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うたかた  作者: たき
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融解の方法(10)

夕ごはんを姉の家で食べて、私はジュンタさんに送ってもらった。

両親は明日までいるようだった。


「今日もうちかと思ったけど帰るんだね。」

と、当たり前のように私を送るためにコートを手に取り、玄関に彼は向かう。


「明日は予定があって…。」

と言うと、


「…友達とどこかに?」

彼は首を少し傾けて尋ねた。

私は“そんな感じです。”とうつ向いた。


「楽しんでおいで。」

と笑った顔が少し切なかった。

彼に私が誰と会っても構わないと言われたようで、複雑な気持ちが溢れてしまいそうだった。

彼にそんな意図はないのはわかっているし、そんなことを思って貰える資格もない。

そもそも、私は彼にとっては家族で姉の妹だから。


「…楽しんで来ます。」

私は何とか笑って見せた。

その無理矢理な違和感が外の寒い張りつめた空気の中で、むなしく思えた。

乾いた笑いが痛々しく思えて、うつ向いて黙ってしまった。


「来てくれてありがとうね。また、待ってるね。」

マンションの前に着き、彼の穏やかな声で私を見送る。

私は1度振り返り、その声を大事にして部屋に戻った。

わがままで欲張りになっている独りよがりの気持ちを、情けないくらい自覚している。


次の日の準備をして、早めにベッドに潜り込んだ。


少し気が重いと朝目覚めて思った。

約束はしたものの、正直この気持ちで他の人に会うことが良いのか悩んだ。

隅田さんは気軽にご飯食べに行きましょうと連絡であったので、身構えるほどではないとわかっていても気持ちが動かなかった。

けれど、モモカの会社の人で私が相談した事で動いている状況に失礼がないように約束を守ろうと思った。


待ち合わせの場所に行くと先に隅田さんが待っていた。

私を見つけると人懐こい笑顔で迎えてくれた。


「こんにちは。今日来てくれてありがとう。」

隅田さんが優しく対応してくれた。

その気持ちがありがたいけれど、後ろめたさが生まれる。


「いえ、ずいぶん待たれましたか?すみません。」

私は彼から目をそらすためにうつ向いた。


「まだ10分前だから。あんまり待ってないから、大丈夫だよ。」

私にそう言って、彼は穏やかに笑ったままだった。


まわりには多くの人が行き来して、初売りの店舗も多いせいか活気がある空気に飲まれていく。


「寒いから、行こうか。」

彼は私を優しく促して歩き始めた。

私は何とか足を動かし着いていった。

隅田さんは背筋が伸びていてキレイな歩き方で、背の高さもあってかなり目立っていた。

となりでちょこちょこ歩く私が少しだけ滑稽にショーウィンドウに映る。


「すみません。」

私は無意識に呟いていた。

それが不釣り合いで謝ったのか、気持ちがここにないことを謝ったのか、不確かな気持ちだった。


「何の謝罪?どうしたの?」

彼は足を止めて、少し私の目線に合わせるように背をかがめて覗き込んだ。

その時の優しい顔に少し安心した。


「隅田さんがちゃんとしてて、私がなんかこんな感じですみません。」

終始うつ向いている私を安心させるように、


「…かわいくて小さくて、めちゃくちゃ僕の方が緊張してますよ。」

ヒソヒソ声で笑顔で彼はそう言った。


「…ありがとうございます。」

私の声をしっかり聞いて、また彼は私を歩くように促した。


私はまたちょこちょこと早足で歩いていたら、隅田さんが歩幅を合わせて私を優しく見つめた。

彼の優しさが少し痛かった。

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