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うたかた  作者: たき
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融解の方法(11)

私達は軽くランチを食べて、映画を見た。

年始の人混みでなかなか歩くのも大変で、気がつくと隅田さんが私の手を握っている。


「嫌なら離して良いから。」

と彼は私に言って、私の歩幅に合わせる。

最初どうして良いのか戸惑ったが、大きな骨張った手に繋がれることに安心感が沸く。

目一杯指を広げてしっかり繋がれ、包まれている感じが心地よかった。

ときめくとかではなく守られていると言う安心感。

私の気持ちが崩れそうな状態を支えられている、そんな感じがした。


少し歩きやすい場所になったけれど、繋がれた手を離すことはなかった。


気持ちが弱りすぎなんだろうと思った。

肯定してもらえているような気がして、自尊心が満たされた。


「もっと一緒にいたいけど、しつこくして嫌われたくないから、早めに送るね。少しは元気になった?」

隅田さんは私の目をしっかり見ながら話す。


「…元気ですよ?」

私がそう言うと、


「最初浮かない感じがしたし、以前に安藤とかとご飯食べた時より元気がないような気がしたから。元気なら良いんだけどね。」

彼は笑って駅に向かって歩き始めた。


「元気になりましたよ。ありがとうございました。」

私は彼にそう伝えた。


駅の前に着くとスルリと手が離れた。

骨張った指の感覚が少しだけ私の指に残る。

まだ少しだけ明るさの残る時間。


「また、連絡するね。僕はイチハちゃんの事、ちゃんと大事にしたいって思っているから。」

そう言いながら、彼は私に笑顔をくれた。

私は笑顔を返し、人混みにのまれていく。


優しい人なんだろうなとぼんやり思いながら、帰宅をしていた。


「イチハちゃん、かわいらしい格好だね。今、帰り?」

不意に声をかけられた。

自宅近くの駅で改札を通り、少し歩いた辺りにジュンタさんとカナタがいた。


「お義父さんとお義母さんのお見送りを今したところ。」

と、続けてジュンタさんは言った。

穏やかな彼の声と笑顔で、すぐにまた切なくなる。

少し前に男の人に会っていたという不思議な後ろめたさが、さらに私の中でどうしようもなくツラくて彼の目を見ることが出来なかった。


今、会いたくなかった。


私が彼のためではない服を着て、彼のためではないメイクをして、彼のものではない感覚を指に覚えている時に、会いたくなかった。


そんな気持ちはきっとわかるはずもない彼の優しい声と穏やかな笑顔。


「今、帰りです…。お父さんたち元気に帰りましたか?」

私はうつ向いたまま何とか彼に返事をした。


「イチハ、疲れてる?大丈夫かよ。」

カナタがまた私の気持ちに気がつく。

カナタはいつも私の気づいて欲しくない感情を、すぐに見つけてしまう。


「ちょっとね。今日は早く帰って休むね。友達とはしゃぎすぎたかな?」

最初の言葉はカナタに。

最後はジュンタさんに対しての言い訳。


私はそう言って2人を振りきるように帰宅した。



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