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うたかた  作者: たき
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揺らぎ(17)

私は自分の気持ちを落ち着かせようとした。


何に動揺をしているんだろう。

私はマサキさんが好きなはずだ。

それは間違いない。

彼と離れる事が良いとは思わない。

望んでいない。

それでもぶり返したような身体の奥から切ない気持ちが溢れて揺れている。

あのジュンタさんの穏やかな目に期待などないのに。

正解だと思って前に進んでいたはずなのに。

何で今さらなんだろう。


洗面所で手を洗っている私の顔はかなり酷いものだった。


「イチハ、大丈夫?」

突然、後ろから声をかけられてびっくりする。

鏡の中にカナタがいた。


「ちょっと、疲れてるのかな?ありがとう、カナタ。」

私は何とか気持ちを整えて、リビングに戻ろうとしていた。

カナタの横を通りすぎようとしたら小さく“無理すんな。”と聞こえた。

私はそれに答えるように笑ってみせた。


私はネックレスを1度ぎゅっと握り、リビングに戻った。


「イチハ、マサキさんは本当にいい人だね。お母さん、安心した。話し聞いた時もいい人なんだろうなって思ったけど、実際に会ったら誠実だし、イチハの事を大事にしてくれているみたいだし…。」

母が嬉しそうに話をしてくれている。


「それにイケメンだしなぁ…イチハ、父さんもマサキくんなら安心だ。」

父も喜んでくれている。


「イチハ、コーヒー冷めるよ。座って頂こう。」

マサキさんもいつになく穏やかで優しい雰囲気を纏っている。

きっとこれが正解だと思う。

姉が亡くなって父や母がどことなくいつも悲しそうな顔をするときがあった。

姉がいた頃よりも明らかに楽しいときであっても、どこか淋しそうな空気があった。

両親が久しぶりに心から喜んでくれているのだと思った。

彼を好きな気持ちは確かな事なのだから。


「お父さん、お母さん、マサキさんは本当に私を大事にしてくれてるよ。」

私は席に戻り、コーヒーをひとくち飲んだ。

そして、マサキさんの顔を見る。

優しい笑顔を私にくれる。

穏やかな声で私の名前を呼んで、いつもの安心する体温がする手で私に触れた。

本当に彼の愛情が心地よいのに、足元がぐらつく気がする。


「イチハ、疲れてる?」

母が私に話しかける。

私があまりしゃべらないから心配させてしまった。


「ちょっとね。大丈夫だよ。」

私がそう言うと、


「イチハ、少し横にさせてもらう?大丈夫?」

と言うマサキさんの声と、


「そうしなさい。休みなんだからゆっくりしたら良いから。」

と言う母の声と、


「お布団準備しますね。」

と言うジュンタさんの声と、


「無理すんなよ。」

と言うカナタの声と心配する父の顔が見えた。


私はこんなに大事にしてもらえる資格があるんだろうか?

こんなにずるくて、ひどく愚かな私は愛情をもらっても良いのだろうか?


それでも私は欲張りだから手放せない気持ちがあって、今のままが正解なんだと目を閉じた。



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