。




