融解の方法(9)
その日は家族でおせちやお雑煮を食べて、カナタにお年玉をあげた。
「イチハに貰うのなんか変な感じ。」
と、カナタに言われた。
のんびり朝は過ごし、みんなで初詣に行った。
出店の屋台が神社のまわりにひしめきあって、賑やかな空気が少しだけ私にはそぐわない気持ちになった。
父と話をしながらジュンタさんは母の背中に手を添えて、ゆっくり母の歩幅に合わせて歩く。
視線の端々に彼を捕えては穏やかな彼の笑顔や仕草に切なくなった。
「イチハ、おみくじやろう。」
カナタが私の手を引っ張って、走り出す。
少し足がもつれそうになりながら前に進むように体制を修正しようとしたら、ジュンタさんが私の体を支えた。
「…大丈夫?」
私の顔を彼が覗き込んだ。
茶色の瞳の中に戸惑う私が映っていた。
自然に緩くカーブのある睫毛が揺れている。
「…ありがとうございます。大丈夫です。」
私は視線を反らし、カナタとまた走り出す。
うるさいくらいの心臓の音を冷たい空気に触れさせて、落ち着かせる。
「イチハ、本当に大丈夫?どこか怪我した?泣きそうな顔してるよ。」
カナタがおみくじを引きながら私に声をかける。
カチャカチャと箱を振りながら番号を確認する。
2人で番号のおみくじを受け取った。
「怪我はしてないから、大丈夫だよ。」
と返事をしておみくじを開く。
待ち人…当方から尋ねよ。
私から尋ねる…そんなことは出来ない。
待ち人が恋人やパートナーでないのもわかる。
けれど、いちいちそう考えてしまう自分がしんどい。
「中吉…何番目に良いの?」
カナタが私に聞いた。
「2、3番くらい?」
私は答えながら小吉のおみくじをくるりと結わえる。
横を見るとカナタも同じような高さで結わえていた。
身長があまり変わらなくなっているのか、目線が近くになっている。
「カナタ、身長何センチ?」
私が尋ねると、
「151かな。」
カナタはぶっきらぼうに答えた。
それが少し可愛らしく思えた。
ふっと笑うとカナタが私から少し目をそらし耳が赤くなっていた。
恥ずかしさからか寒さからなのか分からなかったけど、まだまだ子供でしっかりして見えるけれどまだ子供で、彼の存在も私には大事なんだと、守らなければならないと本当に思う。
「カナタ、何か食べ物でも買って食べようか。」
私はカナタの頭をワシャワシャと撫でた。
すごくめんどくさい顔をしていたが、
「イチハのおごりな。」
と、笑っていた。
私達を少し離れたところで両親とジュンタさんが見守っている。
本当に穏やかな優しい空間にやはり罪悪感が心の片隅に沸く。
きっとこれは彼を好きなうちは消えない。
チクチクと侵食する罪悪感を受け入れながら、彼の優しい笑顔を再度確認する。




