連理の枝(9)
大学からの友人のモモカから連絡が来た。
土日祝休みの友人とは正直なかなか休みが合わなかったが、モモカはそれでも時間を作ってたまに夜ご飯を食べに行った。
姉がなくなってあまり外に出ようとしない私をたまに連れ出してくれた。
“イチハ、元気?ご飯食べに行かない?”
“イチハの会社の近くにバル出来たでしょ。そこ行ってみたいから、都合の良い日ある?”
モモカとの食事は楽しかった。
わりと食べ物の好みが一緒で、最後のデザートを楽しみにしているところも似ている。
「イチハ、相変わらず忙しそうだね。」
モモカは待ち合わせに走って来た私に声をかける。
「遅れてごめん。今はわりと落ち着いているけど、担当のお客様から帰る前に電話があって、バタバタしてたから。」
息を肩でしながら、呼吸を整える。
「じゃ、行こう。」
モモカは本当に楽しそうだ。
立ち飲みで、サクッと飲んで食べて、帰りにカフェに寄って甘いものを食べようと言っていた。
慣れないお店の雰囲気に少しだけ飲まれながら、テーブルにクラフトビールとサーモンとクリームチーズのブルケッタと数種類のピンチョスに砂肝とブロッコリーのアヒージョが置かれた。
「仕事終わりのビール、ウマイわ。」
豪快にモモカはビールを1口で半分飲んでいる。
店内は少しだけ照明が落ち着いている感じで、あちこちから笑い声が賑やかに聞こえている。
「うまっ。砂肝最高!」
モモカは満足そうに笑顔になった。
「サーモンとクリームチーズが合わないわけがない。モモカも食べて。」
私もしっかり味わう。
「食べる、食べる。バケットにも噛みごたえあって、これも最高。」
モモカはまたビールを1口飲んだ。
「イチハ、聞いてよ。会社で良い感じの人がいてね。今度一緒にご飯食べに行くことになったんだよ。もう、どうしよう。今から緊張する。」
彼女は両手を頬にあて、ぎゅっと目をつむって小刻みに頭を揺らした。
それからもその気になる人の事を勢いよく喋り続けた。
「会社で目があって笑いかけられたりするだけで幸せで、それだけで1日乗りきれるって思うんだよ。イチハはそんな事ない?」
モモカは私に話をふった。
「…ないかなぁ。そもそも出会いないし、また資格の勉強し始めたし、仕事で精一杯で余裕ないし。」
私が言うと、
「余裕なくても落ちるときには恋に落ちてるもんだよ。忙しくても、気持ちが動く事があるんだよ。」
モモカが少しだけ酔ったのか、パーソナルスペースが近くなる。
「近いよ。酔ってる?まぁ、頭でするもんじゃないのはわかってるけど、そもそも出会わないから。きっかけないのに始まらないでしょ。」
私はモモカを落ち着かせながら、ピンチョスをつまむ。
「もう、その人の笑顔見るだけで幸せになるんだよ。イチハは相変わらずだなぁ…彼氏が欲しいとかないの?」
モモカはぷくッとかわいく頬を膨らまし、私にまた前のめりで近づく。
「あんまり考えたことないなぁ…今、結構楽しいから。仕事とか。休みもお姉ちゃんの家族に会ったりして、のんびりしてるよ。」
私はモモカを再び落ち着かせ、ビールを飲む。
あんまり私が恋愛をするイメージがわかなかった。




