融解の方法(12)
それから私と隅田さんは数回、仕事終わりに食事に行った。
話をしていても楽しく優しいと思った。
会うたびにかわいいと何度も伝えられ、自尊心の欠けたところを埋められていく。
ジュンタさんに会うと私が姉と比べてしまって、勝手に落ち込んでいた。
比べる必要などないのに、今も姉が私は好きだけれど、何度も何度も比べては勝てるところがなくて、情けなくなる。
姉に対しての憧れや尊敬がどんどん自分を惨めにした。
彼を好きになって意識すればするほど、自分が嫌いになっていく。
それでも彼の声で、笑顔で、ふとした仕草で、また彼を求めてしまう。
頭では可能もないことを理解していても、どうしようもなく彼を求めてしまう。
その気持ちを押し込んで冷静にすることも難しくなっていた。
そんな時に隅田さんが付き合って欲しいと、好きだからと、きちんと伝えてくれた。
もう、春になる頃だった。
まばらに桜がほころび始め、淋しそうな木々が息を吹き返す強さを感じる頃。
少しだけ考えて、付き合う事を決めた。
まだ気持ちが追い付いていないけれど、それでも一緒にいることが楽しいと気持ちを伝えた。
「同じような気持ちになっていけるように頑張らないと。」
と隅田さんは嬉しそうに私に言った。
いつもとは違う少し幼いかわいらしい表情に私は微笑ましくて、少し肩の力が抜けていった。
この人を大事にしようと強く願った。
私を大事にしてくれる彼を好きになれると思った。
私は少しだけ自分に都合の良い嘘を自分に言い聞かせながら、優しい彼に寄りかかる事を決めた。
一緒にいると誰かと比べることもなく、自然に笑うことも出来た。
好きで切なくなって泣くほど求める強い気持ちはなかったけれど、それでも穏やかで安心出来た。
時々、ジュンタさんから元気にしているのかと連絡が来て、その度気持ちが引き戻されながらチリチリと胸の奥が痛みを感じた。
毎回休みの度に姉の家で過ごしていた時間を減らした。
たまにジュンタさんが帰って来るまでにご飯を作って、カナタに食べてもらって、すぐに帰ったりした。
時々ジュンタさんが早く帰って来ても仕事が忙しいと早く帰るようにした。
「イチハ、最近感じ悪いよ。何かあるんならハッキリ言えば?」
カナタが少し強めの口調で訴えた。
まっすぐ私を見ないでと思った。
カナタは私の気持ちを揺さぶる言葉を鋭く投げかける。
いつも私の気持ちを見透かしているように、私の少しの違和感を見逃さない。
きっと誤魔化してもそれも分かるのかもしれないと思っても、
「忙しくて少しイライラしてるだけだよ。何にもそれ以外にはないからね。」
また、嘘をつく。
それをわかっても理解出来るほど彼は大人ではない。
それでも感情をむやみにぶつけるほど幼くもない。
彼は少し大人びてはいるけれど、まだ子供だ。
私の気持ちに整理がつくまで、待っていてと思った。
言葉に出来るほど今は気持ちが追いついていないから、もう少し子供のふりをして“わかった。”と言って欲しかった。
私は情けない大人だ。




