揺らぎ(4)
私はそれからも出来るだけ今まで通り、ジュンタさんやカナタと過ごした。
必要以上に気にする事はない。
姉の夫、姉の子供、そして私は姉の妹。
ただ、その関係が変わることはない。
カナタが少しだけ私に口数が少なくなった以外は、さほど変化はなかった。
感情が置き去りになっている。
けれど、私には私を支えてくれる人がいる。
ただ、大事にされればされるほど私の気持ちが追いつかず、一生懸命それを埋めるように無理をするようになった。
嫌いなわけではない。
むしろ彼が好きだし大事だが、押し込めた奥底に眠っている罪悪感が優しさを感じるたびに、勝手に私を追い詰めていく。
始まりが純粋でなく、自分勝手だった。
彼がだんだん大事になって、その気持ちが後悔を強くした。
まだ、振りきれない気持ちも微かに残っている。
何にも考えずに甘えれば良いだけの事だと思う。
そんな都合の良いことが許されるのだろうか。
「少しまとまった休みが取れたら、旅行にでも行かない?イチハが忙しくなる前に。どうかな?」
繁忙期が終わった頃にと、マサキさんから提案された。
「行きたい。長くは無理だけど連休取れると思う。」
私は笑って答えれただろうか。
「…体調が悪い?それとも旅行イヤだった?」
彼が私の顔を覗き込んで心配な顔をしている。
「疲れてるのかも。バタバタしてたしね。旅行は本当に行きたい。温泉とかどうかな?」
私は彼にどう笑っていたんだろう。
彼を好きな気持ちはちゃんとあって、彼を求めているのに、生まれた罪悪感が拭えない。
実際なにかをしたわけでもない。
それでも私は器用に振る舞えない。
苦しくなって私の彼を大事だという気持ちと言葉がうまく出ない不安から、私は彼に懸命にキスをした。
「疲れてるなら無理しないで。」
彼は1度身体を離してそう言ったが、
「好きだから…伝わる?」
私が彼の口を塞ぐように唇を重ねる。
彼は戸惑いながら優しく私をなだめるように私の髪や背中を撫でながら、私を受け入れるようにキスを続けた。
私の不安を彼はたぶん気がついている。
けれど、それごと受け入れているように私を最初から肯定し続けてる。
少しでも彼を好きなことを私から伝えなくては、大事なことを感じてもらわなくてはと、深く呼吸が苦しいくらいのキスに気持ちをのせる。
彼が耳たぶに甘噛みをしながら、
「僕がイチハを愛してることだけは覚えてて。大好きだから。」
と囁く。
彼の穏やかな落ち着いた声で何度も何度も“愛している。”と“大好き。”だと愛情を注がれ、“かわいい。”と“キレイ。”だと甘やかされていく。
彼は私の背中を抱えながらうなじや肩に優しく口づける。
彼の私の胸を包む指先と背中にある唇の熱が、私の罪悪感情を鈍らせていく。




