捕まらない2人
土日回ってほぼ9階の人の確認できたが、901号室の矢向さんは朝も晩も居ないような?
よく考えたら役員交代してから姿を見てない!
前の立川さんが役員の時には、良く自分から立川さん家をピンポンしてオカズを渡したりしてた。
80代の方なんで、そういう付き合いが当たり前だった時代の人なのだ。
しかし、ミー子に交代してから姿を見たことない!
部屋で生活してる気配すらない!
息子さんの連絡先を聞き出さないといけないのに…
後、909号室の尻手さんもいつピンポンしてもいない。
70代の男性だ。
1人暮らしがことごとく捕まらない!
鼻をクンクンするが臭いはしないので、中で腐ってはいないと思うのだが。
尻手さんに限っては、住んで4年で1回しか姿見たことないが。
デカいリュック背負って入る姿を1回だけだ。
谷保さんは、住んでないから飛ばして良かったようだが、たまに部屋に明かりがついてるんだが…人が居る気配は無かったりする。
「9階の1人暮らしは、怪しい人ばかりなんだよなあ〜」自分も含めて頭をかく。
お向かいの人の動画を探してみたが、良く分からなかった。
だいたい動画はテレビでしか見ないし。
猫と柴犬ばっかり見てて人間の動画を全然見てなかった。
「家の中でほとんど済む動画ってなんだろう?」考えたが分からなかった。
立川さんに聞いたら、捕まらない人は、放置してて良いらしい。
また偶然会えたらで良いらしい。
80代70代だから心配だが、入院でもしてるのか?
「あら、久しぶり〜」と隣の905号室の西保さんがオープンテラスで手を振る。40から50歳くらいの同世代だと勝手に思ってるが。
この建物は古いので、上の方はテラスを増やして重くならないように設計されてる。
9階は最上階なのでテラスがバカでかい。
今の建物は鉄骨から床材壁材まで変えて軽いものにするので
まっすぐ四角いマンションに出来るのだ。
ここは、それ以前の建物なのだろう。
ルーフバルコニーにしてる建物も多いが、ココはオープンテラスから非常階段の螺旋階段で降りるように設計されてる。なので住人なら誰でもボーッとできるのだ。
川崎駅前の高層ビルと多摩川がコントラストになった夜景だ。まあ、半分真っ黒なんだが。
おかげでそちらに満月が見える時は、多摩川に反射した月が2つになって美しい。
スーパームーンや多摩川の花火大会の日は、出ると大抵西保さんも観てる。
「役員どう?」2人で月から目を離さず聞かれる。
「去年やっとけば良かったかも〜」とミー子が言う。
「一緒でしょう?新しいお向かいの人くらいで変わらないわ。」2人ともあんまり話さない質みたいでそれ以上は沈黙する。
月が川に落ちかけて黄みが増した所で各自部屋に戻った。