隣の芝生(8)
児童館に向かいカナタくんとまた病院へ戻り、少しの時間だけ姉とまた過ごす。
「カナタの事、お願いね。」
姉は笑う。
私達がいるところでは絶対に笑っている。
「シオリちゃん、イチハじゃ頼りないよ。」
カナタくんは姉にそう言って、私の手を握り病室を出る。
「カナタくん、ご飯どうする?簡単なものなら作るよ。」
私がそう言うと、
「イチハのご飯は心配だから、買って帰ろう。」
と、カナタくんは私を見ながらニコニコしていた。
「ジュンタさんはどうするかな…?」
私が聞くと、
「父さんは勝手に大人だし、食べるんじゃない?」
と言って、私をコンビニに連れていく。
2人でコンビニで飲み物とお弁当を買って帰る。
すっかり街がイルミネーションに包まれている。
1ヶ月もすればクリスマスだった。
ほんの数ヶ月前に姉の病気が分かり、本当にバタバタとした時間だったと思った。
「イチハ、早く寒いから帰るよ。」
カナタくんは私の手を引っ張って、急いで帰宅した。
姉の家に着き、暗い部屋に明かりをつける。
洗濯物が取り込まれているが畳まれておらず、山になっている。
私はご飯をカナタくんと食べて、洗濯物を畳んだ。
タオルなどは洗面所に片付けて、カナタくんのものは渡して片付けてもらった。
お風呂を軽く洗ってお湯を溜めて、カナタくんにお風呂に入ってもらう。
その間にご飯を炊いて、冷蔵庫を覗いた。
あまりものが入ってなかったけれど、鮭フレイクがあったので、おにぎりを作った。
姉みたいにキレイな三角に握れていないけれど、海苔を巻いてお皿に3つ作り置いてラップをした。
残りのご飯は姉の見よう見まねでお茶碗を使って、1食分ずつラップして冷凍庫に入れた。
お風呂から上がってきたカナタくんは、明日の学校の準備をしている。
「イチハ、まだ父さん帰らないね。」
時計を見ると9時を過ぎている。
「カナタくん、歯磨きして寝る準備しよ。」
私はカナタくんを洗面所に促した。
その間に1度ジュンタさんに連絡を入れたが、繋がらなかった。
カナタくんに寝るように伝え、私はジュンタさんが帰って来るまでプランナーの勉強をしていた。
結局、10時過ぎにジュンタさんは帰宅した。
「イチハちゃん、ごめんね。仕事でスタッフの人が派遣先で少し揉めちゃって、派遣先に謝りに行ったり、スタッフさんの愚痴を聞いていたら遅くなっちゃって…。カナタはもう寝たよね。」
ジュンタさんはかなりくたくたになりながら、リビングに入るなり私に謝ってきた。
「カナタくん、少し前に寝ましたよ。あと、お姉ちゃんも今日は調子良さそうでした。」
私はジュンタさんが帰って来たので、自分の家に帰る準備を始めた。
「シオリさん、少し落ち着いているんだね…。」
ジュンタさんは荷物を置き、手を洗いに洗面所に向かう。
「そろそろ帰りますね。」
私がそう言うと、
「遅いから送るよ。ちょっと待って。」
と、急いでリビングにジュンタさんが戻ってきた。
「イチハちゃん、おにぎり作ってくれたの?お腹空いてたからありがたい。」
嬉しそうな笑顔を見ていたら、私も役にたてた事が嬉しくなった。
「お姉ちゃんみたいにキレイに作れなかったけど、食べてくださいね。」
私が笑ってそう言うと、
「先に1個頂くね。」
と、おにぎりを急いで頬張った。
ジュンタさんは“うまっ。”と、笑ってくれた。
その笑顔が嬉しかった。




