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ハンナの店

大魔境に向かう前の日、僕はハンナの家族のやっている店に向かう。ウェンディが去った今、僕の知る中で最高の魔法使い。彼女は僕の事などクラスメイトの一人という認識だろう。

僕はそわそわしながら店に入る、店自体は何度か訪れている。エリーと一緒に入ったことはない。なぜか僕はそれができなかった。その日も僕は一人で商品をみて回る。欲しいものがない事は分かっている。

「あれ、君はクラスメイトの」彼女が僕の元にやってくる、魔道具は高級品であり、お客さんは多くない。魔道具はあまり店頭で買うようなものではないのだ。

「ハンナさん、ここハンナさん家のやってる店なんですね。」僕はつい知らなかったふりをしてしまう。彼女とまともに話した事はなかったのに、後ろめたく感じてしまう。僕は妹が病気になるまで何もしてこなかった。きっとずっと周りの期待に応えながら生きてきた彼女は僕を良くおもっていないだろう。

彼女は「そうよ、私が作ったものもあるから買っていきなよ」と言ってつめよる。僕は少しがっかりする、魔道具なんておいそれと買ったりはできない。所詮はお金持ちのお嬢様、そんな事も分からないのだと少しだけそう思う。僕はそれをただのヒガミとは思わない。僕に対してそう思う人もきっといるのだ。

僕は少し意地悪な質問をする。「太陽石を探してるんです。」そう言った。さすがに彼女も驚いた顔をする。売ってあるはずがない。

エリーの病気を唯一進行を抑えられる薬の材料、伝説の賢者の石の一つ。但し魔法使いはもう賢者の石の力を超えている。大魔境のどこかにあるとされる賢者の石は、それを手に入れる事が出来る魔法使いなら、病気など簡単に治してしまえるだろう。

エリーの病気が世界に一件しかない、非常に特殊なものなのだ。だから太陽石は薬の材料でなく、探検の証であり、売るようなものではない。彼女は今にも泣きそうな顔になっている。僕が本気だと分かったからだ。僕が本気なのに、意地悪く魔道具を売りつけようとしたからだ。僕には罪悪感がわいてくる。僕はハンナに謝り店を出る。僕はその足で大魔境へと向かう。妹の事は誰にも頼んでいない。大切な人がいるのに蔑ろにする。呪いの本質だ。僕はハンナを傷つけた事で心が迷い、その迷いが僕にやるべき事をさせなかった。神隠しの樹海、最大級に危険とされる大魔境でも特に危険とされる場所。最初の人造人間の帰らなかった場所だ。


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