揺らぎ(8)
病院に戻って、カナタにおにぎりと飲み物を渡すがなかなか食べないので、せめて飲み物を飲むようにペットボトルの蓋を開けて渡す。
カナタは待合室の椅子に浅く腰掛け、うつ向きながらペットボトルに口をつける。
少しの沈黙を破るようにフラフラしながらジュンタさんが戻ってきた。
インフルエンザだったようで診断書を書いてもらうとの事だった。
薬を貰い、支払いを済ませ病院の外でタクシーに乗り、一旦ジュンタさんとカナタを部屋に連れて帰り、またそのタクシーで自分の家に帰って着替えなどを持ってからマサキさんとまた2人の待つ家に戻った。
「カナタ、手洗いうがいして。」
私たちもしっかり消毒やうがいを済ませ、カナタをお風呂に入るように促す。
ジュンタさんを寝室に寝させ、ベッドの横にペットボトルの水とゼリー飲料を置いた。
時間を見ると既に深夜1時を回っていて、マサキさんにありがとうを伝えた。
「イチハ、ありがとう。」
カナタがお風呂から上がってリビングを覗いた。
「カナタ、もう寝ちゃわないと明日も学校でしょ?あと、お風呂とお布団借りるね。良いかな?」
私はカナタに寝るように言う。
「イチハ、おやすみ。お風呂と布団使って。」
そう言って、自分の部屋にカナタは向かった。
「マサキさん、お風呂先に入ってください。私、ご飯セットしたり、お布団出しときますね。」
私がそう言うと、
「イチハ、先にお風呂先に入るね。」
と優しく彼は答えた。
私は彼を脱衣所まで案内してタオルを準備した。
それからキッチンに戻り、お米を洗い炊飯器にセットした。
冷蔵庫をチェックして味噌汁等出来そうなメニューを考えて、取り込んだままになっている洗濯物を畳んだ。
きっとカナタはかなり不安だったと思う。
出来るだけサポートが出来るようにしないとと思った。
マサキさんには本当に助けてもらった。
あまり事情もわからないままついて来てくれて、色々動いてくれて本当にありがたかった。
「イチハ、先に入ったよ。お風呂どうぞ。」
マサキさんが私に声をかける。
「本当にありがとう。お布団準備してるから先に寝てて良いからね。」
私は彼にお礼を伝えた。
急いでお風呂に入り、疲れてその日はお布団に入るとすぐに眠りに落ちた。
マサキさんは私を抱えるように眠った。
浅い眠りで6時前に目が覚めてしまった。
まどろみながら彼の心臓の音を聞く。
この不思議な状況を私は複雑に思いながら、彼の背中に腕を回して彼の胸に顔を1度埋め、深呼吸をして起き上がろうとした。
「イチハ、おはよう。」
眠そうな声で彼は私の額にキスをした。
「まだ早いから寝てて。カナタ学校があるからご飯の準備してくるね。」
私は朝の弱い彼にそう言って、布団から抜け出した。
冷蔵庫から大根と玉ねぎ、油揚げを出してお味噌汁を作り、卵を割って時間を見るとそろそろカナタを起こさなくてはと、カナタの部屋の前で声をかけた。
眠そうな声で“起きる。”と聞こえた。
バタバタと顔を洗ったり、準備をする音がして、ランドセルを持ってカナタがリビングに入ってきた。
「イチハ、今日帰って来てもいる?休み?」
カナタがテーブルについてご飯を食べる前に聞いた。
「休みだよ。今日、ジュンタさんについているから安心して。カナタ、あまり寝てないけど大丈夫?」
私の答えに安心して、卵焼きをカナタは頬張った。
出来るだけ今日はカナタが帰って来て、安心できるように準備して待っていようと思った。




