揺らぎ(1)
私の部屋には少しだけマサキさんのものが点在した。
彼との関係は穏やかに紡がれていく。
モモカも良かったと連絡したり、モモカと彼のケントさんと4人でたまにご飯たべに行った。
「先輩はすごくモテる人だから、会社や取引先の人にも私がものすごく要らない世話をしたことになってるんだから。」
とモモカにその度に愚痴を溢された。
「モテないよ。イチハの気持ちが最初分からなくて情けなかったし。本当にヘタレだった。」
マサキさんは自然にダメだったことを話す。
「真面目だから、1人しかマサキは見れないしね。まわりなんか見る余裕ないんじゃない?まぁ、ある意味その真面目な感じもモテるギャップなんだろうね。本人無自覚だからね。」
ケントさんはサクサクそう言って、いつも独特のペースで食事を楽しむ。
「まぁ、イチハも無自覚だからね。大学でもひっそりモテてたから。学食の少し揉めた事件で、わりと相殺されたんじゃないかな?」
モモカはあの事を言っているのかと思った。
「イチハが付き合っていた人と別れて、すぐに相手に彼女が出来てその子が絡んできたんだよ。イチハはその時には彼の事はもうなんとも思ってなくて、“気にせずどうぞ。くっついたり離れたり正直めんどくさい。”ってその子に言っちゃって、その子泣いちゃったんだよ。かなり面倒な子だと私も思ったけど、その一言でイチハは恋愛しない興味がないと思われちゃったからね。」
モモカは思い出して笑っていた。
「目立つ子じゃないと言うか、イチハはつかみどころがないと言うか、わりと私は何にも考えてないと思うんだけど、今よりもっとふわふわしてた時期で、ひそかに私に彼と別れてから何人か紹介してって言われてたからね。私はイチハの窓口じゃねぇと突っ込みいれたかったわ。まぁ、当の本人はこんな感じだからついつい私がちょっかい出してしまうんだけどね。」
上げられているのか下げられているのか微妙な話をモモカはしている。
「窓口すみません。でも、安藤のおかげでイチハが側にいてくれるから、本当にありがたいことだよ。」
マサキさんはモモカに向かって手を合わせる。
本当に楽しく穏やかだと思った。
少しずつ彼を見ることが出来、愛情が生まれてくるのを感じた。
こうやって食事のあとは一緒に私の家に帰った。
ただ一緒に寝るときもあれば、当たり前に抱き合った。
私の気持ちがここにあることを確かめるように、私は彼に身体を委ねていく。
甘やかされるように優しい彼も、余裕がないくらい力強い彼も私の居場所はここだとキチンと愛情を示してくれた。
耳元で苦しそうに乱れた呼吸で繰り返される“愛してる“をしっかり受け止め、彼にしがみつきながら“私も”と言葉を伝える。




