立川さん
「えっ、本当に良いんですか?」ミー子は立川さんから役員を代わろうかと言われた。
「だって輪番制でもう去年立川さんは終わってるし…」おかしな話だ。つい2カ月前あんなにうるさくやれと言われたのに。
「う〜ん、管理組合の偉い人が出来ればって。
私はもう面倒なんだけどね…」立川さんも不本意らしいが。
やはり1ヶ月も70.80代が家を空けてるのを指摘したのが
管理組合的に良くなかったのか?
平間君が「管理組合は何か隠してる」と言ってたが。
だって病気で入院でもなく、そんなセレブでもない一般老人が家を1ヶ月も親族絡みもなく空けるとかおかしいだろう。
それもどこに行って何をしてきたか言えないなんて!
絶対変だ。
「それより杉本さん、警察だなんて一言も言わなかったじゃない!901号室の矢向さんに聞いたわよ!
息子さんの電話番号聞く時に元警官だからって言ったらしいじゃない!」立川さんが何だかまた怒ってる。
役員やらないと怒られ、役員仕事やったら、また怒られ…結局怒られるんじゃん!
「分かりました!じゃあ、立川さんにお願いしちゃおうかな?」と話すと立川さんは本当に苦虫つぶしたような顔になる。
『一体私はどうしたら良いの〜?!!』
「警察だと何か不都合あるんですか?」思わず大きな声で聞いてしまう。
廊下なので声が響く。
「特に無いわよ!もう、気にし過ぎよ。
じゃ、後は私に任せてね。」立川さんが急に猫なで声出して
そそくさと去ってしまった。
サッパリ分からない!
キイッと前の扉が少しだけ開いた。平間君だ。
口に指を立てたまま出てきた。
『うるさかったのかな?』とゴメンのポーズをすると
そのまま部屋に戻れと合図された。
部屋に入るとキッチンと居間の間の扉も閉めた。
「?」ミー子が頭を傾げてるとやっと平間君が声を出した。
「ここ、キッチンの換気口から結構他の家の会話聞こえるんですよ。」と声を潜めながら話す。
「ミー子さん、マンションの人に話してなかったんですね。」なぜかガラス戸の戸締まりも気にしてる。
「だって、もう辞めたし!5年も経ってるし!
わざわざ言う必要ないでしょ?」出来るだけ関わらないようにヒッソリ生きてきたのだ、そんな話する訳ない!
平間君だって家の中で、膝突き合わせて話したから言ったんだし。
「やっぱりこのマンション、何だか怪しい気がします。とにかく大人しくしてましょう。
僕、ちょっとネットで噂拾ってみたんですよ。
あのスカイブリッジに関して。僕の部屋のベランダから良く見えるし。」平間君は何か気になる情報を掴んだのか?
「そのネットの情報って何?教えて!」ミー子が聞く。
少し考える素振りをしてから平間君が笑う。
「良いですよ。条件付きで。」