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南町

川﨑ソープ街を取り仕切っているのは、南町の内和会だ。実際ミー子も現役時代潜入してた。

まあ、組員ではなく向かいの美容室にだが。

髪切る資格は無いので見習い助手で働く。美容師さんに怒られながら走り回る。

組員も幹部も皆ここで髪を切るので話は筒抜けなのだ。

長髪は絶対いないので、その利用頻度も分かるだろう。

アニメみたいな殺気出しっぱな男も女もこの部署にはいない。

どれだけ街に溶け込めるかが勝負なのだ。

三合会がソープを取り引きに使いたくても内和会の了承が要る。動きづらい上に上前を取りに来られる。

今は個人的に売人が指定してきたらソープ嬢に頼んでいるのだろう。

個室なら大きな取り引きが可能だ。

羽田に近く大きな組も無い。川﨑は海外マフィアにはうってつけなのだろう。

ミー子の潜入生活は2年目入ると洗髪やマッサージのせいか中堅ヤクザに愛人なれと目を付けられたので若い男の後輩と入れ替わった。

まあ1年以上は危ないので入れ替わる時期だった。


ボーッとアトリエに籠もって絵を描く。

不安だった気持ちは落ち着きを取り戻す。

怯えても怖がっても、ミー子の人生ももうそんなに長くは無いのだ。

いくらミー子が母性にのめり込んでも平間君はしっかり者だ。ピシャと線引きしてくれる。

何より本当の親子ではない。赤の他人なのだ。

そう思うと落ち着いてくる。

街中出ると楽しいのだが、だんだん息苦しくなる。

人もそうで密な関係の人が増えていくとだんだん眠れなくなる。

相手の期待値に応えようと足掻いて疲れてしまうのだ。

このマンションは世代が一緒の人が少なくて井戸端会議に参加しなくても気にされない。

数少ない同世代の西保さんは、絶妙な距離感で居てくれる。まず言葉数が異常に少ない。

でも、暖かい優しい人柄は伝わってきて一緒に黙って月を見ているだけで満たされる。

近くの学童なども人手が足りない夏休み手伝っているのか?近所の小さな子供が良く遊びに来る。

良い隣人に恵まれてホッコリとプチ老後を楽しんでいたのだが。


えらく物騒な事になってしまった。

川﨑のヤクザ事務所にバラバラ死体が送られて香港マフィアがご挨拶してきたのだ。

内和会には頭部が。

それでなくても10年前発砲事件があり、姐さんが組長の盾で重傷を負ってるのに。

わざわざ自ら盾になりに行ったそうな。

中堅ヤクザはそれが憧れらしく良く話してたが、ミー子は絶対イヤだ!と思った。

近くを走るパトカーの数が一気に増えた。

べランタで洗濯物を干してると西保さんも布団を叩いていた。

「なんか物騒な事になったね〜」西保さんが眉間にシワを寄せてミー子に話しかける。

「ホントにね〜」と相槌を打ちながら、

『多分、その解体されたの立川さんの旦那さんなんだろなあ〜そして、このマンションにそれをした人達が住んでるんだよなあ〜』と内心ガクブルした。

ミー子の穏やかだったファイアー人生が、だんだんとんでもない事になっていく。

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