表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/13

有頂天ホテル

この世界の料理は何気に美味い。はじめは不安だったのだが、食べてみたら割と馴染みのある味だった。こちらの世界の調味料も似たような味なのだろう。


主食となるのは麦だ。この世界に米があるかどうかは分からないが、あるならふっくら炊いた米が食べたい。米が恋しい。


「やっぱりクロはすごいよ。」

「ん?どうしたよ?」


とぼけたフリをしていますがわかってますよ。そこからおほめの言葉が続くのでしょう。大好物です。


「あんなにいろんな人から声かけられて、頭の良いやつは違うなぁ。デキる人って感じでカッコいいよ。」


はいっ!いただきました。デキる人!ああっ!いいわ~。褒められるのいいわ~。尊敬と褒めのハッピーセットだわ〜。82ポインツ!


「よせやい。そんなに褒めてくれるなよ。」

褒めて下さい!もっと下さい!

「クロはオレの自慢だよ。オレはあのクロと友達なんだぞ、と。」


ヤバい。脳から人を駄目にする物質が出てきてる。これは駄目だ。やみつきになってしまう。危険だ。90ポインツ!


「たまたまだよ、たまたま。人には向き不向きがあるから。オレはリヤマの様に強くはなれない。けど、商人のまねごとが向いていたってだけさ。」


異世界に転生してようやくオレTUEEEEEE!出来た気がする。愛読書だともっと序盤に出来ていたのに。まぁ、ちょっと違う気もするけどこうして念願のオレTUEEEEEE!できたから良しとしましょ!86ポインツ!


「クロはやっぱり商人ギルドでの話に乗ってクシマ家の奴隷辞めちゃうのか?ご主人次第だけどクロが辞めちゃうと寂しくなるなぁ。」


「それに関してはビッグイシューだと思うよ。プライオリティをアジェンダするのがコンセンサスでフィックスなんだよ。」

「?????」


リヤマがキョトンとした顔をしている。その顔が見たかった。ハァぁぁ~


「ああ、スマン。つい業界用語が出ちまった。分からないよな。」


リヤマすまん。この意識高い系ビジネス用語マウントやってみたかったんだ。本当にすまなかったと思っている。でも、いいわ~コレ。自分が賢くなったような気にさせてもらえる。75ポインツ!


自尊心ポインツがかなり溜まったなぁー。いやー、ビールが美味い。


「商人ギルドの話かー。ありがたい話だとは思うがね。でも、オレはクシマ家での生活好きだよ。ずっと働かせてもらえたらいいなぁ、とは思ってる。」


働きたくねぇー。お貴族様(neetの最上級職)になりてぇー。


「でもなー。オレ結婚したい。ミハルさんと結婚したいんだよなー。」


奴隷も結婚はできる。しかし、それは奴隷同士に限られる。


「アハハ!私と結婚したいの?」

「ぬわっ!」


突然、横からヒョイッと顔を出されて変な声を出してしまった。しかも、話聞かれてたのか。気恥ずかしい。


「クロさんいい人だけど、結婚は無いかな。勤め先は良いけど奴隷だし、そこまでお金ないでしょ。私は裕福でお金持ちな人と結婚したいから。ゴメンね。」


一般人(お貴族様を含む)と奴隷の結婚は基本的には許されていない。奴隷は「物」扱いなのが理由だ。

なので奴隷と一般人が結婚しようとするなら、奴隷を買い取り、解放手続きを取る必要がある。晴れて奴隷から解放され一般人となった後に改めて結婚する。という流れになる。


この高いハードルを越えてまで結婚しようとするのはあまりなく、女性の奴隷と一般男性(お貴族様を含む)なら稀によくある事だが、男性の奴隷と一般女性という例は皆無である。


おだてられていい気になって、まるで世界の中心に自分がいる様な気分になっても、


ところがどっこい……夢じゃありません………!

現実です……!これが現実……!

「奴隷」という現実……!


ハハハ……と乾いた笑いをするしか無い自分が少し情けない。


「いや~おいしかったね。それじゃ帰ろっか。」


リヤマがタイミング良く食事を終えてそう言ってくれたので乗っかるとしよう。


「そうだね。ごちそうさまー!美味しかったです。」


「ありがとうございました〜。また来てね〜。」


ミハルさんに笑顔で見送られて店を後にしたが、少し足が重い。


店での話はリヤマもミハルさんも当たり前の常識すぎて気にも止めていないだろうが、調子に乗っていたオレにとっては冷水をぶっかけられたようで少し心にくるものがあった。


その後はリヤマと他愛のない話をしながら帰路についたのだが、話の内容は頭に入ってこなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ