桜餅カード
ハンズで表が桜色で裏が抹茶色のカードを作ってきた。
平間君の提案は理に叶ってる。
確かにこの間のお茶会はミー子だけが楽しかった気がする。
世代感格差、年金格差を助長してる気もする。
このカード制は、ミー子が提案した。
元夫と同業だった為、2人は結婚しても一緒に暮らした事は無い。
いつも誰か違う人間になって個々に生活してた。
2人とも覚悟はしてたが、やはり寂しかった。
なのでたまに外で合流したり、任務上部屋に出入りして良い時は、こんな表と裏で色が違うカードのシルバーを夫が出せば応じた。
そして裏のミー子の水色カードになればデートしたり旅行したりした。そして満足したら夫にカードを渡して別れる。
2人でそんな生活を20年近くしていたのだ。
そりゃ、夫が普通の家庭が欲しいと泣くはず。
そしてミー子もそんな生活に疲れて脱サラしファイアー隠居したのだ。
だから平間君の交換条件も理解できる。
なんせあちらは人間男性のピークの7年の真っ只中だ。
こちらはとっくに上がってる。更年期障害は不眠症タイプだった。
若い子とお茶してるだけで十分満たされるお年頃なのだ、もう。
今回は、お抹茶色がミー子のカードだ。
平間君とお茶したりふざけたりしてるだけで幸せなのだ、ミー子は。
そう、たまに帰省する息子を待つ母みたいな心境なのだ。
今回は、スカイブリッジが出来てから良からぬ噂がネットには流れてるらしくそれを教えて貰うのだ。
カードを持ってお向かいの平間君家をピンポンした。
「ねっ、僕ん家からだと目の前なんですよ、スカイブリッジ」とベランダに出た平間君がキラキラお目々で指差す。
賢者タイムが天使系とか可愛いなあ〜と生気を吸い取られたミー子が腰をさすりながらベランダに出た。
友人がいつまでも引退できないのが憂鬱だと言ってたのが分かる気がする。
江戸時代みたいに膠ジェルとかあれば良いのに。
あれ?でも後輩が離婚した後、ぺぺ?パパ?かありますよ!とか言ってたような…
身体がゴツい子だったので、僕なら先輩担いで出来るとか何とか…
男の職場なので、この手の話は受け流して良く聞いてなかった。
今それ欲しいな…
第3ターミナルまで本当に近い。
なんなら近所の競馬場やパチンコ屋やソープ街と同じ距離だ。
「コッチ向きは風光明媚だよね〜多摩川と羽田空港しかないし。」ミー子が腰をさすりながらそよそよと吹く河風を楽しむ。
「カーテンしなくても視線感じないから開放感ありますね。夜は離陸する飛行機をボーッと見たり」さすが平間君は元気だ。
反対にいつもより元気だ。
血流が良くなったのだろう。
「あっ、そうだ!コレですよ。」何台もあるモニターの一つをクリックする。
そこには、スカイブリッジ周辺で中国マフィアの「黒社会」の動きが活発になってると掲示板に書き込まれていた。
「『黒社会』かあ〜ちょっと大き過ぎるな〜
中国に拠点があるのか?上海?台湾?香港?
それかもう『蛇頭』みたいに日本にガッチリ根ざしてる組織か?分からないよね?」ミー子が平間君に聞くが、素人には分かるはずが無い。