僕は魔法のテストではいつも0点だったけど下から10位位だったし補習は受けなかった。
昨日怒って帰ったはずのニアさんが今日は僕の隣の席をカトリーナさんに譲ってもらいコチラをみてニヤニヤしている。大口をたたいたのに忍者男君にコテンパンにされた僕を笑っているのだろうか。この時から既に彼女は錬金術師の才能があったのだろう。
彼女は授業なんて一つも聞いていない様に見えて成績がとても良い。ハンナやカトリーナさんはいつも満点だけれど、順位を付ける勝負でハンナが勝つ事や、品行方正なハンナと猪突猛進なカトリーナさんという差もあり、ハンナが一番の優等生という事になっている。ニアさんや忍者男君はその2人を除くと5番以内くらいには入っている。
一番下は毒なめ男君、2番目に下は分身男君、僕は0点のはずなのに下から5〜10番位だ。
それにしても魔法使いも多くなった。昔の物語ではク10人以下なんていう事もざらであったが、人口が増えた事で魔法使いも増えたのだ。今はどの学年も50人を大きく越える。順位は学年関係なくつけるが僕達の代は上と下に偏った学年だった。
エリーが帰り際にうれしそうに話てくれるシオンとザルスの物語では彼等の通う学園は4学年で10人前後に過ぎない。
逆に帝国時代は魔法使いの意図的な偏りを作っていた為学校自体が少なく一学年で500人を超えていた。
僕はエリーの送り迎えがあるからテスト後の補習は大抵断っていたし、点数の悪い人は推奨されるだけで、誰でも受けれたし、受けなくても良かったが全く受けなかった訳では無い。ニアさんと忍者男君もいつも受けていたし、毒なめ男君は毒を舐めながら参加していた。というか満点をとったはずのハンナも受けているし全体的に女子は多く受けていた。忍者男君はかなりの男前だったからそれも関係していたのかもしれない。
巨乳好きの分身男君はハンナが参加する時には分身一体が参加していた。僕がその事で分身男君をからかうと、カトリーナさんは怒って帰って行った。カトリーナさんは分身男君が好きだったのかもしれないが彼女は分身男君の好みの体型では無かった。
なんのかんの半分以上の生徒の参加する補習だが、僕にはエリーの送り迎えの方が大切だった。エリーも最初こそ恥ずかしがって断っていたが、下校中に体調悪くなる事はやはり増えており途中からは何も言わなくなっている。
僕が3年に上がり、エリーが初等学校を卒業。エリーは魔法の才能はありそうだが魔法を使えない状況が続いている為、学園には入れない。僕は孤児院に頼み込み、もう1年だけエリーを残させて貰う事が決まる。僕には頼る人は何も無かった。
本当に困った時、僕は誰にも頼れない。助けてくれる人はたくさん居るけれど、守ってくれる人は誰も居ない。1年先延ばしにするだけで孤児院にはとても無理をさせている。
同情はするが、彼女を特別扱いする理由は本来ないのだ。もっと苦しい人だっている事だろう。僕が魔法使いだったから1年だけ先延ばしに出来た。けれど魔法使いが特別扱いされることをよく思わない人が多く、僕は学園卒業後宮廷魔術師になる事を条件に出された。300年前前なら皆の憧れる職業だった。今は誰もやりたがる人の居ない職業。
王様は既に名残として残るだけとなっている。
その年の終わりエリーはまた発作を起こし倒れた。
いつもなら魔法で簡単に治る症状がその日は治まらない。夜通し魔力による治療を行いようやく彼女は目を覚ます。彼女の瞳から涙がこぼれている。苦しいからではない。悔しいのだ。僕は彼女とともに暮らす事を決める。「エリー、君の身体は危険な状態だ、友達のままでは守ってあげられない。僕の妹になってくれるかい?」僕は発作で体力が落ちまだまだ苦しそうなエリーに尋ねる。
エリーは「はい、お兄様」と答え無理に笑顔を作ろうとした。




