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カガワクロスケ・アワー

「ところで、お昼はどこで食べるんだ?オレは街の店とかよく分からないよ?」


ふっふっふ!そんなの愚問です。愚問すぎて大草原です。

「そんなのタベル亭にきまってるだろ。」

「ですよね~。」


少し呆れ顔で分かってましたよ、といったような返事を返すリヤマ。

だったら聞くなよ、と思いつつも自分の事をよくわかってくれている人との予定調和の会話ってのは思っていたよりも良き物だなとも思う。


この街には飲食店が多くある。この世界の街の多くがそうなのかは分からないが、少なくともこの街では現世に負けないくらい飲食店数がある。

どうやら街に住む人は主に集合住宅的な所に住んでいるらしく、自宅に炊事場というものが無いらしい。寝室と簡易的なトイレくらいしか無いそうだ。


それ故、食事は基本的に外でするものなので飲食店も多くあるということだそうだ。

飲食店の営業形態も様々で、朝と昼、昼と夜。夜のみなどなど。


朝の営業は時間効率、回転率重視の営業がほぼだ。メニューなどは無く、店に入ってすぐ食べ物が出てきて、同時にお金払って食べたらすぐ退店する。席がない立食形式の店も多い。

メニューも麦粥に煮込んだ肉を乗せたものとか、パンに焼いた肉とかチーズを挟んだものとか簡易的でザザッと食べやすい物が出される。


昼の営業は、朝の同様の営業形態と、座席があり少しゆったりと食事ができる店がある。座席がある店はメニューがある店もあれば無い店(日替わりランチ的なメニュー1つ)もあり様々だ。


夜営業は営業形態が多く、本当に色々な店がある。


普通の食事処もあるし、居酒屋風の店もある。こういう店は大抵、昼営業もしている。


宿屋を兼任している店もある。5〜6階建ての集合住宅風建物で1階部分が飲食店になっており、食事と宿泊が出来る。夜のみの営業。


そして、夜営業といえば「酒場」だ。

酒場はお酒の提供だけでなく、劇場、賭博場、売春宿などを併設していて大きな店から小さな店まで規模も様々。


「酒場」の営業には必ず「認可」が必要になる。都市の行政部による定期的な監査と警備兵の常駐を条件に酒場営業認可を出している。


まぁ、こっちの世界でも「酒」や「娯楽」というのはトラブルの元ということだ。しかし、必要不可欠なものなので目の届く範囲でやってくれ、ということなのだろう。

酒場の主役「酒」にも違いがあるらしい。こちらの世界の酒は「果実酒」「蜂蜜酒」「小麦酒」の3種類。


「果実酒」は果物から作られる酒で、「ワイン」と呼ばれている。その土地の名産がお酒になる。

現世の様に流通が整っているわけではないので、他の土地の物が簡単には手に入らない。なので、旅行や旅のお土産の定番だ。お土産は家族や仲間の皆で飲んで、最後に地元の酒を飲んで

「でも、やっぱりウチの酒が1番だなぁ」

と言うのが決まりで、様式美と化しているそうだ。


値段はそこそこの物からお高い物まで様々。一般庶民が日常的に楽しめる値段ではない。


「蜂蜜酒」は蜂蜜から作られる酒で、「ミード」と呼ばれている。蜂蜜は割と長期間保存出来るので、時期によっての流通量にあまり変化がなく、年間通して割と安価で飲める。庶民からしたら酒といえばミードだ。


「小麦酒」は小麦から作られる酒で、「ビール」と呼ばれている。「小麦酒」という名前ではあるが、一般的に「酒」とは認識されていない。

そんなに酒には詳しくないし、現世でもそんなに飲んだことがないので体感にすぎないが、アルコール度数1〜2%くらいしか無く、水代わりに飲む。現世で言うなら「ジュース」とか「エナジードリンク」くらいの扱いだ。


「ワイン」と「ミード」は醸造ギルドに加盟している「酒蔵」で作られるが、「ビール」はそれを提供している飲食店で各々作っている。

「酒」はギルド加盟店舗でしか製造は許可されていないが、「ビール」は「酒」に分類されていないので各自で作って良い。飲食店だけでなく、家庭でも作られているそうだ。


料理に関しては、加盟店であればギルドを通しての情報や技術の共有を義務付けられているが、ビール造りは共有義務がないので、各店で味が少し違う。そこで差別化をはかってたりする。


数々の飲食店が軒を連ねるこの街で繁盛店となるには「美味い料理」「美味いビール」そして、「麗しき給仕」!そのすべてが揃っているのがココ「タベル亭」なのです!


「着いた~。お腹減ったねー。お昼は何が食べれるのか楽しみだね。」


今日はほとんど仕事が終わりで、あとは帰るだけだ、なんてリヤマは気を抜いているようだがそれは違う。ここからが本当の始まりなのですよ。人生と言う名のお仕事のね。


「いらっしゃーい。あっ、クロさん久しぶりー。来てくれて嬉しいー。」


ギャルギャルしい見た目に底抜けに明るく溢れ出る陽キャオーラを纏い、現世なら髪を盛りに盛って夜の蝶をやっていそうな給仕の女の子。この子こそタベル亭の全てだ。


「ミハルさん!久しぶり!って先月来たばっかりだよ。」


「キャハハ!そうだっけ?まぁ、いっか!今日は焼いた豚肉と豆のスープだよ。2人で満月銅貨1枚ね。」


この世界での貨幣には「満月貨幣」と「半月貨幣」があり、さらに「銅貨」「銀貨」「金貨」がある。満月貨幣は丸い貨幣でそれを半分にした様な物が半月貨幣である。価値は


半月<満月

銅貨<銀貨<金貨


となっている。半月銅貨が1番低価値で満月金貨が1番高価値となる。貨幣価値の差はだいたい10枚ほどである。

この世界では貨幣価値すら大雑把なところがある。大丈夫なのか?とも思うが、まぁこの世界ではそんなものなのかな。数字に関しては大雑把な世界だから。


「2人はパンと麦粥どっちにする?」


「麦粥!」

「クロはいつも麦粥だよな。オレはパンでお願いします。」


「はーい。」


会計は座席で注文時に行われる。支払いを済ませると給仕さんから支払い済みの証明として料理待ちを示す木札をもらえる。この木札を運んでもらった料理と交換するシステムになってるわけだ。


注文内容を蝋板にカリカリとメモして笑顔で厨房の方へ歩いていく彼女の後ろ姿を見送っているとこちらも自然と笑顔になってしまう。うん。素晴らしいかなこの世界。


しかし、現世で生きていた頃には考えられないくらいの陽キャムーブが出来るようになってしまった。やれば出来るもんなんだなと感心する一方で、もしかしたら心の奥底ではこれは本当の自分ではなく、どこか他人事で夢とでも思っているからできているのかもしれない。


「おお!これはこれはクシマ家のクロさんではないですか。お久しぶりです。マカワ商会のマカワです。」


「ああ、どうもどうも。マカワ商会さんもお昼ですか?」


「はい。こちらの、ああそうだ。紹介しますよ、こちらミザ商会のミザさん。ミザさんとお昼御飯を頂いております。」


「はじめまして。ミザ商会のミザと申します。お噂はかねがね伺っております。我が商会では様々な商品を取り扱っておりますので、ぜひお立ち寄り下さい。」


「それはありがたいお話です。ぜひ寄らせて下さい。」


「アシタキテクレルカナ?」

「いいとも~!」

「それじゃ、お待ちしてまーす。」

「それではまた。」


こんな様に飲食店は社交の場にもなっている。情報共有、人脈形成、単にお腹を満たす場というわけでなく、それ以上の役を担っている。

この街、その業種の有力者が通っているというだけで、その人とお近づきになりたい人が通い出すということも有り、各飲食店は有力者の勧誘合戦、奪い合いをしていたりもする。


実は、このクロ様もクシマ家としてそこそこ名が知れていて、勧誘を受けていたりする。


そこで見事にこの「タベル亭」の看板娘に一本釣りされたわけなんだけどね。


「やぁやぁ、これはこれは。クシマ家のクロさんではないですか。お久しぶりです。ネヒキ商会のネヒキです。」


「ああっ、お久しぶりです。」


うーん、人気者ですな。クシマ家と言うだけでこんなに声をかけられてしまう。少し煩わしいなとは思うが、こういうのをしっかりと対応するのも仕事の内。愛想よく笑顔で。


「またウチの商会との取り引きお願いしますね。色々サービスしますんでね。個人的なやつも。なんて!」


「ハハハッ。まぁ、また今度寄らせていただきます。」


「それじゃあ、アシタキテクレルカナ?」

「いいとも~!」

「お待ちしてまーす。」


商談は終わったってのに気が休まらないよ。本当に大変だ。


「おまたせしましたー!」


君の笑顔と美味しい料理。ここでの癒しはそれだけだ。

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