錬金術クラスへの編入
大魔境の入り口、神隠しの樹海、私を止める師はもういない。
僕は魔法により剣を作り出す。ウェンディは剣を使っていた。ドナは剣も杖も使っていたが、大勇者タリアや更に昔の大勇者たるエリーは剣を使っている。皆探検家として名を成した人物だ。
僕は両親の事を思い出している。母は子供の頃剣術道場に通っており、地区の大会で優勝するような腕前だったという。父は柔術こちらも道場で一番の腕前だった。今の僕と同じ15の頃、魔術師が道場にやってくる。10歳にもなっていない。それでも皆緊張している。いや皆もう悲しみに浸っている。10分程度見学し、3回程度素振りしただけのその子供は、母と勝負したいといいだした。母は最初1回は勝った。そして二度と勝てないまま5回負ける。負けるたびに差が広がるのがわかる。
その後は道場の師範含めても誰も一度も勝つことは出来なかった。そして母は剣術を辞める。似たような経緯で柔術を辞めた父と知り合い、その後かなり順調に交際を重ね20歳で結婚したと話してくれた。
僕が魔法使いと言うことかわかっている。
僕はその時の事を思い出している。ずっと嫌な思い出だと思っていた。魔術師の僕に母はなぜそんな話を聞かせたのだろうと子供ながらに傷ついている。
僕はいつもよりほんの少しまばたきがながかった。
それが問題の訳では無い。それが気になってしまった事が問題だった。
気持ちに気づけない者という精霊だった。
咄嗟に放った僕の魔法は全く効かない。
真っ赤な精霊が手を伸ばす。赤い精霊は危険な精霊。僕は命乞いをする。「精霊様お許し下さい。妹が病気で、それで僕は必ず帰らないといけないんです。」
その言葉を聞き精霊の手が止まる。僕はそっと顔を上げる。気持ちに気づけない者は「やったー」と僕に未練がある事を喜んだ。僕は涙が止まらない。精霊の手はゆっくり伸びてくる、その手に触れられた瞬間僕は永遠の苦しみとともに体が樹木へと変えられる。
細く長く伸びる手が僕にもう触れる。そのとき「ぶつぶつぶつぶつ」とカトリーナさんにもらった御守り石から純精霊語の呪文が聞こえる。
僕は思い出す。母は僕にあの話を幸せそうに語っていた。本当に乗り越えたのかはわからない。けれど、子であり魔法使いである僕に幸せそうに話せるようになった。母は魔法使いに負けなかったのだ。
僕は次々に思い出す。ウェンディの魔法は僕の記憶を封じようとした時、それは確かに失敗したのに僕はかなりの記憶や思いを失っていた。
僕がウェンディの魔法を利用し自分で封じたのだ。
僕は将来ウェンディに殺される。普通の修行では避けられぅい運命。僕は自分の強さを捨てる事で強くなる修行をした。強くなる為には弱くなり絶望する事が必要だ。錬金術師の修行方だ。僕は妹を殺さなければならない事に多分絶望していた。絶対にそうだと分かることに多分とつけてしまうほど心を失っていた。
僕はカトリーナさんに「ごめん、カトリーナさん、僕には命をかけても守ら無ければならない人がいるんだ。君との約束は守れそうにない」と、彼女の5年越しの愛の告白に回答をした。2人の話は無かった事になる。明日から僕はこの5年間のように彼女との思い出は忘れたままとして生きる。僕が前を向くと気持ちに気づけない者は名を変えないまま青い精霊に変わっている。スタコラと森の奥に帰っていく。僕は小さな太陽石一欠片だけ手に入れエリーの元に帰る。僕は笑顔で帰ったのか、涙をこらえた顔で帰ったのかはわからない。エリーが笑顔で迎えてくれた事だけは覚えている。僕は錬金術クラスへの編入を決めた。




