隣の芝生(7)
フォト婚の撮影から少ししてから姉の治療が始まった。
リンパ節の切除と薬物治療を選択し、仕事はギリギリまで出社した。
切除手術のための入院の準備を私も手伝った。
あまりする事はなかったが、新しいパジャマを買いたいと姉が言って、一緒に買いに言った。
「これ、可愛くない?お揃いで買う?」
姉は楽しそうに選んだ。
数着パジャマを買い、“お揃い。“と言い、1着私にも姉が買ってくれた。
「お姉ちゃん、体大丈夫?」
私が心配して尋ねると、
「今日はわりと大丈夫だよ。時々痛みもあるけど、今日は調子良いみたい。イチハと一緒で楽しいからかな?」
姉はいつものように笑った。
私は姉に何が出来るんだろう。
今の私には一緒にいることしか出来ない。
「ジュンタとカナタが心配かな。きっとかなり精神的にしんどくなるしね。私は頑張るしかないから…。見てる方はツラいよね。それはイチハもだね。」
姉は申し訳なさそうな顔をする。
「お姉ちゃん、私は近くでいることしか出来ない。だから、ちゃんと何かあったら言って。私もお姉ちゃんにたくさん守ってもらったから出来るだけなんでもしたい。」
私は精一杯訴えた。
姉は少し考えて、
「入院中時々甘えようかな?」
と私の背中をポンと軽く叩いて、また笑う。
出来るだけしんみりしないように姉は笑顔でいた。
姉を出来るだけサポートするのもだが、姉を安心させたい。
進路を早く決めて報告したいと思った。
私は姉の撮影からブライダル関係の仕事をしたいと本気で思って、プランナーの検定に向けて勉強を始めた。
今はバンケットサービスという当日の配膳がメインの仕事をしている。
時々、他のサポートに入ることもあるが言われたまま動いているだけで、今まではバイトと言う感覚と雰囲気が楽しかっただけだった。
けれど、姉とジュンタさん、カナタくんの顔を見て、やっぱり喜んでもらえる仕事がしたいと単純に思った。
きっと、まだまだ甘いのかもしれないけれど、私のしたいことはこれなのだと思った。
「お姉ちゃん、私ね、ウェディングプランナーになる勉強始めたよ。就活もそれで頑張るね。」
病室で姉に話しかける。
割りと術後落ち着いているようで、暇そうに本を読んでいた。
もう少しするとカナタくんとジュンタさんが面会に来るからそれまでと思った。
「イチハ、ちゃんと決められたね。応援してるね。ねぇちゃんも早く仕事に戻りたいかな。スタッフの方や会社の人にも迷惑かけているし。」
姉は本当に仕事が好きなんだと思う。
ジュンタさんから私に電話がかかった。
私は一旦外に出て折り返した。
「イチハちゃん、仕事で少し遅れそうで…。カナタを児童館まで迎えに行ってももらっても大丈夫かな…?」
申し訳なさそうにジュンタさんは私に尋ねた。
「大丈夫ですよ。今、お姉ちゃんのところに来ているので、すぐに迎えに行きます。カナタくんはそのまま病院に連れていけば良いですか?」
私が答えると、
「お願いできるかな。ただ、時間が読めなくて遅くなりそうだったらまた連絡するね。」
少しバタバタしているようだった。
「遅くなりそうなら、カナタくんとご飯食べますよ。大丈夫です。」
私はそう言って電話を切り、姉に経緯を伝えて児童館に向かった。