推理
翌日玄関を出ると平間君が刑事たちの現場検証を見ていた。
「どうしたの?」
「なんで他殺みたいな話になってるのか疑問で…あそこに首吊ったような跡あるのに。」平間君が指さす方見ると柵にちぎれたヒモが残っている。
確かに首吊りしたような跡だ。
もし中国マフィアが絡んでるなら…
平間の手を引いて彼の家に入り鍵を掛ける。
「悪い組織って、どうやって統率力を保ってるか分かる?」平間君が首をひねる。
「金?」と聞く。
「そう、それと恐怖なんだよ。わざと見せしめで殺すとかあるんだよ。私達が知らない間に喉切られて意識あるまま吊るしたんだよ、きっと。
でも時間かけると人が出てきたら困るからヒモをわざと半分くらい切り込み入れて、
本人が苦しくて暴れて自分で切って落ちていったんじゃないかな?」組織に入ってた時の肌感を思い出す。
「わあ〜イヤだあ〜」平間君が震える。
「こうすると時間も稼げる。もし、住人だとしたら
吊るして家に帰れば、死亡時に側に居ないからアリバイ出来るんだよ。」
あくまでマフィアに潜入してた時の発想で話す。
「そうかあ〜じゃ、あの日出掛けてて事故の直前か少し前に帰宅した人が犯人なるのか?」平間君がニヤッとした。
「ダメだよ!犯人当てようとか!
今度は平間君が狙われちゃう!」両頬を押さえてキスする。
「黒社会とか掲示板書いてたけど、もっと離れてるかと思ったけど、私達のすごく近くに居る!
立川さんが死んだので分かった!」平間君を抱きしめた。
「ダメだよ!絶対探っちゃ!玄関出て現場なんか見ちゃダメ!お願い!」切実なお願いなのだ。
「元旦那から、これが来たの。」と水色とシルバーのカードを見せる。
「えっ、元旦那さんとするの?」平間君が聞く。
「バカ!」と股間を蹴る。
「彼はまだ現場いるんだよ。このマンションで暗躍してるマフィアを具体的に知ってるかもしれない。
で何が目的でこのマンションで何してるのか?
聞いてくる。」腰に回した手に力を入れる。
『あなたを守りたいから…』心の中で呟き、大森の珈琲亭ルアンに出掛けた。
ここだけ時が止まったかのような場所だ。
「お〜っ、久しぶり〜元気かあ〜」マヌケなミー子よりマヌケな男が手を振る。
「なんで、このカード出してきたの?」テーブルに投げる。
「助けてくれよ〜家庭の危機なんだ。」
聞けば、元旦那が仕事で半年家を空けてる間に間男を入れてる可能性があると。
溺愛する息子がお父さんが2人居るとか言いだしたそうで。
ミー子は、どう言ってあげれば良いのか…悩む。
だって多分その間男が息子の本当の父親なのだ。
「じゃあ、匿名で全部知ってるぞ!って奥さんに送っといてあげるよ。それで、ちょっとは自粛すると思う。」まあ、付け焼き刃な気もするが…
「ありがとう!助かる〜
でお前の欲しい情報だが、お前とこで暗躍してるのは
三合会だ。」元旦那が言う。
「なんで香港マフィアが?」ミー子が首をひねる。
「ジジババが多いんだろ?恐いもん知らずで金に困ってる奴らが多いとか?
こんだけ物価上がると年金だけじゃ首が回らないからな。
運び屋で小遣い稼ぎやらせてるんだよ。」元旦那が笑う。
「あ〜っ、あの人達じゃあ、罪の重さ知らなさそう〜やりそう〜」自転車の山はそれで出来たのか?
頭を抱える。
「聞いたぞ!80で息子に金せびられてるばーさんがいるとか?カートでブツ運んでたんだろ?お前のとこなら歩いて国際便乗れるじゃん。
香港ルートでジジババに運ばせて、競馬場やパチスロ屋やソープで受け渡しすれば、徒歩で全部済むんだろ?
それも善良そうなジジババどもだし、審査も甘い。
長引かせたら死にそうだしな。」元旦那がなぜか勝ち誇ったように具体的に教えてくれる。
「そこまで分かってるって事は、捜査かなり進んでるんだね?
なのに、なんで殺人が?」ミー子が1番心配なのはそこだ。
「三合会の川﨑の頭領は残忍で知られてるみたいだぞ。あそこは日本ヤクザももひしめいてるからな。
足引っ張る部下はサクサク消してるみたいだな。気をつけろよ。」
元旦那と別れた。