揺らぎ(5)
今回の年末も両親がやって来るとの事だった。
「仲良いよね。イチハの家。」
モモカは変わらず酔うと距離が近くなる。
久しぶりに2人だけで飲もうと忘年会と称して、少し早いピッチでモモカは飲んでいる。
お互い明日は休みで少しだけ私もふわふわと気分良く飲んでいた。
マサキさんはケントさんと数人で同期会と言って飲んでいるらしいが、帰る頃に連絡してと言っていた。
「両親とは仲良い方かもね。わりと節目でこっちに来てるしね。」
私がそう言うと、
「お姉さんの事でか…。キレイな人だったよね、シオリさん。私は何回か会っただけだけど。」
モモカは少し気を回しすぎた事を言った。
でも、確かに姉の事で家族が集まることがここ数年多かった。
姉の病気がわかったのが4年以上前だった。
そこから私の家族はかなりバタバタとしていた。
家族が必死に姉を思い、今も大事にしている。
両親や姉の家族であるジュンタさんやカナタが、少しずつ欠けた気持ちを埋めるように思い合った。
「お姉ちゃんは本当にキレイでかっこ良かったよ。今でもそう思う。」
私は変わらずシスコンだと思う。
「ねぇ、イチハは先輩の事ちゃんと好き?」
モモカは何かを思ったのか尋ねた。
「ちゃんと好きだよ。モモカには心配たくさんしてもらったから…ありがとう。」
私はモモカに安心して欲しくて、きちんと自分の気持ちを伝える。
「モモカには大事な先輩だからね。心配だよね。始まりもモモカは知ってるし。」
続けてそう言うと、
「…違うよ。先輩も大事だけど、イチハの方が大事だからね。今も苦しんでるとかないよね。ちゃんと幸せなんだよね。」
モモカは必死に私に伝えている。
「ちゃんと幸せだよ。ちゃんと好きだし、大事。」
と、私は彼女に伝えながら近くなりすぎた距離を少し取ろうとしたら、モモカが私にがっちり抱きついた。
「イチハは何にも考えてないようで、大事なことは抱えるクセがあるから、ダメになる前にちゃんと相談して。今が幸せなら安心。本当に良かった。」
大事にしてくれる人がまわりにいる、私は本当に恵まれていると思った。
そんな優しい人を心配させないように、私は小さな不安と時々の罪悪感をしっかり心の奥に閉じ込める。
“ちゃんと好き?”
モモカは気がついているのだろうか。
それでも彼を好きなことは確かなこと。
それでも私は罪悪感を持て余している。
マサキさんには始まりの不純さを。
モモカにはそれで苦しんでいることを。
ジュンタさんにはマサキさんの事を言えなかった事を。
そして、好きだった気持ちを。
姉にはジュンタさんの気持ちが今でも姉に向いていることに羨ましさがあった事を。




