錬金術師ミラの書物
僕は学校に通いながらアルバイトをする普通の魔法使いだった。
クラス分けは一応あるけれど魔術師クラスは人数が多くあまり関係ない。
僕は魔法なんかに熱をあげるクラスメイトを醒めた見た目で見ている。
僕は魔法使いに両親が殺されたけれど、魔法を憎むというのは違うと思っていたし、魔法なんてなければなんて思うのはかっこ悪いとも思っていた。両親を守れなかったのは結局僕なのだ。
ドナは僕はまだ子供だから、魔法を憎んでもいいといってくれるだろう。
同じように子供の頃両親を魔法使いに殺されたウェンディはきっと僕と同じ気持ちだっただろう。
結局本当に楽なのは全部自分の責任だとするほうだ。僕はまだまだ自分の弱さに気づけていないのだった。僕の当時の自堕落ぶった態度は流されない強さではなく、幼稚な弱さだった。
僕が「宿題やってこなかった」といい、ちらりとあたりを見ると何人かが僕に宿題を写させてくれる。僕がお礼を言うと写させてもらった僕以上に喜ぶ。
僕はここ間違ってるなぁと思いながら写すが、間違っていることは気づかないふりをする。ハンナは当時僕なんて歯牙にもかけていなかったと思う。
錬金術クラスに入ったはずのカトリーナさんは変装して僕の隣に座り積極的にうつさせてくれる。
変装しても世界3大美女に数えらえる美貌は隠せていない。恋愛感情はなかったと思うが彼女を隣にするとやはりドキドキしてしまう。
彼女は本当にいい人だった。しきりに僕に衝撃を与えると光る石を見せてくる。その石は僕が昔なくしたと思うものにそっくりだった。
※カトリーナさんの名誉のために言っておくと、錬金術師は宿題を写したり写されたりするのは全然ありという考え方が浸透しており、魔法の系統的にもむしろ推奨されていた。
学校が終わると僕は自堕落の仮面を外し、アルバイトをするかエリーの下校時間まで一人時間をつぶす。この時はまだよかった。
エリーは体調は良く崩すが1年前のように倒れるというようなことはない。
エリーの体調が悪くなるにつれ僕の時間をつぶす場所は喫茶店から図書館へと変わる。
人造人間関係の書物は錬金術の校舎の図書館に多い、司書のお姉さんとは半月ほどかけて仲良くなり、禁書の類も見せてもらう。
錬金術師ミラの書物は特に参考になる。エリーが最初ミラという名前を候補に挙げたのは彼女の影響だろう。精霊と呪い、呪いと命、命の定着。「人造人間は精霊を呪いにかえ、さらに呪いを命に代えた状態で肉体に適合させなえればならない。呪いを命に変換したものの事を生命誕生の素という」本はそう語り掛ける。
僕がその副作用を探そうとすると、暴れまわる錬金術師クラスの面々の笑い声や話し声が聞こえる。魔術師クラスに忍び込んだ時はずっと無口だった、カトリーナさんも大きな声で笑ったり喧嘩したりしている。司書のお姉さんに怒られるとみんなしゅんとして静かになるけれど10分後にまた元に戻る、僕は彼らに見つからないようにエリーの迎えに行く。続きはまた明日にしよう。僕は少しだけ心が軽くなっている。忍者男君は高い戦闘能力と探知能力を持っていたし、多分僕に気づいていただろうけれど、何も言わず、気づかないふりをした。




