融解の方法(1)
姉の一周忌が終わる頃には、私は恋に落ちていた。
あの自覚した日から何回か彼と顔を合わせた。
理屈では姉の夫で私が入り込むことなど出来ないと、痛いほどわかっている。
これほど不毛な気持ちは抱えているだけで苦しくなる。
「モモカ、私も彼氏作ろうかな…。」
モモカと晩ごはんを食べに行って、私の口から思わぬ言葉が滑り落ちた。
「イチハ、どうした?何かあった?」
モモカは私に尋ねた。
私は簡単にモモカにジュンタさんの事を伝えた。
「それは…その彼氏になった人の気持ちは?なんかイチハ、違うんじゃないかな。」
もっともな意見に何も言い返せなかった。
「違う人を見て確認したい気持ちも分かんないわけではないけど、誤魔化してもすぐに自分で気付くよ。この人が良いって。まぁ、それをわかっていてそれでもなら、飲み会開くよ。会社の先輩から友達紹介してって言われていたし…。イチハの写真見て先輩がぜひって。イチハそう言うの苦手かなって思っていたから。」
モモカは悩みながら話をする。
「ごめん、困るよね。でも、ちょっとしんどいかな?思い続けるの。」
モモカに気持ちを伝えて、また自覚する。
仕事中は集中出来るのだけど、不意に彼を思い出しては気持ちがはっきりして切なくなった。
「まぁ、先輩の頑張りでイチハもどうなるかなんて分からないしね。今度、みんなでご飯でも食べよ。」
彼女は私の気持ちも理解した上で提案してくれた。
どう考えても、ジュンタさんにはこの気持ちが伝わらないようにしなくてはいけない。
今の関係を壊してまでどうにかしたいとは思わない。
ただ、そばにいて彼が姉の代わりに私を見守るように、私も彼を見ていたいだけだ。
何より彼は今でも姉を愛していると思う。
そんな気持ちを身近で常に聞いていて、それはわかっていたこと。
私が足掻いても姉には敵わない。
姉と最後に唇を重ねた時の彼を私は忘れてはいない。
あんなに儚く、危うい彼が最期に交わした約束も、ちゃんと覚えている。
“シオリさん、ずっと愛しているからね。”
彼は姉の耳元でそう言って、愛おしそうに見つめながら静かに泣いていた。
消えてしまうのかと思うほど、脆かった。
それでもその気持ちが強いことは私でもわかった。
「なんで、あえてそこなんだろうね…。」
私は呟いた。
「頭でするもんじゃないって言ってたよ。理屈とか条件とかじゃなくて。気持ちが動いちゃったんじゃない?」
モモカは私の頭をガシガシと撫で回した。
自分からこんな気持ちが沸くなんて思いもよらなかった。
何度も忘れようとしても難しかった。
どんなに忙しくても会いたくて足が向いてしまっている。
それでも気がつかれないように願った。




