私の未来
私は悪夢にうなされている。
ウェンディに抱きしめられ眠る僕。
そこで悪夢と繋がる。ウェンディに心臓を貫かれ死んでしまう僕。目はもう意味を成していない。途切れ行く意識のみで辺りをみわたす。ウェンディに抱き上げられている。その時の僕はもうウェンディよりも大きくなっている。ウェンディは泣き叫び僕の名を呼ぶ。
誰かが「しょうがない事だったのよ」となぐさめている。僕はその2人に憎しみの想いをいだいている。僕は何か大切なものを失う。
僕は目を覚ます。悪魔の最後と同じように僕を抱きしめるウェンディは
「見えたでしょう。これがあなたの未来」という。魔法使いは過去や未来をしることが出来る。そして変える事も出来る。だれでも多少はできるが、他の魔法使いもいるから全部が想い通りとはいかない。魔法使いの実力差が少なければ、変えない方に傾く。でももし、世界で圧倒的に強い魔法使いなら、いやそうでなくても世界屈指の魔法使いたちならかなり好き放題に変えられる。そして好き放題に変えてしまえば、後悔しか残らないだろう。「だから未来そのものを変えずに嫌な未来を乗り越えられるように頑張るんだよ」というのはかつて聞いたドナの言葉だった。
だから未来を知った上で今のウェンディを憎んでいない。今の自分でいられる。心に整合させる事が出来る。未来は僕にはまだ予感としか感じられない。だから今僕の瞳をこぼれるこの涙は悪夢が怖かったからに過ぎない。ウェンディはサラに強く僕をだきしめる。
ウェンディは「私はあなたを知っていた。これは私のわがまま、ドナにお願いして修行をつけに来た。私はドナの友達。あなたを殺さないため、貴方は私に勝てるようにならなければならない。少なくとも私に心臓を刺されても生きられるようにしないといけない。」
ウェンディが僕を強く抱きしめたのは、僕の恐れを癒すためでもあったけど、自分の苦しみに立ち向かうためでもあった。僕は体を起こし、ひとつぶの涙をこぼすウェンディの背中を優しくさする。ウェンディはなぜが少しだけ驚いた顔をしたのだ。
僕にはなぜ彼女がそんな事をしてくれるのかわからない。魔法使いは不老不死ではあるが、その不死性には段階があり、戦いや探検、呪いで命を落とす者は居ないわけではない。僕を特別扱いした理由が僕には分からなかった。今ならわかる。
最後の今ならわかるというのは、解釈が分かれそうですがかなり単純です。ウェンディもエリクが好きというのが1番単純な答えで、エリクが後に世界を救う人物だからというのが3番目に単純な答えなら、正解はその2つ以外の2番目に単純な答えです。




